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述懐 平成二十五年(2013)一月

 冬草の青きこひつつ故郷に
     心すなほに帰りたく思ふ         斎藤茂吉 

 朝湯こんこんあふるるまんなかのわたくし  種田山頭火 

 齢(よはひ)のみ亡き先生に近づけり
     その他のことは何ともかとも 
      清水房雄

 こころよき朝ぼらけかなあらたまの
     生きの命を晴れて起たしむ       湖

 




         村上華岳 太子樹下禅那図 部分
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 出岡実  持幡童子図









述懐 平成二十五年(2013)一月

 冬草の青きこひつつ故郷に
     心すなほに帰りたく思ふ         斎藤茂吉 

 朝湯こんこんあふるるまんなかのわたくし  種田山頭火 

 齢(よはひ)のみ亡き先生に近づけり
     その他のことは何ともかとも 
      清水房雄

 こころよき朝ぼらけかなあらたまの
     生きの命を晴れて起たしむ       湖

 




         村上華岳 太子樹下禅那図 部分



       
 出岡実  持幡童子図



* 平成二十五年(二○一三) 元旦  火            

 ☆      白楽天
 但だ双松の砌の下(もと)に当たる有り   砌は石畳
 更に一事の心の中(うち)に到れる無し
 
* 朝ぼらけこころよきかなあらたまの生きの命を晴れて起たしむ  湖

* 除夜の鐘を聴き、妻と新年を祝ってから、変哲さんの俳句をしばらく拾い読み、「指輪物語」文庫本の第六巻を読み始め、「八犬伝」を読み継いでから明かりを消して夢路に。

* ひとり七時前に目覚め、床のまま書架に手をのばして新年の読み初めに、谷崎先生の「文章読本」を読み継いだ。文章の調子、音楽性にふれて懇切に語られ ていた。谷崎先生の、この講話は、何人もの文章読本を読んできた中で再読にも三読にも堪えて傑出しており、日本語での表現の機微をじつに丁寧に話されてい る。小説とかぎらず真実「文章」で創作しようと願っている人の誰にも座右の師範とされるよう奨めたい。至らぬ先生没後の弟子ではあるが、文筆五十年、この 「文章読本」を無意識にも拳々服膺していたんだと、今にして、頭を垂れる。

* もう一冊、敬愛してきた亡き辻邦生さんの最初期の名作である長編「夏の砦」を久しぶりにまた読み終えた。渾身かつ緻密な「表現」「描写」の密集した緻 密な「藝術家小説」であり生死を賭した女性の「人生小説」である。才能に溢れた新鋭ならではの藝術論を作品の底に横たえて、魅力に溢れている。相当な熱愛 度で読まないと読者の方が突き放されてしまうが、ひとたび魅惑に酔い始めたらわれを忘れてしまう。
 批評家長谷川泉が作家論集のなかで、辻さんと私とをならべ「非リアリズム作家」と区分けしていたのを懐かしく思い出す。
                      
* 配達された年賀状と新聞も、床に脚をいれた安座の儘、寝ている妻と黒いマゴのそばで、読んだ。こちらからは例年失礼しているのに、予想していたよりずっと数多い年賀状を頂戴、おおかたが、病状を案じはやく良くなれと見舞い励まして下さっていた。ありがたいこと。

* 妻と二人だけで新玉の京味噌雑煮を祝いあった。
 娘が生まれてこのかた五十余年、夫婦二人だけの元日は初体験。
 建日子のインフルエンザ快復を願いながら、それでも靜かな、晴れやかな元日晴れを慶びながら、ゆっくりと盛り沢山なお節料理も食した。

* 近くの天神社に初詣で。いわば武蔵野に点在した旧村社だが、饒速日神を祭神としかなりの古社。参拝の行列がいつもの二倍三倍もながく鳥居そとへはみ出 していた。うらうらと明るく空晴れ、風なく穏やかな行列はいかにも平和であった。賽銭を捧げ、二礼二拍一礼、こころよくたき火のある境内で甘酒の振舞いに もあずかった。
 神社の背後へまわってしばし静かな田舎道を散策し、帰宅。神社と家の玄関内とで、写真を撮った。

 ☆ 年越し
 後、少しで新年ですね。
 きっと良い年に、と祈っています。ご機嫌よろしく愉快にお迎えください。  茨城那珂郡 

                                        
 ☆ 新年御挨拶
 明けましておめでとうございます。
 今年が秦さん御一家にとって幸せな日々でありますようお祈り申し上げます。
 私語の刻にいつも励まされています。   吉備の人
                                   
 ☆ 新年のご挨拶
 
あけましておめでとうございます。 
 おだやかな好天で洛北の元旦を迎えました。
 その後体調はいかがですか。こころならずもご無沙汰のかぎりですが、案じております。
 兄の本復と併せ平安な年でありますように こころから祈念いたしております。  京洛北 森下辰夫
                                               
* 東工大卒業生から、為我井ゆりかさん、富松麻紀さん、宗高菜々子さん、堂免涼子さん、林丈雄君、丸山宏司君、上尾敬彦君が元日の年賀状を呉れている。 一人一人の皆、今朝会って昼にまた会うほどに細かなことまで忘れていない。為我井さんはもう教授へも手が届いたかも知れぬ、新しいことにトライしたいと も。富松さんは病気を克服し、
大手の職場へ「研究者」この人も復帰する予定と朗報。宗高さんは「3歳までは 母業に専念します」と、元気。いずれ建築設計の現場へ復帰と、意欲を磨いていることだろう。編集者の堂免さんは父上の四冊目経済学の労著出版にも気力漲っ て協力、「秦さんのお姿にパワーを頂き、私も奮起しています」と。林君は、「どうか、日本の行く末を、見届けて下さい。お元気で」と。去年にはPCの面倒 を何度も何度もみてくれた。有難う。上尾君はモロッコ出張の三年間を経ての「日本での生活に再適応中」と。最適の職場で責任ある地位にもついているだろ う。丸山君もまた国家公務員の責任を帯びて奈良県へ出向、活躍中、しかも「奈良は面白い!先生がお元気であれば是非奈良にお誘いしたいのですが。早く全快 されることをお祈り致します」と、優しい。「奈良は面白いよ、仕事とその面白いとをうまく両立させて楽しんでお出で」と送り出した甲斐あり。

* 京都での同窓からも御見舞をかねた佳い賀状が、たくさん。なかでも次の一通が胸にしみた。父上が仏文学者であられた。いつぞやフランス語を知らないまま「ル・サンチマン」と書いてしまい、「ルサンチマン」ですと注意された。弥栄中学で一年下の人だった。

 ☆  謹んで新年のご挨拶を申し上げます
 この秋には77歳になる予定です。国会議事堂と同じ年齢だということです。相変わらず、病気と折り合いをつけるのに苦労しています。先日の選挙には、徒 歩5分ほどの投票所までタクシーで往復し、重苦しい気分で投票を済ませました。消費税やデフレやTPP以上に、憲法改「正」問題(とくに第9条)が気がか りです。そのせいでしょうか、幼い頃に聞いた歌が、しきりに頭に浮かんで来るのです。
 
♪肩を並べて兄さんと、今日も学校へ行けるのは、
   兵隊さんのおかげです。
   お国のために、お国のために戦った、
   兵隊さんのおかげです。♪♪
 (「戦った」が、2番の歌詞では「傷ついた」に、3番では「戦死した」になっていたと記憶しています。)
 残された時間を大切にしなければと痛切に感じます。
 どうかお元気でお過ごし下さい。   2013年元旦  府中市 平田布実 
(筆名 石川布美)

* 自身のことは忘れて、「77歳になる」とあると吃驚し、そして迂闊なことと苦笑する。みんなみんな、元気でと願う。
 文化界、読者、知友からは二百近くも届いて、懐かしい顔も思い浮かび、懐かしい声も聞こえてくる。

* お節料理の二、三十に一ほどしか苦くて、また砂を噛むようで、食べられない。酒で口の中を灼いておいて食べている。食いしん坊がこれだ。罰かな。体重 は微増、血糖値はまったく問題がない。血圧は厚着してしまい、計れずにいる。いちだんと眼が霞んで辛いが、排便が大事なのでは。便通がいいと、視野が明る い気がしているが、素人考えか。
 何にしても新年です。立ち向かうのみ、何事にも。 
 
* 初詣にも「NO NUK」バッヂをして行った。
 原子力規制委員会の田中俊一委員長は、新年を迎え「本当の規制を開始する」と。妙な話だと思うけれど、元日のこと、良い方へ受けとっておく。しっかり遣って欲しい。
 「稼働全停止」「新設禁止」「発送電分離」「もんじゅ廃止」「廃炉の研究」「有害高線量廃棄物の永久処理策の追求」 
 少なくもこれらを念頭に安倍原発擁護内閣と闘い続けねばならぬ。



* 正月二日 水              

 ☆ 無常     宋之問
 年年歳歳 花相似たり
 歳歳年年 人同じからず
 
 
は じめて谷崎潤一郎の小説の中で出会ったあまりに有名な詩句。背景に、とんだ伝説もあるが、正月ゆえに、触れない。吟誦して実感のいつも胸にせまる詩句。 「人同じからず」は親友や知己を喪った哀しみを読むのが普通だが、交友の微妙な集散にまで想い及んでもいいだろう。一層の感懐が得られよう。

* 深刻で記憶に刻まれる初夢であった、夢とも覚えず、眠れなくて頻りに頻りに考え続けていたようで、やはり寝ての夢であった。目覚めて夢をみていたと分かった。で、その長時間の夢とは。
 「此の世のことはみな夢・幻」と聴きに聴いてきた。般若心経にも千載集にも閑吟集にも聴き続け、だが、それらの文句・字句に聴いて覚えたではなく、実感 として、ほぼそれがわたしの自覚に成ってはいる、だが「成正覚」には程遠い。そのせいであろう、夕べの夢で問い続け答え続けて悶着していたのは、「此の世 が夢の夢の夢の世」ならば、「夢から覚めた後の世界はどういう景色であるのか」ということ。そればかりを執拗に問い続け答えようとしていたのである。悶着 以外の何でもあり得なくて、そのままわが初夢は醒めた。

* 起きてからも、まだものを思い続け、そしてふと思い出したのは、山折哲雄さんとの対談『元気に老い、自然に死ぬ』の中で、何度か、執拗に山折さんに問いつめていたこと。般若心経の中に、「心無罣礙 無罣礙故 無憂恐怖」とある「罣礙とは何でしょう」とわたしは聴いていた。山折さんは「障りでしょう」とただ字解のみを答えられた。同じ質疑のどの辺でか、わたしは
「罣礙とは、人間が何にも彼にも吐き続ける、リクツ・理屈」ではないでしょうかと言うていた、「それだ」とわたしは初夢での惑いに向かい答ええた気がしたのである。
 夢の世界と覚めての世界と、視野になにの変化もない、ただ、夢に夢見ている中では人は果て知れず理屈を付け理屈を言い自分の理屈に酔うて惑うている。そ んな夢から覚めた人は、まったく同じ世界に在ってしかも何ひとつ理屈をつけない、理屈など知らない世界に生きている、暮らしている、行為している。

 わたしは今も仕事をし、病と向き合い、またペンと政治との関わりに生き、原発を憂え、悪政に立ち向かっているが、それも夢。しかし夢から覚めてもそれら とは変わりなく向き合い続けているだろう、多くの言葉も吐いているだろう、批評も非難も感動も感謝も無くなりはしない、ただそれらに理屈をつけていない、 思索にも行為にも理屈はつき纏わない。あるままに、なるままに向き合い立ち向かうだけ。
「心無罣礙 無罣礙故 無憂恐怖 遠離一切 転倒夢想」なのである、のではないか、と。
 お笑いぐさだが「それも理屈を付けているだけじゃないか」と他人様に言われる前にわたし自身に忸怩たる恥ずかしみが有る。有ります。
だから、ここまで。

* 建日子が帰ってこずにいる分、用意の正月料理が有り余り、しかもわたしが殆ど食べられない。妻が美味しいと謂う、何一つ美味しいどころでない。が、つとめてそのまま咀嚼している。栄養価は変わるまい。酒は、日本酒もウイスキーも、少量ずつだが飲む。焼
罣礙酎も飲む。口腔の不快を辛いほど刺激的に散じるために飲む。
 便秘すると排尿の勢いが鈍り、まま、数次ないしそれ以上かけて散尿する。排便すると一度で出切る。少年の昔から排便と排尿との関連はこうだったという体験の実感があるが、老いの不如意も加算されているだろう。
   黒いマゴの放尿こそはうらやまし
      われの清水はしとしとと漏る    湖

* 朝日新聞社新年の「朝日賞」祝賀会招待状が来ていた。わたしの推薦した人は惜しくも逸れたけれど。


* 正月三日 木              

 ☆ 対酒     白楽天
 巧拙賢愚相是非
   巧拙賢愚 相ひ是非す    「相」侵し合わぬが好い
 何如一酔尽忘機   何如ぞ一酔尽く機を忘る   「何如ぞ」好い 「機」うるさいこと
 君知天地中寛窄   君知るや天地中の寛と窄を
 G鶚鸞皇各自飛   G鶚も鸞皇も 各自に飛ぶ  G鶚」いやな鳥「鸞皇」いい鳥

 なかなかこうは達観できないが、白詩がこう好きなのは、わたしも古代日本人の血をうけているのだろう。

* 東大の坂村健教授から、「先生のお仕事のまとめ方を拝見させていただいていると すごさと共に感動をおぼえます」と年賀状。恐れ入ります。同じく東大の長島弘明教授からもお見舞い戴き、『京のわる口』にも挨拶戴いている。国立工藝館館長の金子賢治氏からも。
 松本幸四郎丈は例年の繪心で「巳」さんを、怪我から立ち直った市川染五郎丈からも「今年はまたじっくりと舞台に専念致します」と。京都美術文化賞の染織作家渋谷和子さんからはすばらしい織りと染めとのタピスリーに添えて懇篤の年賀と挨拶とを。
 今日もたくさんな賀詞を大勢さんから頂戴した。
 東工大卒業生では、尼崎から、可愛い脩ちゃんの写真とともに井筒慎治クン、
自宅を設計し新築するという吉祥寺の柳博通クン、名古屋市大に地位を得た小川慎太郎クン、「秦先生 お元気でいらして下さいね」と、横浜青葉区の和田芽句さん、から、賀状。平成八年(一九九六)三月に定年退官、以来十七年になる。学生君達、続々社会の中軸を成してきた。

* 三が日が過ぎて行く。元旦から、仕事をしていた。二日も三日の今日も。眼が霞んで、機械の字が読めず書けなくなると休んでいた。いろいろと書く気で あったが、日記を書く、もう元気がない。年賀状の住所をアドレスに点検し収容できるのはいつのことか。七日には湖の本114が出来てくる。発送の用意がか なり残っていて、追われる。
 ま、いいとしよう。成るべく成る。

* このホームページに保存されている以前の日録から、写真の移動を試みた。うまくいけば、暫定、役に立つが。



* 正月四日 金              

* 放射能を蓄えてしまった被災地の汚染土壌を除染する作業に莫大な予算がついている。その除染作業員が、剥ぎ取っ た草葉や土壌を川に投げ込んで事終わるという違反行為を各地で繰り返している実態が、証拠写真と共に報道されている。水は、川は、大なり小なり岸にも川底 の石にも藻にも土壌にもふれあい浸潤している。その川へ汚染土や植物を捨てて流していてはなお百害を増すのみ。何のための予算か作業か、怖気をふるう。
 そもそも土壌からの除染というのも気休めの程度ではないのかと思ってきた。やるなら、例えば福島県なら福島県の全面の土壌を剥がし取るほどの徹底でなければ意味が薄い、しかしそんなことはしたくても出来ない。
 ことほど左様にわたしは汚染は山越え川越えはるばると日本列島の全部を慢性的に汚染していて可笑しくないと観てきた。だからこそ原発の稼働をすべて止め、新設させず、廃炉体制へ向かい、危険廃棄物の永久安全管理に國も原発企業も責任を持つべきだと言い続けてきたのだ。

* 今は昔、東工大の「総合A」の学生諸君に、「『日本』の説明・理解に資する『一』文字」を書いて見せてほしいと出題したことがある。下記はその集成。数字は答えた学生の人数である。、 

 ☆ 「日本」の説明・理解に資する「一」 文字
 「」 79  
」 23  」 22  「」 16  」 11  」 10  「」 10  「」 10  「 10  「」 8  「」 8
が、10位を占めた。意のあるところを説明せよとは求めなかった。挙げられた「一字」は、加えてなお191字、合わせて202字もあって、今の霞み目で全 部を挙げるのはおやめにするが、上の11字をそれぞれご自分なりに、読み解いてみられれば、なかなかの自問自答が出来上がるだろう。
 じつはこんな質問を投げかけた以前に、私自身、丸善が出している近代日本で最古の雑誌「學鐙」にまる三年間、つまり36文字を選んで読み解き続け、『一 文字日本史』として平凡社から出版していたのだった。今は湖の本34 35『日本を読む』上下巻に成っているが、わたしがごく批評的に選んだ「漢字」は、
 「徳」「位」「例」「式」「名」「親」「本」「折」「色」「侍」「茶」「客」「蛇」「筋」「遊」「外」「縁」「楽」「葬」「祝」「職」「私」「土」「金」「家」「手」「身」「治」「天」「死」「人」「暦」「物」「女」「花」「風」
だった。学生君達の「11」字中でダブッているのは「金」一字だけ。むろん、もう三年も連載していたら別の36字が選べていたろう、それはどんな字にな り、どのようにその一字一字から「日本が読める」か、惹かれる課題であり、なによりもこんな試みは、何方にも出来る課題でもある。
 じっくりと「日本」を読み替えて行く時機へ来ている気がしてならない。やってみるかな。わたしが学生諸君に回答結果を整理して示したペーパーには、上の36字以外に、また学生回答の
202字以外に、こんなのも「考えられよう」と幾つかを挙げている。
 「時」「俗」「官」「都」「能」「医」「空」「「清」「会」「衆」「制」「性」「藝」「一」「流」「氏」「派」「隣」「船」「旅」「株」「型」「聖」「今」「老」「墓」「変」「論」「勘」「想」「他」「草」「雪」「虫」「霊」「怪」「月」
 書き写しているうちにも、わたしの読み解きが澎湃として迫ってくるから面白い。本気で、またやってみようかな。

 ☆ 秦先生
 謹賀新年
 
あけましておめでとうございます。ご健勝で良き初春をお迎えのことと存じます。
 旧年中はひさしくお会いする機会もありませんでしたが、先生の動向につきましては数々の著作を通じてなんとかフォローさせていただいています。
 とりわけ『京のわる口』は先生の真骨頂ともいうべき作品で、海外で出かけるたび何度も読み直し、エンジョイさせていただきました。
同時に今まで勝手な横浜弁(?)で先生と会話を重ねたことが恥ずかしくなる思いでした。
 まあ、距離感も感じることなく、かってなことを言ってきた自分を恥じるとともに 「英語を京都弁や大阪弁で表現できないものか、また世界にそのまま通用させることをやってきたならば 日本は間違いなく真の一流国になっていただろう}などと勝手な推測を重ねています。
 ともあれ、今年も先生におかれましてはご健勝のうえ、ますますのご活躍を祈念する次第です。  堀武昭  国際ペンクラブ理事


* 嬉しいメール賀状を頂戴した。ペンの理事会仲間で最も心親しく覚えていたお一人で。世界をかけまわって活躍して頂いているお一人でもある。お気をつけて、お元気でと願います。

* 朝一番に、腫瘍内科の主治医先生の「電話診察」に電話して、このところの体調等を、取りまとめて報告し、ご相談した。要するにわたしの場合、眼科的容 態の不安定に悩んでいる以外は、およそ克服して苦痛というほどの苦も痛も、幸い無いものとして、体とも心とも付き合っている。そういうこと。始終、重だる い、始終涙目と霞み眼に悩まされている 手先の痺れや寒さをいつも感じている、食べにくいが努めて食べている。ま、そんな程度なら、視力の不足。視野の動 揺・曖昧の外は、何とでも成る。
 今朝から、また二週間、抗癌剤 3カブセルずつ朝夕に服用して行く。 

* 東工大卒業生で母校での研究を続けている、古沢宏幸君も賀状を呉れた。こういうことをしたいんです、と、具体的に未来への研究課題を語ってくれたのを、力強く、記憶している。

* 妻が大学時代下宿していた旧家の女主人が、毎年賀状をくださるが、その筆跡・筆勢の大きく健康で達筆なのに驚き喜んでいる。どう指折り数えても、九十六、七歳に成られているはず。感激する。 
                                         
* まだ七時半だが、機械の画面に文字を読み取るのも不自由になっている。一休みするか、もう今日は休むか、します。


* 正月五日 土              

* 昨日、こんなふうに纏めて電話診察に答えた。

 @    血圧 血糖値  安定  体重 65kgを挟んで漸減・漸増
 A     やはり苦くて食べづらい が 体重維持のため、努めて食べている。味付けは濃く辛く甘くし、酒やコーラやシロップ等で口腔の灰まぶし感などを中和。
 B    排便・排尿  排便は二日三日に一度ならず快大便 便通があると排尿も好調 便秘気味になると、数次ないし十に及んで根気よく出し切る。痛み等は無い。
 C    眼の状態  宜しくなく、朝の一時をのぞき視野がしばしば霞み 識字・書字に不自由 しばしば点眼また洗眼して凌いでいる。閉口。
 D    しんどさ  貧血のためか、杖は手放せない。重だるい感じはいつもあり、小刻みに吐息していることもあるが、たいしたこととは感じていない。
 E    色素沈着 痒み 手に足にかすかに、継続進行している。処方の薬にも痒みが出るとある、が、たいしたことは無い。
 F    手先・足裏の痺れ かなり執拗。しかし苦痛ではない。クリームや温水での手洗いで凌げている。 
 G    寒さ  かなり寒がり、着衣を重ねている。床には電気炬燵が欠かせない。
 H    涙目 鼻水 濃粘唾液  これには一日中いつも悩まされている。
 I    服薬と休薬との差異  気を張っているので、さほど落差を感じていない。要するに堪えられる、と。
 J    飲食の、いい・悪い 量  いまは殆ど顧慮していない、が。

 少し強がっているが、要するに不満といえば、@ 美味しく食べたい A 眼がすっきり見えて欲しい の二箇条に尽きるか。他の容態が負担でないわけはないが、堪えることも難しくなく、堪えれば済むことである。

 ☆ 
秦先生、
 そんな事(=病状)とはつゆ知らず、健康を回復、意気軒昂な先生な想像していた小生は、なんと甘いのでしょう。誠に失礼なことを申し上げ、平に、平にお許しを請うばかりです。
 ただ、ペンの仕事にかかわり、いろいろの人を見るうちに真の日本文学の矜持を引き継いでくださっている先生が懐かしく、かつ今後ともその重責を担っていただきたいと思い続けてきました。
 その意味でも何としてもここは踏ん張っていただき、もう一度日本ペン、いや国際ペンへの将来の指針をお示しください。
 国内ペンは実につまらない、枝葉末節な内部紛争を続けていますが、真の作家はもっと次元が違う舞台で自分たちの役割を果たすべきと思っています。
 私のやっていることもたわいのないことですが、それでも91年間にわたって言論の自由を求め戦ってきた伝統だけは何としても引き継いでいこうと思っている次第です。
 先生の健康回復を切に祈り、そのためにもいま与えれられた使命を全うしてまいります。  堀武昭拝 (国際ペンクラブ理事
 どうか返事は無用です。その分ゆっくり静養のほど伏してお願い申し上げます。


* 昨日の午は、恒例の焼餅と菜との雑煮を祝った。 七日の七草粥の朝には、湖の本114が出来てくる。発送用意はまだ十全ではない。なし崩しに進めて行く。 

 ☆ 菅直人『東電福島原発事故 総理大臣として考えたこと』(冬幻舎新書) 冒頭「はじめに」抜粋
 
 私の総理大臣在任期間は、二〇一〇年六月八日から二〇二年九月二日までの四五二日間で
あった。在任中の最大の出来事は、いうまでもなく、東日本大震災と東京電力・福島原発事故である。退任直後から、この原発事故に遭遇した総理として、何らかの記録を残すことが必要だと考えていた。
 総理退任から一年が経過し、政府事故調(政府事故調査委員会)など各種の調査報告も出そろったので、記憶が薄れないうちに書き留めておこうと筆を執った。
 私としては、私が知る事実をできるだけ正確に明らかにしたい。その上で、単に事実をなぞるだけではなく、原発事故の渦中で私自身が総理大臣として、何を考え、どう決断をし、どういう気持ちで行動したかを、当時を思い出しながら述べてみたい。
 政治家の行動・仕事を評価するのは政治家本人ではない。私自身は私心を捨てて命懸けで行動したつもりだが、評価をするのは私ではない。政治家の行動についての評価は最終的には歴史に委ねるしかないと思っている。

* わたしは、菅元総理のいわく「歴史」のごくごくかすかな一画から「評価」したい。原著からの適切・適確で、佳い「抜粋」を今後、折を得てして行きた い。誠意と責任に満たされた証言であり述懐であると信じうるから。                              

+ つまり涙が目やにとなり、眼を霞ませていると想われる。点眼し、綿で拭うか、温水で洗眼するか。それも永くは効果なく、直ぐ霞んでくる。闘いだ。            

* 一の贔屓の沢口靖子が、「科捜研の女』その他、着実に、巧く確かに演技しているのを喜んでいる。なんという美しい、りりしい表情の佳い顔であることか。

* 十時前だが、もう何も見えないほど、よくない。朝から先ほどまで、「仕事」熱心だったが、手を届かせたい仕事がほかにもいろいろあり、悔しい。



* 正月六日 日
           
* やや今日は夕刻まで眼が明るく、仕事がはかどった。日記を書く余力を「仕事」へ廻している。涙は滲み出る。洟水も垂れる。根気よく眼を拭き鼻をかみ、粘る唾液も吐いて対応している。食べ物も、食べられる限りを食べている。
 湖の本創刊以来の読者である山本道子さんの下さった、山本さんの実家と聞いている老舗「村上開進堂」の、貴重品でもあるだろうクッキーか、すばらしく美味い。すこしも苦くない。建日子にも食べさせたいと正月まで取り置いたのを、老夫婦で戴いている。     

* 読書量は、五六冊に減らして、交互に読んでいるが。どの一冊も甲乙なく面白いとは幸せなこと。和泉式部集全評釈 古今著聞集、折口信夫の日本の藝能論攷、谷崎の文章読本、林田辰三郎の日本藝能史、丹後紀行、中国の捜神記、ゲーテのイタリア紀行、
チェーホフの妻への書簡集、バグワン、そして文学は、南総里見八犬伝、高田衛の八犬伝の世界、鴎外のヰタ・セクスアリス、ゲーテの親和力、ツルゲーネフの猟人日記、トールキンの指輪物語。どれも打ち込んで読めるが有難くも嬉しい。

* 明日、七草粥の朝早くに、湖の本114が出来てくる予定。十一日には、我當が今年一番に「翁」をつとめる初春昼の部の新橋演舞場。十二日には歯医者 へ。十四日月曜には俳優座劇場で山田太一さんの芝居。十五日には聖路加眼科へ。その翌日にも地元の佐藤眼科へ。十七日の大相撲十二日目は、まだ決めていな くて、十八日には演舞場の夜の部と、春から楽しみも満杯の大忙し。ぐっと気も体もこらえて乗り切りたい。腫瘍内科の今年初診は、二十四日木曜日。月末に は、劇団昴の公演に。これでも昨年の毎月よりはラクかなあ。怪我だけは、無理も、したくない。

* 夜前は十時半に床に就き、今朝は気づいたら九時半。この十一時間睡眠が、わずかに今日の霞み眼を和らげてくれたのだろうか。もう今夜も九時半で眼は限 度へ来ている。やすませてもらう。もっともっと前へ進めたい仕事があるが。ま、いいか。   



* 正月七日 月
           
* 血圧117-60(58) 血糖値88 体重64.8kg   七草粥を祝う 梅酢湯 朝の服薬   九時、湖の本114届き、すぐ発送にかかる。午、ラーメン、口に合わず。午の服薬 午後も通して発送作業。 六時前、建日子年賀来訪、七草粥をもう一度祝 い、晩の服薬。歓談。九時に建日子仕事場へ戻る。発送する本の荷の重いことに、つくづく思い至る。

* 都知事選の投票数と、同時同所での総選挙投票数にもの凄いまでの票差のあることに疑問が渦巻いていること。一つの投票所で、都知事選にだけ投票して、衆議院選挙は棄権するということのあり得なさ。票差が数十万票もある信じ難さ。
 また日本全国の総選挙「開票作業」がただ一つの「私企業に委託」されているという事実。投票数の操作も優にあり得るというその異様さ。不正選挙の疑いが消し去れない情けなさ。そういうことを、人からも聞いた。
 どうなって行くのだろう、日本は。選挙開票だけは、他国は知らず、日本は選挙管理委員会により公正になされていると信じてきたが。出口調査だけで、開票の速報以前にはやくも当落が確定できるからくりなど、分かりにくいことが纏わり付いているという。
 まさかと思っていた、いまもまさかと思いたい、が、なさけなくなる。 

* 
明日も懸命に発送する。はやく休む。
  と、言いながら建日子の戻っていったあと、機械の前で、二時間余、ずっと仕事。もう十一時過ぎている。昨日今日、なんとか字の読み書きが出来て嬉しい。



* 正月八日 火
           
* 血圧125-60(59) 血糖値86 体重64.7kg   餅三つ 朝の服薬 午、茶漬け一膳 午の服薬。排便 湖の本114発送作業に終始す。 晩、七草粥 塩昆布 晩の服薬 晩の仕事 今日は晩まで涙目 視野朦朧

* 東北被災地の復興は進まず、末端の作業は下請けの下請け任せでかえって危険を撒き散らし、その間に予算は食いちぎられて利権化科している実情。監督官庁や機関が働いていない。

* 選挙開票にまつわる巷間のまんざらデマとは思いがたい不正の取りざたないし疑念・不審にマスコミがまるで食いついていないのはどういうことだろう。
 
http://kiikochan.blog136.fc2.com/blog-entry-2682.html
を、開いてみて欲しい。 わたしには、まだまだ、まさかと思いたい気がある、が、まさかとは見逃せない証言や情報にも手強く触れられてある。
 今回の総選挙で、一つは小選挙区制の歪みが露骨に顕れていた。たった20数%の得票で数百の議席を自民党が独占できた制度自体があまりにバカげている。
 それに加えそれより深刻な疑念は、選挙開票と得票数を、民間の一私企業が全面的に担当しているという、信じがたい情報・証言の具体的なことに驚愕する。どうして報道機関はこういう不審に答えようとしないのか。、
                                                    
 ☆ 賀正 残生のテーマ 都立大名誉教授
 安倍政権が右翼化してゆくことの覚悟が必要になってきました。そこから日本に何が起こるかの予測は容易につきます。わたしたちが個々にできる事はかぎられているかもしれませんが、できることをやり続けてゆくしかないですね。
 平和持続への希求を、護憲の形で口にしてゆきましょう。
 過去七十年余、地球を戦火の球にしてきたアメリカ(国家としての)を警戒し、時には否定してゆきましょう。それをわたしの残生のテーマとしたいと思います。
 なお賀状での新年のごあいさつは今回で打ちあげといたします。長い間ありがとうございました。

 ☆ 謹賀新年 二〇一三年正月 「君が代のリズムで蛇は踊らない」    世田谷  川柳作家
 「小選挙制の問題があるが、世論調査の結果が一人歩きして世論に影響を与え、メディアが望む政権を誕生させ」た(鳥越俊太郎)ひどい選挙で、「戦後レ ジュームから脱却」し戦前のような天皇中心の 「美しい国」日本を復活せんとする蛇のようにしつこい政権が牙をむき出しました。支持者は近く金鵄勲章でも 授与されるでしょうが、皺の中に顔のあるような戦前・戦中派はもう「耐え難きを耐える」気持ちは御免です。周囲の友人知人は民主党顔負けの勢いで減り続 け、始末のつかぬ貴重な蔵書の山で二階の改築を迫られて憂鬱ですが、認知症と攻防戦の最中です。、ご一家のご多幸をお祈りいたします。

 ☆ 遅ればせながら、あけましておめでとうございます。
 静かな新年をお迎えのごようす、お慶び申し上げます。


 脱原発派は、前回の選挙でもわかるように、なかなか 一つにまとまりません。なぜなら三・一一以前の発想の人間と、そうでない人間との落差があまりに大きいからです。今までの自分の生活を変えなくてもなんと かなると思う脱原発派と、生活の根幹から変えなくては生き残れないと信じる脱原発派では、到底折り合いがつかないのです。
 現在、福島二号機が温度上昇していることをご存じでしょうか。東電は計器の故障だと言いますし、下手をすると永続再臨界状態になるという凍りつく説もあ ります。真偽は不明ですが、二号機一つでさえこのありさまなのです。既に、電力会社幹部は南半球に逃げ場所を確保しているとすら漏れ聞きます。菅総理も事 故直後に、自分の息子夫婦を海外に逃がしていました。三月十五日には、米軍横須賀基地は女子どもを国外脱出させていました。政府はこの時東京が避難すべき レベルであることを承知で黙りました。これは民主党政権に限らずどの政府でもそうしたことでしょう。
  これ からの私は「湖の本」が世界の誰かの人生の同伴者になるお手伝いをさせていただきたいと思います。湖の本がどこかの「身内」の読み手に出逢えますように、 ライフワークとして取り組みたいと願っています。この想いだけは負担で不快なお節介と挫かないでいただけますように。      一管の笛にもむすぶかざりかな  蛇笏
 
* 朝から、一つ唄が口を 衝いて出て時にヘキエキする。「母は来ました 今日も来た この岸壁に今日も来た およばぬ願いと知りながら もしやもしやに引かされて」 敗戦後、子の 復員を待つ母の唄で、身につまされよく聴いた。唄っていたのが誰かもう正確に言えないが歌詞は記憶にこびりついている。「もしやもしやに引かされて」とい う歌句は切なかった、その切ないのが繰り返し口元に蘇る。敗戦から六十七年か。わたしは十の少年だった。丹波の山奥に疎開していた。                                                   が 
 
 * いま我々の現に抱えている原発災害のさらに拡大する可能性の大きさは、あの戦争でヒロシマ、ナガサキに浴びた原爆の黒い雨に何十倍、何百倍するか、本気で「わがこと」「我が子のこと」として考えねば、切実に。

* 十二時になろうとしている。この時間まで「私語」というのは、胃全摘から退院して以来、初めてではないか。しかし眼は霞み切っている。


* 正月九日 水
           
* 血圧133-60(56) 血糖値76 体重64.6kg  朝、独り早起きして、ラーメン。不味い。妻は脚痛で近くの病院、整形外科へ。 朝の服薬後 湖の本発送作業、だが視野が異様に眩しく視力不安定で、洗眼しても直らない。眼を休めるために午まで寝る。午の服薬後、眼の霞みにほとほと悩 みながら階下で二階で仕事。 晩は、中華肉饅ほか三種類ほどよく食べた。苦くなければ口に入る。美味さはめったに感じられない。晩の服薬後、二階で、階下 で、また二階で、仕事するが眼は依然じつに不安定。 十時になる。休む。

* とにもかくにも仕事をして、病苦は忘れられるのだが、一つだけ、眼の安定が得られなくて、書字、識字に困惑。もらったメールらも容易に返信出来そうに なく、困惑。湖の本114の発送は、各界・大学・高校への寄贈本はあらまし送り終えたが、読者分にとりかかっていきなり眼がこうで、停滞。明日に賭ける。  

* 三月の演舞場で、染五郎と菊之助の「二人碗久」がある。染五郎は一条大蔵卿も。吉右衛門のを観たばかりだが。



* 正月十日 木
           
* 血圧134-57(52) 血糖値81 体重65.2kg  朝、ロールパン一つ 干し柿 朝の服薬 午前に一仕事終え 午、中華肉饅一つ 午の服薬後、湖の本発送作業を三時半まで。眼が霞むので、中断。鏡割の善哉一椀 映画「ディスクロジャー」観て休息 晩は、烏賊・玉葱・野菜の甘煮で、飯一膳。 入浴後の体重、65.1kg
 

* 不妊また卵子提供に関する報道を今日だけで二つ、聴いた。不妊は増えつづけ、卵子精子の提供を受けた受胎・出産も過剰に増えて、かつ成功例は少ない。若い出産前の女が、卵子を高額で売りに海外に出かけている。
 報道は、産科学的にのみ医師等の解説や憂慮や法整備の不調などを報じていたが、「少子化」担当大臣をもちながら、それらの傾向が、数値が「少子化」問題 に連なること、また見えざる背後に日本にいまや独特の放射能拡散の影が落ちていないかなどとの関連には全く触れていなかった。
 不妊が増えていて産科学的に乗り越えて行ける可能性が甚だ低い、死への危険は、逆に高い。それが心配だ。上機嫌のメールを最期に、ふっつり音信の絶えた 読者は、子供が欲しくて不妊クリニックに通いつめていた。危険な急死の転帰などないと思いたいが、案じられる。かと言ってそんなプライべートを問うのは憚 られる。
 日本の少子化は、國の滅亡にも繋がるのだ、そういう関心をわたしは国立公衆衛生院の林先生に教えられて以来、もちつづけている。
           
* 安倍内閣の経済政策が、かつての小泉路線の拡大逆戻りになりつつあるのを、不安に感じる。衆庶の私民には過酷な負担が強いられて、大法人への救済が不当に先行して行くだろう。働き口は、むしろ、いっそう厳しく狭くなるのではないか。

* 民主党の細野幹事長が参議院選挙の厳しさを言い、党の決死の奮起を促していたが、彼はかつて福島のために命を捨てる覚悟とぶっていた舌の根も乾かぬ間 に、平然と党の要職に駆け寄っていった。支持するかなりの数の議員の期待もはねつけて、野田悪政内閣に追従した。そして今は海江田代表の幹事長だという。 海江田・細野路線は、経産省に随従の路線で、原発容認、再稼働へと動いて行くだろう。いずれは自民党政権の前に膝をついて、海江田派のお墨付きを欲しがる だろう。唾棄すべし。民主党の、そして日本崩壊の跫音はたかだかと迫っている。

 ☆ 述懐  白楽天
 人間の禍福は愚かにして料り難し
 世上の風波は老いて禁ぜず

 事事成すこと無くして身また老いたり
 酔郷知らず何くにか之かんと欲する

* 年賀状のアドレスを記録する作業が、まだ半分。名簿は、だが、「仕事」の支えにも成る。この作業、眼の酷使にもなるけれど。
 十時。明日は初春最初の外出、新橋演舞場、昼の部。夜の部は一週間後に。楽しみ。寒そうでもあるが。妻の脚痛の無事であって欲しい。



* 正月十一日 金
           
* 血圧128-60(55) 血糖値78 体重65.5kg  朝、ロールパン一つ、クリームチーズ、蜂蜜ミルク紅茶 朝の服薬 午は新橋演舞場で、鰻 午の服薬 四時半 銀座福助で鮓 魚だけ、飯残す。帰宅 軽食 晩の服薬 大排便 晩の仕事  

* 
新橋演舞場での初春大歌舞伎は、有難く、面白く、最前列の眞真ん中で、まっさきに「壽式 三番叟」 親友・片岡我當の荘重端麗な「翁」に祝われ、きよまはってきた。手の届きそうな間近で目を見合わせているうち、嬉しくて涙が溢れてきた。息子の 進之介が付千歳で出て颯爽と舞った。彼の舞台では最良と観たのも気持ちよかったが梅玉・魁春兄弟の衣裳も美しい三番叟・千歳の連舞いは、まこときびきびと 面白うて、面色火照るほどめでたく感じ入った。これまで観てきた「壽式」で最良の清冽かつ優美な時空をあらわしていた。感激した。
 次の「車引」では、三津五郎の梅王丸、七之助の桜丸が、荒事の所作、女形藝の所作が惚れ惚れとすばらしく釣り合い、歌舞伎の醍醐味とはこれかと美しい活 人画の魅力に三嘆した。七之助桜丸の、いささかのおろそかも無い美しい充実ぶりが、父勘三郎の亡き今、彼も虚空で眺めて喜んでいよう、褒めてていようと、 しみじみわたしも嬉しかった。こんなにみごとに一つに成りきった梅・桜「車引」の緊迫と高揚とは、初めて観た気がする。橋之助の松王丸も弥十郎の時平も、 名題に昇進した巳之助の杉王丸も気張っていて、「車引」をやや軽く観てきたのを見直した。
 三番目は、「戻橋」。幸四郎武勇の渡邊綱に、福助の扇折小百合実は愛宕の鬼女が果然挑みかかり、激闘の末、綱が鬼女の片腕を切り落とす。後に「茨木」で 腕を取り戻しにくる、あの前場とも謂える面白い所作の芝居。美しいい大道具の景色を背に、幸四郎は剛毅に手堅い貫禄で向き合いながら、小百合の容色にも惹 かれる味わいこまやかで、さすが。そして福助の変わり身が、これぞ、もの凄い。こまかに変化する所作を父芝翫亡きいまや名手の域の福助が、リズム豊かに舞 いながら、化生の本性を見破られて大化けする迫力。面白さ。堪能した。
 大切りは「ども又」こと「傾城反魂香」土佐将監閑居の場。吉右衛門と芝雀の夫婦愛が胸をうち、亡き雀右衛門の藝をつぐ父追善の芝雀がけれんみなく真摯に きっちりと女房おとくを勤めた。何と言っても、吉右衛門の「ども又」藝の切にして確かな至藝、それなしにはこの芝居は面白くならない。これまた、かつて何 度も観た「ども又」の、最良の表現、達成であった。ああこんなに佳い芝居なのだと納得した。歌六の将監、東蔵の北の方、友右衛門の雅楽之助がみな手堅く主 役の二人をさも鼓舞激励し、ども又神妙の至藝を引き立てた。ども又は切望していた土佐の名のりに光起という美術史にも燦たる名前を許される。嬉しさのあま りのどもまたの踊りも、吉右衛門は飄々かつ無邪気に踊ってみせ、大団円が楽しかった。

* 眼の不安定なわたしを労って、最前列の真ん中の絶好席を用意してくれた松嶋屋の番頭さんに、大感謝。おかげで我當の翁に祝い清められて来れた。ありがとう。

* じつのところ妻もわたしも体調よろしからず、立ち居にも歩きにも不自由し、銀座一丁目辺の鮓の「福助」でも食欲が湧かずに、一路帰宅した。しんどかった、だが歌舞伎は生き生きと楽しんだ。


 
* 正月十二日 土
           
* 血圧129-53(59) 血糖値87 体重65.0kg  朝、パンケーキ クッキー 朝の服薬 眼不調 朝の仕事 発送 午食 午の服薬 午後之仕事 江古田の歯科へ 帰りにブックオフで本を買う 帰宅 晩 稲庭饂飩 干し柿 苺とミルク 晩の服薬 晩の仕事、

* 盛んにアベミクスと称して安倍総理の強気な経済・デフレ対策がもて囃されているが、慎重にもっと先行きが観たい。外交も、同じ。ウハウハの自民党の思惑よりも経済実態の深刻で複雑な負の力を嘗めてかかっては危ない。

* いわゆる「除染」の下請けまた下請けで、作業員の宿泊、食事代の瞑目で、中間での「天引き」が横行し、業者支払いの作業員日当が千円程度しか支給され ていないという。「日給」である、「時給」ではないのだ、放射能対策の現場がいかに機能していないか、「人を人として待遇していない」こんな実態では、ま すます人手不足が深刻をきわめて最前線の現場荒廃がすすむ。それでもなお安倍総理は原発新設を前倒し実現を「考慮」している。経済界の要人たちの浮かれ節 は、「経済、経済、経済だよう」と。
 果たしてそうか。わたしはこういう浮かれようの如何に危ない、回復不能なほどの痛手を産みだすか、あのバブル崩壊を思い出す。彼ら経済至上に奔命するセリフはあの昔の声音とまったく同じだ。
 人間の生き方に経済が第一などとわたしは決して思わない。「人間」それぞれの品性と知性にこそ多くを期待したい。

* そもそも目に見えず匂いもなく音も立てず、その危害は体感されないまま、大なり小なり大地へ降りかかっている放射能除染は、可能で有効な方策なのか。 ごく限られた地面を剥いでいるだけ、しかも剥いだものの処置がかなりいい加減で、いちばんあってはならぬ河川へ、うみへの放流が平然と上から指示すらされ ている有様。ほんとうに除染効果は有るのか無いのか、誠実な専門家達の討論が聴きたい。

* オリンピックの東京招致にも、わたしは、判断を保留する。猪瀬都知事やスポーツ関係者の熱意に水をかける気はない。単純に楽しみに待つという気も否認しない。問題は、だが、幾つもある。、

* もう大学。高校、各界知名の人たちから、湖の本114巻に感想や返礼や挨拶が来ている。まだハ・マ行の読者、多部数の読者に送りきれていないので、紹 介は控える。元新調編集長の坂本忠雄さん、金八先生の小山内美枝子さん、国際基督教大学の並木浩一教授、早大の中村明教授、染織作家の渋谷和子さん、歌人 で翻訳家の持田鉱一郎さん、同窓の松下圭介君らの葉書・手紙・著書など戴いた。

* 午後三時、今年初の歯科に。帰りには、江古田のブックオフで、これも今年初、岩波文庫五冊を買ってきた。もつと欲しかったが重くなるので遠慮した。ア ポロドーロスの「ギリシア神話」 マハーバーラタ「ナラ王物語」 ペトロニウスの「サチュリコン」 沈復作の「浮生六紀」 そしてマルクス・エンゲルスの 「共産党宣言」の五冊。いずれも、直ぐにも読み始めたいものばかり。
 減らしたつもりの就寝時読み本が、鴎外の「ヰた・セクスアリス」は読み上げたが、林屋辰三郎「日本芸能史」を増やし、もう一二冊積んだので、これ以上はすぐに読み出せない。だが、頬がゆるみそうに楽しみだ。

* 新歌舞伎座、四月、五月、六月柿落し演目・配役各三部制のの正式な綜合案内が送られてきた。わたしたちは、全九部をみな観たいのだが、そうはいかない と思う。全部を観れば観劇費用はたいそうかかるけれど、残生残日の歌舞伎最上の思い出になる。回数が重複しても観たいと、いま、希望の日程調整につとめて いる。
 抗癌剤服用の副作用は侮りがたくじりじりと身に迫って容易でないが、乗り切って、歌舞伎を堪能したいもの、だが。

* 今日も、眼は不調。八時半だが、もう霞んでしまっている。歯科への往来もらくではなかった。たちまちに眼を閉じていたくなる。事実、診察台でも、往復 の電車でも、眼を閉じ、口もきけない。が、そのしんどさと、あれこれしたい仕事への頭の働きとは別ごとで。もう半年、乗り切ってみせると楽観すらしてい る。しかし。らくではない毎日の波を泳いでいる。游いでいると書きたいが。


* 正月十三日 日
           
* 血圧132-54(61) 血糖値92 体重64.5kg  朝、パンケーキ  干柿 朝の服薬 午前湖の本発送 午 卵かけ飯一膳 グラタン 午の服薬 午後歯科へ 帰宅して湖の本発送山越す 排便 晩 雲呑 春巻 林檎 野菜ジュース 晩の服薬 

* 昨晩、被災地児童の被災当初から沃素値の検査や検討がおろそかであったこと、小生の癌発症を不安に思う浪江町の真剣な取り組みが報道されていた。セシ ウムさえ計っていればという当局利の取り組みは、わるくいえば義理か厄介のその場しのぎであった。危険な放射線は最悪のストロンチウムまで、幾重にも人体 被曝をそしらぬ顔でなしている。この種の被曝発症までには原爆でもチェルノブイリの例をみても、二三年から数年して現れる。慎重で真摯なフォローが望まれ る。陰険な手抜きを専らにしていれば、海外からの東京五輪も当然警戒される。今日も東北に余震があった。東北での聖火リレーを都は考えているという。それ ならそれの万全を計らねば強烈な竹篦返しに遭うかも知れぬ。
 「除染」とは徹底的に考えて、可能なのか、効果が科学的に確定できているのか。「除染」は不可能、「その場しのぎ」の声は増えてきている。きちんと答えよと言いたい。

* モラルに欠けた復興予算の蚕食やごりおしの増額など、自民党政権は民主党政権の悪政をさらに倍。倍に拡大して行こうと、露骨である。「被災地」にこそ有益な事業を興して職の創設や増強をこそ計るべきなのに。

* 自民党政権は、明瞭に「原発回帰」をはかっていて、厖大な金食い虫の「もんじゅ」を温存し、新型炉のなおなお開発を政治路線にしっかり載せている。そ の一方で東南海地震の新予測値はわずかながら上昇している。そんなときにも敦賀原発では監視機器の配線を「誤切断」という人為ミスを起こしている。青森の 六カ所村では、下北半島の断層調査が、「稼働強行」に強い待ったを掛けている。福島県知事は、安倍総理に「県内全原発を廃炉へ」と直談判している、あれだ けの被害・危害を受けて、國や東電の対応はあまりに半端でなく遅い、遅い。県知事の判断を支持する。当然である。

* アベノミクスとやら、安倍総理はいきり立っているが、日銀への強圧はやり過ぎもいいところ。「独裁」自民をどう画策しようと国民は警戒し押し戻さねば ならぬ。白川というみるからひ弱そうな日銀総裁が任期で引退するのは構わないが、新人事に政府の陰険な相棒潰しを許してはならぬ。
 阿部政権は、すでに暴走の気味を漂わせ、甚だ危険。

* 湖の本114の「読者」への発送も終えた。追加の各界寄贈のための宛名書きなどが、まだこの先に必要。ところがこの一週間は容易ならぬ輻輳状態で、作業のためには頭が痛い。ま、凌いで行くさ。

 ☆ 2013お正月  
 遠様  迎春
  早小正月に成ります、ごきげんはいかがですか。観光客が少なくなり、静かな京都に戻りました。
 去年の今頃は心配でしたが、今年は大変な努力で良くなるだろうと安心です。
 南天は(難を転じる)と言われて居る様です、転じて欲しいと思って写真を送ります。
 沢山実を付けました、ご近所にもお分けしました。
 ご存知でしょうが、画像の取り込みは画面の内でマウスの右クリックして、名前を付けて保存をし、ドキュメントかピクチヤーに保存します、以後色々と加工します。お困りの様子かと思って!
 ご縁があり、去年春から京都中信の美術館のご案内を頂いており、今年の京都美術文化賞の案内も頂きました。
 連休を終えたら19日は雲岫会のお初釜です。最近は遠出が出来ません、健康のみ気にして居ります。  華


* 南天の豊かに美しい写真が届いていて、それを機械に保存する手続きは承知しているが、写真をホームページ上に転写する手順が依然と変更されたのか、どうやっても成功しないのに困惑している。
 南天は昔から好きで、いまも、我が家の庭では亡くした愛猫の「ネコ」「ノコ」の墓地を季節ごとにはなやかに彩ってくれる。南天は、葉の色・形もきっぱりと凛々しい。 

* 明日は俳優座に招かれている。山田太一さんのドラマ。そのためにというのではないが、湯に漬かろう。

* 湯にいるとほっこりと安住する。今夜は五冊を少しずつ読んだ。入浴後の体重は44.5kg。
 盛んに予告していたドラマ「とんび」を離れ、年賀状をアドレスとして記録、まだ、よほど残っている。記録し保存しておくとやはり便利。機械の破損したと きにかなり多くというか、殆どを消失していたので、欠かすことの出来ぬ作業。                                                   
* ドラマといえばこのところ何度も「仁」というのを面白く興深く観ていた。こういう手法は、わたしの太宰賞受賞作の「清経入水」や「初恋」「風の奏で」などより以前には小説でもドラマでも見なかったものだ。
 さて「イ・サン」が今夜で終わる。



* 正月十四日 月 大雪
           
* 血圧114-55(61) 血糖値98 体重64.2kg  朝、ロールパン一つ クッキー 紅茶 養命酒 朝の服薬 午前の仕事 大排便 午後の俳優座招待観劇予定を中止、連絡 午、豚と大根のうま煮、林檎、栗 午後テレビ観て休息 晩 

* 国民の頭越しに、安倍総理訪米みやげに「集団的自衛権」を勝手に約束してきてもらっては、絶対いけない。釘を刺して置きたい。

* アメリカは核の使用済み核燃料の最終処分場を2048年までにと方針決定した。アメリカよりも遙かに国土の狭い地震国日本は、いったいどうするのか。誰がそれを提案し誰が検討し誰が決断するのか。そんなことも国民にはまだ全く知れない。

 ☆ 今年もよろしくお願いいたします。
 
秦恒平さま 今年もどうぞよろしくお願いいたします。
 『湖の本』(114/ペンと政治(一))をいただきました。いつもありがとうございます。
 ペンクラブを思い切って退会して以来、ペンの活動についいては、すでにまったく不案内ですが、以前の言論表現委員会の様子や、「私語の刻」の石原発言への言及や 梅原猛さんの夢を見たくだり、有難く拝読いたしました。
  お身体はいかがでしょうか?
 副作用が少しでも軽減され、すべてが快方に向かうことを祈っております。
 私の方は一年経ち、ステロイドの服用量がだんだん減ってまいりました。
 世の中、嫌なことばかりで、アベノミクスが悲惨な結果を招くのではと憂鬱な気分になりますが、まずは自らの畑を耕さねばと 今年は気持ちも新たに、出直そうと思っております。
 どうぞお身体大切に、そして変わらずに秦さんの確かな言葉を私たちに向かって発信されんことをお願いいたします。  
                        久間十義 三島賞作家

* この作家にわたしは不思議に親近感をもってきた、言論表現委員会などで一緒だつた昔から。励まして貰ったと、嬉しい。

 ☆ 東京は雪
 武蔵野には雪が降り積もっていることでしょう。俳優座の公演に、と書かれていますが、寒さがお体に障りないことを願っています。
 こちらは午後になって雨もやみましたが 、やはりかなり冷えています。
 新しい年も早や半月が過ぎようとしています。
 暮れから半月余り、忙しい日々でした。姑、娘、来客、平均八人、多い時は十人の食事の支度など、普段の暮らしとは異なり大変でした。昨日午後漸く「解放」されましたが、さすがに疲れを感じて唯々休んでいます。
 良い年でありますように。
    尾張の鳶

 ☆ 湖の本お礼
  秦先生 ご著書いただきました。
  三月には川端伝が出る予定です。
  どうぞご養生くださいませ。   作家 小谷野敦


 ☆ 湖の本
 遅ればせながら、あけましておめでとうございます。静かな新年をお迎えのごようす、お慶び申し上げます。
 さて、唐突に話題変わります。
  「脱原発」派は、前回の選挙でもわかるように、なかなか一つにまとまりません。なぜなら三・一一以前の発想の人間と、そうでない人間の落差があまりに大き いからです。今までの自分の生活を変えなくてもなんとかなると思う脱原発派と、生活の根幹から変えなくては生き残れないと信じる脱原発派では、到底折り合 いがつかないのです。
 現在二号機が温度上昇していることをご存じでしょうか。東電は計器の故障だと言いますし、下手をすると永続再臨界状態になるという凍りつく説もあります。真偽は不明ですが、二号機一つでさえこのありさまなのです。
 既に、電力会社幹部は南半球に逃げ場所を確保しているとも聞きます。菅総理も事故直後に自分の息子夫婦を海外に逃がしていました。三月十五日 には、米軍横須賀基地は女子どもを国外脱出させていました。政府はこの時東京が避難すべきレベルであることを承知で黙りました。これは民主党政権に限らず どの政府でもそうしたことでしょう。結果として三月だけでも、私たち都民の被曝は甚大なものだったのです。その後も汚染され続けている東京の現実は、想像 以上に凄まじいのです。
 失礼ながら、二つ申し上げます。
 著作権の安泰なように、将来の読者のために何かの方策をお考えください。
 これから私は「湖の本」が、世界の誰かの人生の同伴者になるお手伝いをさせていただきたいと思います。みづうみが、どこかの「身内」の読み手に出逢えますように、ライフワークとして取り組みたいと願っています。
 この想いだけは負担で不快なお節介と挫かないでいただけますように。  独楽  おのが影ふりはなさんとあばれ独楽  占魚

* 二日の「私語」で、こんなことを書いた。

 ☆ 無常     宋之問
 年年歳歳 花相似たり
 歳歳年年 人同じからず
 
 はじめて谷崎潤一郎の小説の中で出会ったあまりに有名な詩句。背景に、とんだ伝説もあるが、正月ゆえに、触れない。吟誦して実感のいつも胸にせまる詩 句。「人同じからず」は親友や知己を喪った哀しみを読むのが普通だが、交友の微妙な集散にまで想い及んでもいいだろう。一層の感懐が得られよう。

* 上の「背景」を問われた。たいしたことではないのだが。この傑出した詩句はじつは宋之問身辺の詩人の創作であったが、あまりの秀抜に惚れ込んだあげ く、原作の詩人を毒殺して地震の手柄にしたというのだが、「伝説」の域は出ない。相手の詩人についても伝説は明かしているが、それも信じていいか確証はな い。禍々しいので三が日の話題にはしたくなかった。
 
* 冒頭の「述懐」詩句は、借りてわたし地震の述懐とも言い表している。
 
 冬草の青きこひつつ故郷に
     心すなほに帰りたく思ふ         斎藤茂吉
                                                 「故郷に心すなほに帰りたく思ふ」憧れが増している。 寒さや雪のためにもむりと承知で、そんな気になる。せめて暖かければと。茂吉にこんなナイーブな表現の有ったことまでが心嬉しい。              

* 俳優座の招待を、今朝の大雪をみて、辞退した。傘と杖とで両手をふさがれてよろければ転倒しかねない。明日は聖路加の眼科診察日だが、路面の凍結は今日以上に危険と思われる。きつい寒さで、容易に解凍しそうになく、これも明日電話で日延べを願おうと思っている。
 十分仕事も用事もした。眼はもう機械の字が見えぬほど霞んでいる。洗眼して、やすみます。



* 正月十五日 火 
           
* 血圧135-66(51) 血糖値94 体重64.1kg  朝  福茶と十五日小豆粥雑煮を祝う。朝の服薬 路面の凍結と転倒の不安のため聖路加眼科検診の延期を申請 午前の仕事 午 アンチョビのスパゲティ 和菓子

* 氷結と転倒を避け、聖路加眼科受診の予定変更を申請、今日も家を出ない。

* 「國払い」の除染事業であるにかかわらず、受注業者が不当に利益を着服し、作業員の負担しなくていい「健診費や講習費」も自弁させ、防御の「長靴」も 支給していないと報じられ、作業員が抗議すると「働かせないよ」と脅されているという。怒りに身を熱くする。国民の税を投じるからは、官庁もきっちりかか る悪徳・強欲を監督・監視すべきに、それが出来ていない。新聞報道がそれを暴いているのでは、順序が逆である。

* 原発再稼働の前提となる規制委の安全審査には相当な期間を必要とし、しかも検査や指示を満たして行く補強工事費は膨大化し、事実上、再稼働ゼロとなる公算が出来つつあると。そう、それを厳格に監視して誤魔化しを許すまい。

* 世の中にはさまざまな「問題」「事件」の起きているのは承知しているが、今年もわたしはもっぱら「原発関連」を監視しつづけたい。わたし自身は、い ま、身動きのままならない病身であり、専門家でもないが、それでも多くの情報や報道を心して読み取りつつ、自身の意見や推察や直観により、冷静に大胆に主 張を述べて行く。国民・私民が率直に「声」を起こして持続せねば、不正や悪政は糺しがたい。

* 札幌の真岡教授から、北海道の「お米」六種をどっさり贈って戴いた。お米の種類にも味わいにも疎く、せいぜい売り名の二つ三つしか知らなかった。手紙で、いろいろに教わった。

 ☆ 拝啓  秦 恒平様
 武蔵野も今年は寒い冬と聞いております。その後、お加減はいかがでしょうか?
 北海道は年末からずっと、真冬日が続き、雪と氷の中で暮らしております。先週は会議で道東十勝へ出張し 零下二十九度を体験してきました。充分な防寒を したにもかかわらず、夜の駅で汽車を待つ十分の間に、手足の感覚がなくなりました。雪解けにはまだ八十日有ります。雪間の草さえまだ先ですから、花を待つ のはまだまだ先のことです。
 北海道のお米、六種類を同封しております。同じ道の産なのに、味も硬さも驚くほど多様です。いろいろ試して頂いて、もしお気に召したものが見つかりましたらお知らせ下さい。
 関西で育った方は、柔らかめのご飯を好まれる傾向がありますので、まずは「あやひめ」という品種をお薦めします。茶事の懐石で折敷に載って出てくるような炊き上りになりますが、味はあっさりとしていますので、喉の通りも良いと思います。
 もう一つのお薦めは「おぽろづき」という私の属する研究所で育成した品種で、ねっとりとした餅米のような風味がします。見た目も餅米のような乳白色をしており、その景色から朧月という風雅な品種名がつきました。
 ちなみに柔らかさは「あやひめ」「ゆめぴりか」「おぼろづき」「ふっくりんこ」「ななつぼし」「ほしのゆめ」、味の濃さでは「おぼろづき」「ほしのゆ め」「ゆめぴりか」「ふっくりんこ」「ななつぼし」「あやひめ」という順番ですから その日の体調やお好みでいろいろ召し上ってみて下さい。ご飯を要に、 お食事を少しでも楽しんでいただければ幸です。
 昨年から眼の調子も思わしくなく、今年は大学病院で精密検査を受けることになりました。複数の中間管理職を兼務し、さらに研究を続けて、それでも二年間 両立させてきましたが、やはり気力体力の限界を感じました。上司もこのあたりはよく見ていて、ついに四月から管理職に専念することになりました。入省以 来、寝ても覚めても、一日中研究のことを考えていただけに、春からどのような生活になるのか想像もつきません。時間に余裕、正確には気持ちに余裕ができた ら、頭の隅に仕舞って老いたお茶や文学の小箱を開けて いわゆる「健康で文化的な生活」が出来るぞ! と自分を励ましています。春以降どうなったかについ て、また落ちついたところでお便りしてみたいと思います。
 奥様共々、お健やかに過ごされますよう、花や紅葉を楽しまれますよう、心からお祈りしております。
 お眼の具合よろしくないところ、読みづらい悪筆にて失礼いたしました。
 最後になりましたが、昨年のご指摘、心しております。ありがとうございます。  敬具
   平成二十五年一月十三日   真岡哲夫

* 親身のお手紙、感謝に堪えない。ではでは六種の「北海道産 お米」をしみじみ味わいます。

 ☆ 頌春 癸巳正月
 貴誌114、有り難く拝受仕りました。謹んで御礼申しあげます。
 小生 九十八歳に入り、関心いよいよ狭く、歌 すっかり衰えました。
 貴台の広さ、羨望に耐えません。   清水房雄  歌人

 ☆ 謹賀新年
 「湖の本」114 ありがとうございました。
 まさに同感をもって読んでいます。
 おそろしい時代になってゆきそうです。
 どうぞお大事に。    島津忠夫  国文学者

 ☆ 前略
 百十四巻目の「湖の本」を拝受いたしました。
 ペン(クラブ)に関わった事があっただけに、身にはねかえってくる痛みを感じながら、秦さんの深く激しい「歎き」を受けとり、ご病身をおしての文章(文学)を通しての闘いの継続に強く衝たれました。
 せめてもの応援の気持の、「湖の本」へのささやかなカンパを同封いたします。失礼とは存じますが、ご受納いただきとう存じます。
 どうぞお身体、呉々もお大切になさって下さい。  草々     元出版部長

* 早速に恐れ入ります。ありがとう存じます。

* 漸く年賀状の住所等の点検を終えた。今年は去年の倍ほども年賀状を頂戴していた。機械のアジレスブックがおそらく500を優に超している。不徳なれど、わたし、孤でないとしみじみ思う。

* 有難いことに、はしなく、久しい読者のご住所が、今しも創作上の見当を集中させている地域にあるのを確認し得て、なにか史料が手に入りましょうかと問 い合わせたのへ、一山もの史料や参考書を送ってきて下さった。これはこれは思いも及ばなかった嬉しいお年玉。力づけられて仕事をまた一段と先へ先へと進め たい。四国の木村年孝さん、心より御礼申し上げます。

* 二日、大雪休暇をもらった塩梅にて、用事のかなりが片づいてきた。発送も明日には大方終えられるだろう。宛名書きをしなくては。それらが済めば、また 「仕事」に主に集中出来る。もっとも、仕事の速い凸版さん、次の初校が出て来るだろう。前途は、けっして平坦にならない。平坦ダラケになっても張り合いが ない。ま、成るように成ればよしと。

* 夜前というより
暁暗に、半ば眠ったまま「女の身」となり、妖しく妄想していた。
  
  白妙の白よりわれの肌身かな
 
  湯気のなかへ誘はるる身の除夜の鐘

  年の瀬の逢ふ瀬にうかぶ乳房かな

  こりこりと乳首ふふまれ明けまして

  元朝や萬行快楽(けらく)「一」致して

 試みている或る「寓話」との気脈であろうよ。 


                              
* 正月十六日 水 
           
* 血圧131-60(57) 血糖値85 体重64.7kg  朝  ロールパン半分 半熟卵二つ 朝の服薬 排便 排便すると排尿も好調 朝の仕事

* 大島渚映画監督八十歳で逝去 読まれるのはご無理と承知で、何と無く御見舞だけでなくわたし自身に励みをもらう気持ちで、創刊以来「湖の本」を献呈し 続けてきた。夫人の小山さんにもそのようにお願いしていた。とうとうという痛みを覚える。私的には何のお付き合いもなかったが。結婚された頃、わたしは大 学生であったろうか、もう東京に出ていたか、何にしろ大島・小山夫妻は私の実家のあった東山区新門前仲之町の、白川に近い瀟洒な路地奥に住まわれていたの を聴き知っていた。ほほうという気分だった。
 剛毅な人で、テレビ出演仲にも気にくわない発言者に怒鳴りつけることなどあり、そのつど、わたしは大島さんの癇癪に同感していたものだ。寂しくなった。

* 不適切除染例がさらに増えている。何という認識不足が横行してしまうのか。最たる存在の一人として、福島市長瀬戸孝則氏の大阪市長を訪ねたおりの「発 言」で。「放射能から頭離れすっきり」には幾分同情もするが、浪江町長の悪戦苦闘にくらべておツムが軽いのでは。除染廃棄物は持って行く先が無く、庭に安 全に保管している、人(市民)にも勧めている。意外と放射性セシウムは安全に保管できます」などと喋っている。除染するのはセシウムだけと誤解している。 被災現地の市長がこれでは頼りない。

 ☆ 前略
 「湖の本」114、誠に有難く拝受いたしました。
 文士の対極にあるのが政治家と思つてゐますので、作家である政治家への批判を大変おもしろく拝読しました。丸谷才一氏が政治家は嘘をついて身を飾ると書いてゐましたが 私などまで嘘の材料に使はれてえんざりしてゐます。
 御病気で大変な中を御活躍されてゐるのに同病者として感服してゐます。どうかお躯に一層お気をつけて下さい。
 葉書で甚だ失礼ですが取り急ぎ御礼まで  草々  大久保房男  元・群像編集長

 ☆ 新しい年を迎え
 おすこやかにおすごしのことと思います。「湖の本」114をご恵送下さり、ありがとうございます。いつもいつもご芳情のほど、深謝しています。
 1998年〜2000年までの日記を拝読、これほどまでに社会への関心と鋭さ、ただ敬服するばかりです。残りの年も、大いそぎで読みます。
 今年もますますのご健勝でありますよう、祈っています。  伊井春樹 阪大名誉教授 美術館長

 ☆ 寒波御見舞い 並びに
 新著力作ありがとうございました。暮に体調をくずし失礼致しました。 伊藤壮  元・朝日新聞社

* 伊藤さんの御陰で「湖の本」は二十七年前に、有難くゆったりと船出できた。どうぞ、お大切に。

* ほぼ全部の発送用意が出来、明日には送り出せる。疲れたが、これで「仕事」へとちょいと奮い立ったが、明日朝には「湖の本」115のゲラが届く。可能なら、大地震・大津波・原発破壊から満二年、三月十一日に刊行したいと願っているが、ま、その辺で。
 十時になった。やすんで、寝床で本を読もう。明日、もう一日家におれる。明後日は演舞場の初春大歌舞伎夜の部を見にゆく。雪の溶けきるのが望まれるが。



* 正月十七日 木 
           
* 血圧123-55(59) 血糖値86 体重64.1kg  朝   豆入り煎餅三枚 プルーン二個 朝の服薬 洗眼 口腔洗浄 湖の本115初校出  郵便局へ 湖の本114発送了 午前の仕事 午 カレー饂飩 午の服薬  午後の仕事 晩 上牛肉と深谷葱のすき焼き 肉の味分からず。夜の仕事 入浴読書五冊 64 .5kg 。

* 東海第二原発訴訟が、今日、第一回口頭弁論へ。弁護団共同代表の海渡雄一氏が「大地震の恐れ強い」と論陣を張るのであろう、詳報を待ちたいが、東海の 大地震の確率は年ごとに増しているのは間違いないだろう。いま、たとえもう一基でも原発が爆発すれば、立地により悲惨な壊滅日本を招きかねぬ。裁判で争わ ねばならぬという「政治」の現状にふつふつと怒りが湧く。

* 大飯断層調査の結論を規制委が引き延ばしている。真に慎重で誤魔化しがないなら、後々のためにも正確な調査結果を隠蔽せず公開して貰いたい。
 一方、茂木敏充経産相は福島第一の廃炉工程を前倒ししたいと視察後に語っているが、「廃炉」は建設並みの難しい工程を慎重の上にも慎重にしないと、途中 事故一つで大惨事が起きる。軽率に走らず着実にいわば「廃炉學」をも極めて欲しい。言うは易いが廃炉は難しい危険な科学の未踏の難境の筈。
 更に他方では新潟県の泉田知事は、柏崎刈羽原発に関して住民から出ていた「県民投票条例案」に反対している。言い分は、県民に判断するだけの知識も情報 も無いという始末。前の石原都知事は、都民に「国事」への口出しなど容認しないと言っていた。何を考えているのかこれら首長は。都民や県民を要するに虚仮 に扱っているのだ、自分自身がどんな自身正確な判断か出来ているのかと反問したい。福島県双葉町の井戸川町長など、町民将来の健康を赤く憂慮して故郷への 帰還は「三十年後」と歎いている。おそらく反発の声もあがろう。しかし井戸川氏の懸念は行政の誠実を思うなら、じつは否定しがたいのだ、浪江町の町長もそ のように思って健康調査に心身を労している。かかる歎きを新潟県知事らは体感できているのか。
 被災者への賠償もとことん停頓しているという。そしてまたも、公共事業への大ばらまき予算の陰で、生活保護に頼っている人たちへの給付引き下げ案が、公然自民党政治から泥のように滲み出てくる。デフレ脱却、出来なかったら責任を取り安倍晋三総理には退陣して貰うぞ。

 ☆ 
拝復 秦 恒平様
 お健やかに新年をお迎えのことと存じあげます。
 日頃はご無沙汰申し上げております。
 このたびは、湖の本114号『ペンと政治(一)新世紀へ、崩壊の蟄音』のご恵与を賜り、厚く御礼申し上げます。民主党の失政に
起因するとはいえ、自民党政権が復活し、声高に憲法改正や原発再稼動など民主化逆行が唱えられている現在、まことに時宜を得たご提言と拝察いたしました。
 私は、昨年満九十歳を迎えましたが、何分の高齢者ですので、あちこち故障が多く、目下自宅にて静養を続けております。
 そのような次第ですので、ご無沙汰の件もなにとぞご海容のほどお願い申し上げます。
 一層のご健勝をお祈りいたします。
  敬具    英 青山学院大名誉教授

    政治に対して
 これだけの直言の出来る人が、もっと増えて欲しいと思いますが、一人でも二人でもと。
 閣僚こそが第一に読むべきでしょう。    岡山県

  先生のサインに
 とても感激しました。ご闘病の日々でいらっしゃるのに、本当にうれしかったです。
 今回のエッセイも興味深くて、「私も!」と、そう感じていた当時(=小渕、森、小泉内閣)を思い起こしながら拝読しております。このつづきが楽しみです。(最新版も、早く拝見したいです。)
 昨日、関東地方が大雪に見舞われ、静岡も冷雨の中「湖の本」が届きました。厳寒の中ですが、どうぞくれぐれも御自愛くださいませ。      静岡市                                            

 ☆ このたびは
 湖の本114 「ペンと政治(一)」をご恵贈くださり 心より御礼申し上げます。
 政治への厳しいまなざしを重く受けとめております。
 酷寒のみぎり どうか御自愛のうえお過ごしくださいますようお祈り申し上げます。  山梨県立文学館                         
 ☆ 冠省
 湖の本最新刊拝受、ありがとうございます。
 PENに関する記事は、全会員、というより、前会長らの、
PENの精神、また文学にコミットした人間に必要な志の 二つとも忘れた連中に読ませてやりたいものです。五千万円の大赤字のうち二千万円は、前会長や側近の企画した飲み食いに費消されたもので、調査の結果に、もう、呆れました。
 それはともかく、東京地区ではめったにない大雪。このあとの大寒にご用心を…     日本ペンクラブ  

 ☆ 寒中お伺い申し上げます。
 お障り無くお過ごし下さってるようお念じ致しております。
 此の度は、ご本のご恵送を賜りありがとうございました。早速頁を繰らせて頂き、「それでも私は戦争に…」を思い出汁改めてそれをも再拝読、「今浦島」の自分を恥しく思うばかりです。 でもでも秦さんの姿勢に力を貰っています。
 どうぞ御自愛賜りまして 日々、お平らに、と念じ居ります。     京都同窓

 ☆ こんにちは、京都です。
 新しい湖のご本届きました。いつもありがとうございます。
 こちらは風の冷たい毎日ですが、観光客が少なく静かな佇まいです。
 東京は大雪で大変でしたね。
 お口の苦みが少しでも紛れますよう、僅かですがお菓子をお送りしました。19日に届きますのでお受け取り頂きますようお願い致します。
 お眼やご体調がお楽になられますよう願っています。
 どうぞ奥様共々お大切にお過ごしください。     みち  京都の従妹

 
* 明日から抗癌剤一週間の休薬。  

* 湖の本115の跋文のために、辛抱よく仕事していたら、もう十二時。驚いた。      


  

* 正月十八日 金 
           
* 血圧127-60(54) 血糖値90 体重63.6kg   洗眼 含嗽 朝   海苔握り飯二つ 豆入り煎餅二枚 干し無花果二つ 点眼 朝の服薬 今日から一週間抗癌剤休薬 朝の仕事 掌の荒れと痺れは最も顕著で長期連続、ものに触 れるとバリバリと引っかかる。 排便 午後は新橋演舞場で夜の部を楽しむ。なにも食べたくない。眼は、涙に曇りがち。 加えてこのところ顕著に粘った唾液 がひっきりなしに口に溜まる。 はねてのち帝国ホテルのクラブで、好きな角切りステーキとアイスクリームとが久々に美味かった。強い酒もダブルで。終日体 調はダル重く、ときどきよろけた。

* 福島で除染に携わる作業員らは放射線量も知らず、また被曝量も通知されていず、現場の安全管理はきわめて杜撰で無きに等しいと報じられている。「責 任」はどこの誰にあるのか、責任追及の甘い点では中国や韓国にはるかに劣っている。責任追及の声をあげまた上長からの指令も無いのは、一朝我が身に同様の 責任が生じた際に首だけすくめて逃げ切りたいからであろう、日本人のいじましさの一例か。この場合、当然に「國」が線量管理をすべきなのである。作業員の 健康や命の安全をはかるのが國の國たる責任ではないか。「國の犯罪」があまりに数多くまた悪影響も甚だしい。

* フィルター付きベント設備が原発稼働安全の最要点のひとつだが、多くの原発で用意されていない。ことに沸騰水型原発での再稼働強行など論外の暴挙。規制委のこれが公式見解のようであり、なし崩しに骨抜きにされてはならない。
 さらには志賀原発の北に活断層が、専門家達の調査で見つかっている。見て見ぬふりのままの稼働などさせてはならぬ。
 また東海第二原発の不安定危険をめぐり法廷闘争がなされていて、國と原発とは争う姿勢にある。「過酷事故が起これば首都壊滅」という原告側の提訴をわた しは強く支持する。現にこの沸騰水型原発は、あの震災時、外部電源が喪失し、津波にも重篤の被害を受けていた。危険は露呈されているのだ。

* 午後、地元の銀行から、印刷所や高麗屋事務所へ振り込み送金ののち、都内へ。銀座で、ふとわたしが見つけて、妻はちょいと洒落た新しい上着を買った。泰明小学校の前から新橋演舞場ヘタクシーで。
 夜の部最初は、幸四郎、福助、梅玉、錦吾、高麗蔵らの、期待の「逆櫓」で。さすが手に入った役で、幸四郎は悠々威もあり格も高い船頭松右衛門じつは木曽 義仲四天王の筆頭樋口次郎兼光を、科・白とも緊迫、美しく毅く演じてあわれ深かった。中央五列めの角席から、オペラグラスで高麗屋の眼を深々と覗きづめ、 兼光の視線がまっすぐレンズを通して来るのをキャッチする楽しさは、謂いようもない。わたしたちがその席に来ているとは、わかっているのだろう、いつも主 役と対向の恰好の席をもらっている。作行の佳いかちっとした歌舞伎の秀作を先ずは堪能した。福助が花道の出てどきっとするほど横顔美しく、本舞台へ上がっ てからも濃やかな情愛を芝居の流れに棹さすように涙を隠し隠しよく表現していた。福助のこのところ幸四郎との共演は成績よく、阿吽のつりあい情け深い。

* 弁当場の幕間に座席まで夫人藤間さんがみえ、新年の温かい挨拶にくわえ、野暮なわたしなどの言葉及ばぬ瀟洒で繊細、舶来の長い長い襟巻きを、「暖かに なさって下さい」と言葉重ねられて、頂戴した。品はむろん帰宅後にみたのだが、手にした軽さと暖かさとに驚いた。潤一郎の面白い作に、魔術かのように天空 にうかぶほど軽い美しい織物が登場するのを、懐かしく思い出した。
 新歌舞伎座柿葺落としの予約もこころよく容れてもらった。いつもながら、ご親切、篤く感謝。

* さて二つめ。市川團十郎病気休演で松本幸四郎の由良之助主演となった仮名手本七段目「祇園一力茶屋の場」。図らずも実弟播磨屋中村吉右衛門の寺岡平右 衛門役との珍しい「共演」が実現して、それはもう大きな不幸中の幸いとなった。加えて中村雀右衛門一周忌の追善に次男芝雀のお軽が、亡父に手取り足取り教 わったというすばらしい芝居ぶり。もともと力ある暦とした立女形ではあるが、今夜のお軽の美しさ濃やかさ愛らしさには手を拍って「めでたい」思いを満喫し た。
 幸四郎は、何といっても「本役」の威風と洒脱と覚悟を、彼本来の彫刻的演技力で豊かに表現、有難しと敬服した。レンズを通しての眼覗きも手応え、いや眼 応えしっかりと楽しめた。吉右衛門のお軽兄平右衛門役は、もったいない程に大きく、軽妙な中に本気の覚悟がよく出た芝居ぶり。さすが。
 御陰で、何度も何度も観てきた七段目の光彩、とびぬけて立派な舞台となった
うれしかった。楽しんだ。

* 大切りは三津五郎の醜女が笑わせる松羽目物の「釣女」で。美女の方は、進境いちじるしく美貌にも深みのでてきた七之助。亡き父勘三郎も喜んでいよう。踊りもよくなっている。
 太郎冠者役の又五郎は適役で、わたしのよく言う「いい狂言顔」を活かし、軽妙な所作で三津五郎の晴れやかな醜女とのかねあいを無難におもしろく魅せてく れた。大名役の橋之助は美男で柄も大きいいい役者の押し出しなのに、キャンキャン発声の聞き苦しさにはいつもながらヘキエキ。よくテレビで商品を売り込む 評判社長のキイキイ声、あれよりも頂けないワル台詞、なんとか自覚して直して欲しいがなあ。

* 芝居は大いに楽しんだ。だが高麗屋の奥さんに「どうですか」と容態を聞かれたとき、「しんどい」と思わず答えたように、体調はけっして宜しくはない一 日で。弁当も、ほとんど食べなかった。食べないでいる方がラクなのだ、食べると上腹部が硬くつまり、息苦しくなる。空腹でいるとラクなのだ。だが苦くても 灰を含むようでも、食べないといけない、体重が減って行く。
 芝居のはねたあと日比谷のホテルの「ザ・クラブルーム」に久々に直行し、シャンパンのサービスで、好きな角切りステーキを頼んだ。置いてあるウヰスキーも直のダヴルで。ステーキだけが久々に「美味」かった。添え物はいけなかった。口直しのアイスクリームも口にあった。
 帰り道でも何度か、ヨロケた。十分気をつけている。が、杖はとても手離せない。乗り物では、みかねてか、いつもどこでも席を譲って戴く。
 十一時過ぎて帰宅。黒いマゴが喜ぶ。留守中の始末をつけて、やすむ。



* 正月十九日 土 
           
* 血圧104-57(71) 血糖値83 体重62.9kg   一週間で2キロ痩せている。 洗眼 含嗽 朝  鮓弁当三分一 葛湯 干柿一つ 朝の服薬 朝の仕事 排便 午 餅粥にあみ一膳 鶏唐揚三つ 林檎 わらび餅 午の服薬 午後の仕事 晩 饂飩 温泉卵 排便 

* 115の「序にかえて」にも書いたが、いわゆる「読者」には「作品だけ派」の人と「作者も派」の人が有る。わたしも少年の頃は、はなから漱石や藤村や 潤一郎や直哉の「作品だけ」を愛読し、「作者たる人」には予備知識も関心もなかった、まったく「作品だけ」で満足していた。しかし、追い追いにそれでは済まなく なった。「作者も」その人の作の「読み」を深めるのに、どうしても必要、と言うより、「作者の人」にも魅された、佳い読書のためにも必要だった。詳しい年譜 を求めて作の読みのための必須の栄養として大事にした。
 今度の『秦 恒平のベンと政治』も、「作品だけ派」の人には政治なんてと爪弾きに遭うか知れない、が、幸い「湖の本」読者には、「作者も派」の方々の多いのが事実で あるように想われる。この作者にはこの方面への傾斜もあるのだと発見するのは、わたしの体験から言っても嬉しいことだった、へえ、そうなんだ、と。
 そういう向かい方は、 とくに有能な編集者には必備の姿勢で、初対面の場合は「作品だけ」で評価するとしても、作者が有能であればどうしても「作者も派」として立ち向かうように なる。必要になる。

* 作業員を使って給与を支払っている「除染業者」たちの45%もが、安全管理や給与の支払いで「違反」を重ねていたと厚労省が発表している。監督官庁の 厚労省自体が、九時出勤のタイムカードを昼過ぎになって押しているのに同じい。厚労省が監督官庁なのは確かで、環境省からは「手抜き対応に終始口挟めず。手 も出せない」という。これでは「防災戦略に具体策が見えなくて」当たり前。「國」の怠慢・責任に相違ない。

* ああ「やっぱり」と胸を突かれたのは、福島第一港内の魚ムラソイから、過去最大値、一キロあたり254000ベクトルもの放射性セシウム、安全基準値 のじつに2540倍もが発見されていること。一キロこの魚を食すれば内部被曝線量は、4ミリシーベルトに達してしまう。タケノコメバルやアイナメにも同様 の被曝がみられ、範囲は増えようとも減りはしない。東電は相変わらず「これらは爆発汚染当時の魚が残存していた」だけと強弁している。こういうときに、ど うしても東電は、前向きに問題解決への姿勢になれない。駄目。

 ☆ 「湖の本」114号 代金振り込みます。
 感嘆に「114」と書きましたが、大変な偉業ですね。他に例を見ません。  澄  藤沢市

 ☆ (大学に入る=)十九才の誕生日、
 京都は雪景色でした。私も七十七才の誕生日を十日前に迎へました。
 長唄「松の緑」をと師匠に云ふと、どういふ心理なのかと……。一番最初に習つたけれど、一番知らない曲だと……。三味線と唄と、もののはじめにかへりました。
 (差し上げた=)小夏は、一時期ニューサマーオレンジと名を替へましたが、評判が悪くて、又、小夏になりました。初夏にだけ食せます。好評のやうなので、又、送つちやおうかなあ。
 四月、別役さんの芝居に出ます。そして歌舞伎座のコケラ、見にゆこうと。    女優

* この同窓とは、つい一両日まえにも、テレビドラマで出会っている。大学の進学適正検査の日にまぢかで見た。「ショートケーキ」のような美少女だった。 「美学志望」という人との片言をふと耳にして、即座に「歴史志望」から美学行きに「変更」した。美学・藝術学なら、何でも出来るとも思ったというと言い訳 になる。

* 二世荻江壽友が亡くなり三回忌追善の荻江演奏会を三月二日、日本橋劇場でと、荻江壽永の招待案内があった。番組には、私の作詞、壽友が作曲の「細雪」 も出ている。荻江壽々らが唄い、三味線のほかに米川敏子の琴も。正午に始まり七時まで。行ってみたいが。さて。水天宮に近い劇場には望月太左衛の囃子鳴物 の会で行ったことがあり、その辺で鮓の店にも中華料理の店にも独りで沈没し、おどろくほど大食いした覚えがある。

* 九時半。手探りで、画面に裸眼を押しつけないと字が読めない、書けない。休息する。涙が目やにとなり、唾はさながら濃い粘液となる。洟水はうかとしていると垂れてくる。掌には、痺れのほかに無数の深い皺。何故かなあ。



* 正月二十日 日 
           
* 血圧116-54(60) 血糖値88 体重63.4kg   一週間で2キロの痩せについて考えた。頻繁な、涙目、洟垂れ、執拗に粘った唾液は、抗癌剤のことは別にして、いずれも「同形・連携」で出ていると思う。 これは単に抗癌剤の副作用と謂う以上に、執拗な、または不用意な「脱水」症状ではないのか。掌の無数の皺も、やはり脱水ではないか。脱水と高熱で緊急再入 院した前は、しつこい吃逆に苦しみ、濃厚すぎる唾液を吐いて苦しんでいた。一度病院の救急へ駆け込んだときも同じ症状で、点滴を受けて改善、帰宅した。だ が帰宅してからも症状は再発し継続した。
 わたしは、あのとき、退院後にも、救急点滴の以後も、「意図して大量の水分」を摂ってみた、飲みにくくても。今回の痩せは、食べようとしないのも原因だ が、排便・排尿・涙・洟・唾液を始終体外へ排泄する量に比して、水分摂取量が不用意に少なすぎ、かなりの脱水に陥りかけているのではないかと、そう、わた しも妻も、一つの結論を得た。意図して、食べるはむろん、それ以上に、水分をたっぷり摂ろうと、夜前から、思い直した。二階の機械ちかくにもペットボトル を常置して努めて仕事しながら飲むことに。 
 朝 洗眼 含嗽 朝食は 餅粥一膳に あみ・塩昆布 ヤクルト 飲茶たっぷり。 朝の仕事。 午 焼売三個 葛湯 干し柿一つ 午の服薬 水分を量多く 飲んで、半日で、目立って粘った唾液が少なくなり、洟水もぐっと減った。涙目の量も頻度もやや減ったか。掌のバリバリ感もやや柔らかに。有難い。一昨日、 昨日と抗癌剤休薬の効果もあるか知れない、が、このまま水分補給を励行する。

* 心嬉しい一つ事を、まず書いておく。
 谷崎潤一郎『文章読本』を心底敬服しながら何度目かを読み進んでいるうち、記憶にもれていた以下の言及に再会した。
 谷崎は文章の「調子について」 一 流麗な調子 二 簡潔な調子 三 冷静な調子 四 飄逸な調子 五 ゴツゴツした調子 を詳論の末尾に、こんなことを思い入れ深く書き加えている。

 ☆ 谷崎潤一郎『文章読本』に聴く。
 (承前) もはや此れ以上細別するにも及ぶまいと思ひますから、此のくらゐにして止めますが、唯お断りして置きますのは、總べての作家が判然と此の五種 類の孰れかに属してゐると云ふ譯ではありません。體質と云ふものは生れつきでもありますが、その人の境遇、年齢、健康状態等に依つて、後天的にも變化しま す。ですから、若い時代には流麗派であつたが、年を取つてから簡潔派になつたり、或はその逆であつたり、いろいろであります。しかし實際には、さう純粋に 一方へ属してゐる作家は少いのでありまして、或は流麗調三分に簡潔調七分、或は冷静調五分に簡潔調五分と云つた工合に交り氣がある。又、幸田露伴氏の如き は鷗外に劣らぬ學者でありながら、その調子は冷静でなく、むしろ情熱的であつて、流麗と簡潔とを兼ねてゐるのであります。
 純粋なのは、その生一本で清澄な所を取るべく、交り氣のあるのは、その多角的で
變化に富む所を取るべく、それぞれ美點がありますから、一概に孰れがよいとは申し切れません。
 しかしながら、私はゲーテの作品を原文で讀んだことはありませんが、英
や日本によつて受けた印象を申しますと、同じ一つの文章が、視角をへる毎に、或る時は流麗調の如く、或る時は簡潔調の如く、又或る時は冷静調の如くに感ぜられる。さうしてその三つの長所を、各々十分づゝ、完全に具備してゐるやうに見える。斯くの如きは稀な名文でありまして、その天分の豊かなことを語つてゐるものでありませう。

* わたしが殊に喜び読んでまったく同感したのは、「ゲーテ」の天分に触れた箇所で、こんなに適切にわたし自身の感銘を代弁して貰っていることで。「若き ヴェルテルの悩み」「ヘルマンとドロテア」「親和力」「ファウスト」また「イタリア紀行」などなどの孰れをとっても谷崎の受けていた感銘は如実だとわたし 自身もハッキリ賛成できる。こうも明瞭にゲーテの文章の真価を端的に説いて貰ったことは、ない。
 繰り返し云うが、谷崎『文章讀本』は、これから文章を書いてみたい人にも、既に苦心している人にも、優れた道案内だとお薦めする。どこかの社の文庫本としてきっと手にはいるだろうから。

* 原発災害のもう間際から予見できたように、事故原因は明らかなのに、東電は被害農家らへの賠償に、冷淡を極めて応じようとしない。行政や國は、これを放置している。
 原発差し止め訴訟でも、電力側は証拠提出を無責任に遅らせ、一向にハカが行かない。すこしも実意の反省がない。國ないし監督官庁からの企業責任追及も無いのだろう。
 国民は、原発企業と國の悪政に足蹴にされている。
 福島第一の壊滅現場に、大雪による拝観凍結等の備えはあるのか。

* 名横綱の大鵬が亡くなった。あまりにあまりに強かった。年六場所優勝を二年間続けたというだけで、桁違いの強い、柔らかい、驕らないすばらしい人格だった。現時の名横綱白鵬が真実尊敬してやまないのも、嬉しい魂の相承だ。冥福を祈る。

* 奈良県郡山の歌人喜多さんから、ペン会員で作家の牧南さんから、京都の従妹から、御見舞戴いた。有難う存じます。

* 湖の本115の跋文を入稿。

* いま、十時。明らかに、眼の調子も昨夜までのようにひどくない。かなりの量の仕事ができた。霞んではいるのだが、眼鏡が合っていないのだからと云えば云える。久しぶりに、沢山のピアノ曲など聴きながら仕事できた。もう休もう。
 

* 正月二十一日 月 
           
* 血圧144-59(58) 血糖値88 体重63.5kg      唾液の粘りがほぼ失せ、洟水もほぼ治まっている。朝起きの涙は有るが、頻度は減っている。戸外に出たらどうかは分からない。 体重は漸減傾向 朝 洗眼  卵出汁で釜揚げ饂飩 葛湯 ブルーン 湯茶たっぷり 朝の服薬 午前の仕事 午 酢豚 白菜と薄揚げ煮びたし 飯一膳など 午の服薬 午後の仕事 晩 百 合根 粥に、あみ、塩昆布
など一膳 晩の服薬 小排便 晩の仕事 入浴読書五冊 今日は洟、唾にはいよう無く、ただ眼は疲れやすかった。

* 東京・生活者ネットワークで出している、生活と政治をつなぐ情報紙「生活者通信」に、東電原発事故調の委員をしていた東工大での元原子炉製造技術者で あった田中三彦氏が、「恐怖の原発老朽化の時代」と題した一文を寄稿されているのに目がとまった。絶対的に頭に入れていて今や当然の内容であり、此処に紹 介させて貰う。

 ☆ 恐怖の原発老朽化の時代  田中三彦
 あの大事故が起きる六日前、笹子トンネルを通った。あのときすでに、重いコンクリート製天井板を吊っていた多数のボルトが、あちこちで緩んだり抜けたり 折れたりしていて、いつ天井板がバラバラと落下してもおかしくない状態だったにちがいない。そうとは知らず、車の流れに乗って、吸い込まれるようにあのト ンネルに入った。うまく出られたのはたまたまでしかなかった。
 かけがえのない何人もの命の犠牲の上に、いまようやく「老朽化」が社会的に注目されるようになった。しかし、人の命を一瞬にして奪ってしまう危険な老朽 化は、トンネルや橋や道路にだけ起こるわけではない。当然、原発も老朽化する。それも、運転をすればするほど避けようもなく進行していくひじょうに危険な 老朽化が…。大量の核燃料を内に収めている原子炉容器は、厚さ20センチ前後の分厚い鋼(鉄)でできている。その頑丈そうな原子炉容器が、何かをきっかけ に、ある日突然一瞬にしてパリッと割れる可能性があると言ったら、大げさだろうか。けっしてそうではない。専門家が「原子炉の脆性破壊」と呼ぶこの恐怖の 破壊現象は、老朽化原発に選択的に起こる。もし、そんなことが起きたら、日本はその先何十年と立ち直れまい。
 原発の運転中、原子炉容器の中では、よく知られているように核分裂の連鎖反応が連続的に起きている。そして、じつはその間、原子炉容器はいわば中性子 の”攻撃“にさらされている。つまり、高いエネルギーをもった中性子が、間断なく原子炉容器にぶつかっている。そのため、はじめはしなやかで強靭だった鋼 が、じょじょに強靭さを失い、ついには硬くて脆いボロボロの鋼に変質する。これは原子炉容器の「中性子照射脆化」と呼ばれ、専門家がもっとも恐れる種類の 原発老朽化である。
 日本が商業用原発の本格的運転を開始したのが1970年、大阪万博の年だった。それから40年以上が経ち、いまや日本の多くの原発は明らかにこの危険な 老朽化のステージに入りはじめている。とくに、玄海1号、美浜1、2号、大飯2弓、高浜1号、敦賀1号は、原子炉容器の中性子照射脆化が、すでにかなり危 険なレベルまで進行していることが、データからわかっている。いまや、トンネルの天井板を支えるボルトが少しずつ抜けはじめたり緩みはじめたりしている状 態、と
言っても過言ではないだろう。当然、原発を再稼働すれば、事態はさらに悪化する。
 向こう10年は原発を維持して何がベストかを考える、などと、原発再稼働に積極的な安倍政権はいたって暢気だが、老朽化原発がそれまで待ってくれる保証はない。  (以上)
  ▲ 2012年8月30〜31日に開催された、国際シンポジウム「福島原発で何が起きたか 安全神話の崩壊」で、田中三彦さんは、国会事故調査委員会で得た知 見も加え、「福島原発事故における地震による機器損傷の真相に迫る」報告をした。東京大学駒場キャンパスで。  (略歴割愛)
          
* こういう証言が貴重、読んでいて、懼れでゾクゾクした。原発現地の人たちはむろん、日本人のだれもが、誰よりも安倍晋三総理以下の政治家達が、これをも読んで刮目してほしい。原発は、いまやあの原爆よりもはるかに怖い危険物なのだと認識してほしい。

* 原発被害の双葉町、その井戸川町長がふらふらすると訴えて入院したと。病状をフォロウして欲しい。
 新聞でも訴えているように、そして数十年も昔に作家志賀直哉がいしくも予見し憂慮していたように、「科学(の暴走)に、倫理が追いつけない」時代になっ ている。直哉は、飛行機が新鋭化しても、それは結局戦争のためか、あさはかな便利欲求の為に過ぎず、人間と自然との調和を崩すだけになるぞと警告していた のである。オスプレイにしても、夢を描いたボーイング機の無残なほどの事故連発にしても、そうだ。人間が「人間」本来を逸脱し過ぎきた。その結果の一つ に、いまや「原発事故」自体か「利権の巣」のようになり、予算も経費も八方から食いちぎられ、國が管理している除染事業でも「搾取横行」のまさしく無政府 状態にある。
 人間が「人間」に真剣に生まれ直さねば。

* 案の定安倍政権は「大逆戻り」の反動傾向を続々露呈し始めている。民主党時代の「仕分け」で厳しくチェックされた事業なども続々復活されようとしてい る。政治エネルギーの巨大なロスである。安倍政権がトクトクとうちあげている花火に惑わされず、自民党政治の時代を逆行させる企みを厳しく監視し阻止しな くてはならぬ。

* 「
日本未来の党」は「卒原発」を党是とするという。「卒」は辞書に頼むまでもなくもともとは下級の兵 士・人夫・足軽の意味で、わずかな「卒業」と用いられているに過ぎない。これを借りて「卒原発」というのだろうが、訴求力は弱い。「脱原発」「反原発」と 分かりよく大同すへきだろう。
 ついでに「率」の字をいうなら、「ソツがない」でわかるように一種のひきつれを謂う。また手ぬかり、手落ちを謂う。軽率と謂う意味を汲めば分かりよい。いずれにしても党是ともあろうことに「そつ」漢字は避けていいのでは。
 「未来」にも迫力がない。未来とは未だ来ない意味よりも、未来という時間も時代も決して「無く」、ただ恒に「今・此処」だけが在る。その意味を忘れて無い未来に夢を見ていては困る。よく考え直して欲しい。

* 規制委が、原発再稼働のコストを試算するなど「新安全基準の骨子案」をまとめた、が、コストは百億円単位と、高く付くようだ。「設置」が必要になる主 な施設・設備は、「テロ対策」「対策拠点」「炉心損傷対策」「電源喪失対策」「緊急冷却」などにわたり、これらに万全に備えるのはぜひ必要であり、しかし コストは高くて当然のこと。つまりは「再稼働ゼロ」をこそ目指すべきである。
 加えて原発周辺の防災計画がまるで進んでいない。住民避難の放射線量基準なども混乱そのもの。「脱原発」「廃原発」の方が断然政治的にも福祉的にも環境的にも良いにきまっている。

* 木村年孝さんの送って来て下さった史料類が、役に立ちそうで有難い。さ、どう活用できるか、軽率ではいけない。眼の不自由を堪えながら「仕事」は幾つも前へ前へ押し出されている。

* 秦建日子の連絡在り、つまり広告希望か。

 ☆ 劇団「秦組」次回公演のお知らせ!
 次回で、第五回。
 演目は『タクラマカン』。
 何度かワークショップの卒業公演ではやりましたが、本公演では久しぶりです。
 演出、いろいろと変えていくつもりです。
 次回も「らんTRIO」のメンバーが生演奏で参加してくれるのも楽しみです。(音楽部、ひとり増えて4人になるので、「らんQuartet」と呼ぶべきかも)
 秦組としては、初の地方公演もあります。
 関西在住の方、この機会にぜひ☆
 
劇団「秦組」 vol.5 『タクラマカン』
公演
 ・ 2013年5月31日(金)〜6月10日(月)
 東池袋 あうるすぽっと(豊島区立舞台芸術交流センター) 

 ・ 2013年6月11日(火)
 大阪 サンケイホールブリーゼ 

チケット
 前売5,800円 当日6,000円(全席指定)
 一般発売:2013年4月6日(土)

* 「タクラマカン」は、熱の入ったドラマ。何度も観てきたが。どんなふうに組み替えて演出するのかな。

 
* 正月二十二日 火 
           
* 血圧122-57(59) 血糖値80 体重63.9kg      唾液の粘り失せ、洟水も治まっている。が、眼は疲労気味、視野薄暗く不安。洗眼、点眼、朝 茶漬け一膳ほか 朝の服薬 午前の仕事 小排便 その後に軽い 下痢気味 江古田の歯科医へ。 晩 巻鮓二つ ドーナツ 干し柿など 晩の服薬 抗癌剤休薬のせいか、心もち元気。 晩の仕事。仕事は捗らせたが眼の負担も強烈。九時だが、階下で休む。 

 ☆ 秦 恒平 様
 寒中お見舞い申し上げます。
 過般よりご加療中と承っておりますが,その後,ご病状のほうはいかがでございますか。日ならずしてご平癒のこととは存じますが,ご家族の皆様にはさぞご心痛のこととお察しいたします。
 さて、このたび『湖の本114 ペンと政治(一)』をご恵贈賜り厚くお礼を申しあげます。
 本書を拝読し,「ペンを握った手」で病魔と闘いながら,喜寿の祝いをお迎えになられている作家の「義務と覚悟」に、あらためて敬意を表する次第であります。
 文字どおり悲憤慷慨して語っておられる「日録」の痛快さに,失礼を顧みず,おもわず膝を叩いていました。「群れたくない」作家の「思いと懼れ」に心から共感するばかりです。
 じつは,近年、友人、家族らに、「政治の貧困」や「メディアの権力」の醜悪さを話してみても、大概それは「ただのおまえの愚痴にすぎない」と一蹴されるのがオチで、怒りの矛先は鈍り、「つくづくウンザリ」させられていました。
 「思えば現代には,政治をあげつらうだけで『食えて』『食って』いる世間の人の,なんと多いことか。新聞,雑誌,テレビ然り。そこにたかるキャスター, コメンテーター,評論家,記者,みな然り。学者もいる。タレントいる。ー一 昨日言っていたことを今日は別の意見に言い換えていても,本人も周囲も平気, そんなことは気にかけていない。つまり,『役』をこなしている。」(p174)
 いまや携帯情報端末機でマインドコントロールされ、互いに考えたり、話し合ったりする時間を放棄しているわれわれは、いったい、どこへ向かっているのでしょうか。
 本書は随所に卓見、警句が散りばめられていますが,その言葉は,序文で書いておられますように、「今日只今の政治・時事が、一昔二昔まえにまるで変わりなく悪政の連打」であることへの痛烈なパンチとなっています。
 とくに,低劣極まりない品性の森首相,傲慢と姑息なパフォーマンスの小泉首相,政治家としての言語表現を顧みない居丈高な石原都知事への人物評はまったく同感であり,また,
特権的立場に立つ文化人らの「人間性」にたいする不快感,不信感をあらわにしておられたが,本質を衝いていて、いうことはありません。
 もっとも小気味よかったのは,そうした輩とはべつに,集中砲火浴びせられた外相田中真紀子への期待と擁護でした。真紀子イジメ問題は,昨秋の大学設置認可の件でも,いささかも変わっていません。
 本書にみる「ペンと政治」の見識と剛直な批評には、これからも耳を傾けたいと思う。
 寒気厳しき折から、くれぐれもご自愛専一にと念じております。 2013年 1月 20日   神戸大学名誉教授

 ☆ 先日の雪の時は
 二日間外出を取りやめて用心されましたね。再び東京に雪、と天気予報が出ています。こちらは夕方から静かな雨です。
 体重が62キロになったと昨日書かれていて気になっていました。今日、脱水症状ではないかと検討されていましたね。少しでも良い方向に向かわれますよう願っています。
 早く暖かくなればいい!!
 小説、息詰める思いで遠くから待ちます。読みたい。
 まだ暫らく冬の寒さ・・。元気に、元気でいてください。 


 清水修二・福島大数授の一文を東京新聞朝刊で読んだ。
 東京電力福島第1原発の事故前から、原発立地を促進する電源三法交付金制度を批判するなど原発の問題点を指摘。昨年開かれた脱原発の集い「原発いらない! 3・11福島県民大集会」の呼び掛け人代表でもあった人。一文の要所を引用させてもらう。
福島事故からまもなく二年がたつ。

 ☆ 「自分は正義」許されぬ
 昨年十月に双葉町を視察した。美しかった水田はセイタカアワダチソウが生い茂り、道路わきは雑草だらけ。倒壊した家屋は放置されたままだ。町はあの事故から時を刻むのをやめている。
 (一九八六年の)チェルノブイリ原発事故の周辺では二十六年たった今も食べ物の放射線量を測定しながらの生活を余儀なくされている。放射線量は一時より減ったが、それでも子どもたちは内部被ばくの危険性にさらされている。
 「いつかは戻れる」と考えている福島の人たちが、いずれ同じような生活を送らねばならないのかと思うとつらい。
 福島の苦悩は続いている。最近は、脱原発サイドからも冷たい視線を感じることがある。例えば、福島に残って子どもを育てる親
に対し「子どもがかわいそ一」「身勝手だ」などという外からの非難、もっと言えば攻撃だ。県民の九割以上は今もとどまっているが、それは仕事や経済的な理 由で仕方がないことだ。福島の子どもを一番心配しているのは、その親なのに。福島に戻ろうとする住民らの努力に対する冷めた見方もそう。
 これだけの犠牲を払いながら、日本は脱原発に向けた道筋が見えない。ものすごく乱暴な言い方だが、事故の影響が首都圏まで及んでいたら事態はかなり違っ ていたと思う。国民の多くが原発についてもうちょっとまじめに考えてくれたのではないか。今も十六万人が避難する大事故が起きたにもかかわらず、残念なが ら福島の問題としてだけで片付けられているのが現状だ。
 国民の側にも問題がある。私は福島事故の責任について東電が四割、政府三割、自治体二割、そして国民が−割だと思っている。一割の責任とは、無自覚に原発を受け入れてきた点だ。 

* 福島からの「声」として心して聴く。県民の16万人がいまも避難生活にうち沈んでいる。東電からも國からも日ごとに忘れられ置き去りにされていると見える。心底、寒い。

* 「発送電分離」へやっと「議論再開」と。しかし実施は「先送り」必至。こういう根本の問題に、及び腰ではまことに困る。
 「原発事故時の避難基準値」を「毎時0.5ミリシーベルト」にと原子力規制委チームが決定した。「高すぎる」という異見もあるようだが「低すぎる」よりはいい。

 ☆ 秦様へ
 この度は御著書「湖の本」114を御恵贈いただきまして、誠にありがとうございました。
 崩壊の跫音というサブタイトルに思わずドキリといたしました。心して拝読させていただきます。
 格別の寒さでございます、ご自愛のうえ、益々の御健筆をお祈り申し上げます。
 とり急ぎ 御礼まで  拝     日本文藝家協会事務局長

 ☆ 秦 先生 ご本ありがとうございました。
 お世話になっております。
 昨日、「湖の本」最新刊拝受いたしました。お心遣い、大変ありがたく存じます。
 収録された文章の大部分が21世紀になる前後のものとのことですが、お書きになっていらっしゃる問題、課題、怒り、悲しみ、いまだにまったく解決などせぬままいまに至っていることに、嗚呼と嘆息せずにはいられません。
 そのような歪みの当然の帰結のひとつが、今回の原発事故であったと言わざるをえないように思います。
 遅ればせながら、年末に喜寿を迎えられたとの由、まことにおめでとうございます。お会いしてお祝いを申し上げたいところ、まずはメールにて失礼いたします。
 近くお会いできる日を楽しみにしつつ、取り急ぎの御礼にて、失礼いたします。  洋 平凡社

 ☆ 湖の本「ペンと政治」を
 お送り下さいましてありがとうございました。私こと
 今年巳どしは私のとしで、いつのまにか八十四才になりました。
 老議院が実現しましたら、是非、立候補したいと思います。
 お身体 お大切になさり乍ら ますますの御活躍を。  千枝 千葉県市原市
                                      
* 雪解けに気をつけながら、やや視野朦朧のなか江古田の歯科へ。何十年通っていて、しっかり仕込まれた のは、どんな痛みも「耐えられるかぎりは耐える」ということ。殆ど「痛い」とわたしから云うことはない。治療最中に聞かれるとちいさく首を横に、まれに縦 にふるだけ。時にはひとり指を折って、「神武、綏靖、安寧、懿徳、孝昭、孝安、孝霊、孝元、開化、崇神、垂仁、景行から、光格、仁孝、孝明、明治、大正、 昭和、平成」までを漏れなく数えている。その間に治療処置がほどよく流れて行く。

* 保谷駅構内で少し買い物して帰宅。眼の不自由はくやしいが、抗癌剤休薬の効果か、ま、元気に往復した。                               
* 仕事は捗らせたが眼の負担も強烈。九時だが、階下で休む。



* 正月二十三日 水 
           
* 血圧117-52(62) 血糖値96 体重63.8kg    尋常な朝  唾 液の粘り失せ、洟水も治まっている。が、眼は疲労気味、視野ほの暗い。 体重は漸減傾向 :今朝は手の痺れも楽 粥一膳 ラスク一枚 ヤクルト 朝の服薬  朝の仕事 自転車で散髪に 午、スクランブル卵 蕎麦 午の服薬 体調はこの二三日マシな方、ただ食欲は乏しく、空腹の方が楽。努めて食べ、間食も手当 たり次第に少しずつ。 午後の仕事。 眼の不調は涙が目やにとなり眼を塞ぐためと思われる場合が多い。清拭に心がけている。 晩 赤飯 食進まず間食で僅 かずつ補っている。 晩の服薬。 入浴。  

* 原子力規制委は地震対策でも新基準骨子案を作成、原発ごとに「最大津波を想定」し、原発を含む「重要施設を活断層上に建設するのは、禁止」としている。大綱において先ずは一歩と。

* 安倍政権が、ほぼ自己都合で日銀を「人事」がらみに圧迫して在るべき「日銀の独立性」を侵しているのは、素人目にはなかなか難しい背景がありそうで、禍根化が危ぶまれてならない。

* 原子力の平和利用という美名のもとにアメリカは日本にも原発建設を半ば強要し、これに浮かれ乗った日本の原発屋が、かたや安全神話の捏造に、かたや安 易な手抜き原発をばたばたと造っていつしか「電力」利権をフル回転し、政治家も経済界も官庁官僚も学者はじめ各界評論・マスコミ人種をも籠絡、さながら家 人のように「金縛り」にしてきた。あらましは、こうであった。無関心に傍観すらせずやり過ごしてきた国民にも重い一分の責任がある。

 ☆ 先ずは本が来た事に驚き、
 お芝居にも行けたり出来るとは素晴らしい回復ですね。前向きの気力ですね。
 約七年前に脳内大出血をした夫は、幸いな事に手足や言語の障害はなかったけれど やはり正常ではなく、足腰も弱り、私は家事100%にプラス介護の過労です。先の連休の頃から風邪をひき、目やお腹に来て参りました。今は週二回デイサービスを受け、少しは身体がラクにになりましたが…  時々好転は無い先を考えると 鬱になります。      
 お元気でお過ごし下さい。   


* 一つ下の、同窓。やたら老齢に上乗せがきて長寿でめでたいようだが、このような老老介護に疲労と心労とを溜めて行く寂しい高齢家庭が増えて行くばか り。六十から七十代老人の力をの政治的にな結集すべく、「老議院」という世界にも例のないシステムを構想し実現してしかるべき時代が来ている。誰か見識豊 かで健康な人が「核」となり結集し叡智と実力を動態化出来ぬものか。
 みなさん、考えて下さい。

 ☆ 「ペンと政治」(一)
 一気に、共感と敬意と共に拝読。
 まっとうで深い怒りは、人を病いに破れることを許さない。秦さんご夫妻のご長寿を祈るばかりてだす。
 (二)、早く読ませてください。  原田奈翁雄

  ☆ 秦 恒平様
 湖の本拝受。「ペンと政治」という特集にとっても びっくりしましたが、反原発の八策にもびっくり。こんなに政治的発言をなさるとは思いませんでした。  上野千鶴子
 
 ☆ 新年ますますご健筆のご様子
 お慶び申し上げます。このたびはご高著『湖の本』ご恵贈いただきありがとうございました。私 八十才 とみに体力、能力の衰えを痛感する毎日ですが 秦さんがこうして頑張っていらっしゃることに励まされています。
 お体おいといの上 ご活躍を。  樋口恵子

 ☆ どうぞ来む春が
 先生のご恢復をもたらしてくれる力となりますようにと、心から念じ上げております。
    あらたまの君が命をあたたかく包みて起たむ春霞かも  昌  名誉教授

 * 春霞まちがてにけふも生きてあるわれの狭庭(さには)に梅咲きそめぬ  湖

 ☆ うみの本114
 今一番読みたかった本かもしれません。志賀直哉の云う「とび離れて賢い動物であるということが、一番馬鹿な動物だったということになるのではないか」  その通りになりつつあります。原発のこと、こんどの選挙のこと、そして世界の国々でおきていること、コロコロと転がり落ちる音がきこえるようです。
 その中でも、ご壮健でおすごし下さい。  小松市  勉・千 

* 中村勘三郎にも 大島渚にも 死なれてしまった。なにくそと思う、生きて「ペン」を働かせるぞと思う。


* 正月二十四日 木 
           
* 血圧126-53(70) 血糖値76 体重63.9kg  早起きし、お鏡を割った餅を四つ食べて、今年初の聖路加病院へ。 先ず腫瘍内科で今年もよろしくと。血液検査にもさしたる問題なく、副作用にも対応してい て、このまま明日から二週間の抗癌剤服薬に、と。「五月」までの服薬で、あとは間隔を置いて内視鏡やスキャン撮影などの検査を、と。五月一日から飲み始め たので、四月末までか。ドクターとしばし歓談、次回二月十四日。
 ついで午後、眼科診察。相当待つかと思ったが順調に検査と診察終え、視力がよく戻ってきていると。最悪の時は0.1ぐらいだったのが、1.0まで戻っていると。そういう実感はないけれど。涙目は、ドライよりいいでしょうと。三ヶ月後に診察。
 院外薬局が混んで一時間はかかるというので、蕎麦の「更科の里」で、遅い昼食だが、せいろ蕎麦と、菊正。それにしめ鯖と板わさで、ゆっくり。冷や酒が枡 で飲める店。インシュリン注射と食後の服薬。 軍鶏や鴨の鍋もできるらしく、次来るときは軍鶏がいいなと、せいぜい食欲をかき起こす。近くの甘い物の老舗 で「葛切り」を買って薬局へ戻った。もう体力の限界だったので、いつもなら歩く距離をタクシーで新富町駅まで。あとは順調に乗り継いで、寝入りもして。駅 からも車で帰宅。 晩は、蒸し烏賊 苺ぐらいで。服薬。 晩の仕事。

* 民主党の菅直人氏の事務所から、本を受けとったと、挨拶。共産党書記局長の市田忠義氏からは著書二册が署名入りで贈られてきた。  


* あの自身と津波と爆発当時の東電会議映像 三回目の公開があり、当時被曝防止を優先したのは作業員の命にかかわ る急変であったこと、理解できる。、しかし海洋汚染を、厳格に、その後排しているかは、全く信用できない。「高汚染水」の海への垂れ流しは、いわゆる「水 に流した」という俗諺になじむ問題でない。或る意味、海洋汚染は地球の恵みを穢すことになる。
 それにつけても、病気がいわれている当時の原発所長吉田氏の容態が、その後まったく聞こえてこないが、心配だ。あの事変の渦中にも身をさらし癌を発症し ていた南相馬の高橋享平医師が亡くなっている。無関係とはとても思われない。こういう事例が民間にも及んで現れ出てくるかもと、心配だ。

* 福島県双葉町長の井戸川克隆氏が國や東電の核汚染物の貯蔵施設対応に不信の極とみられる、町長辞職届けを出したと報じられている。けっして小さい事件とは思われない。
 大飯原発の活断層問題にも、調査や観察がすすんでいるようだ。規制委は、何にしても新安全基準を満たさない限り再稼働はないと委員長が明言しているのは、いい。 

* 仕事を前へ押し出し押し出ししていても、やはり眼の不調で休まざるを得ない。やすみます。      



* 正月二十五日 金 
           
* 血圧107-51(66) 血糖値82 体重64.0kg     朝 体調良し 餅を味醂醤油で ヤクルト 林檎 今朝から抗癌剤二週間 朝の服薬 大快便 午前の仕事 午 スクランブル卵 蕎麦 林檎 午の服薬 午後 の仕事 再度排便 晩 梭子魚 など 晩の服薬 晩の仕事 九時半、眼の限界。 

* 柏崎刈羽原発の直下に活断層が認められると。またまた。規制委は厳格に対処ありたい。

* アルジェリア・テロリストによる日揮社員等の殺害事件は、悲しくも悔しい限り。遺体らのはるばるの帰還を報じ、また日揮社長等の弔辞を聴き遺族等の哀 しみの言葉を聴くにつれ、声も漏らしそうに泣けてならない。この事件は、たんにこれだけでは終えまいと思う。これは欧米国と親密な関連國にまでテロの手が 伸びているに等しく想われる。日揮の場合、日揮の営利事業という以上にアルジェリアへの協力・協賛の事業でありアルジェリア國に恨まれる筋合いはなく、テ ロリスト制圧に踏み込んだのも國の軍であったようだ。と云うことは、反政府テロリストが各国にもはや配備されているおそれは十分あり、日本の進出企業だけ でなく、外交的な施設までも今後襲われない段ではない。今回も、現地人社員の中にテロ組織と気脈を通じた者の内通は否定しがたく想われる。こういう危機管 理対策が官民共に必要不可欠となる。

* 九時半。一日、仕事に没頭した。もう休まねば眼がもたない。



* 正月二十六日 土 
           
* 血圧125-58(57) 血糖値71 体重64.1kg     朝 餅を味醂醤油で ヤクルト  干し柿 朝の服薬 午前の仕事 午 挽肉団子と白菜、薄揚げの煮物 握り飯など 午の服薬 午後の仕事 排便 晩 蜆汁二杯 握り飯 ヨーグルトなど 晩 の服薬 晩の仕事 入浴読書五冊 眼は、ヒアレイン点眼と温水での洗眼と専用綿での清拭で凌いでいる。  

* 地域防災計画の各所への提示が、ただ機械的に受け止められると、土地土地の実情から逸れてしまう危険もある。モデルというのは、時に想わぬ安易な間違いを引っ張り出すことがある。規制委はそこへ気づいたようだ、良いことだ。
 それよりも問題なのは、規制委の新安全基準を議論すべく自民政権が衆議院に「原子力問題特別委員会」を新設し、委員長人事も決めている。委員定数四十人 のうち二十四人を占める自民党は、「原発維持・推進」姿勢をすでに鮮明にしている。由々しい事態であり、対応の国民運動がぜひ必要。反自民・反原発の意志 を結集して参議院選挙までに、ぜひぜひ盛り上がりたい。

* 猪瀬都知事が、東電の売電解約に対する解約金五十二億円余の支払い要求を蹴っている。「ボッタクリバー」のようだと。この調子で行ってください。

* 経産大臣茂木敏充が、「発送電分離時期を明記」するのは今後の電力対策大綱において「可能なこと」と明言しているのを、忘れないようにしよう。記載は しても棚上げで実行しないのでは何の意味もない。すでに電事連会長は「発送電分離」先送りを要求している。こんな外圧の前に「明言」が溶解してしまう懼れ は濃い。国民運動は、こういう点にも目配り気配りを欠かぬように。

* 原子力機構は、たださえ久しい金食い虫で役に立たないままの「もんじゅ」点検体制に、現に不備のあることを、はっきり認めた。もう、「もんじゅ」は立ち枯れのまま廃棄処分にすべき時機ではないのか。

* 十年どころでない以前、日本ペンクラブに世界に先駆けて「電子メディア委員会」を提案成立させ最初の委員長になったとき、わたしの確信は、今後政治的 にもわれわれの基本的人権の上でもの大問題は、サイバーテロの懼れと、サイバーポリス強権の懼れがはびこってくると。すでにそれが現実になってきている。 新警察庁長官米田氏就任の「最重点」姿勢は「サイバー犯罪」だと表明されている。この手の犯罪のややこしさは言語に絶して、明快な対策も対応も容易でな い。
 文字や画像の表現環境にもすでに多大な問題や事件が起きていて、難儀を極めている。サイバーはまさにグローバルな難儀の種でもあるのだ。

* 久しく社会党・民社党本部だった三宅坂の建物から、党本部が、近くのビルの間借り暮らしに移るという。気の毒だが。政党として、自業自得というしかな い。勤労者への誠意を見失って、たとえ正当であれ護憲一辺倒に近い「観念」を事としていては党の衰退は必至であった。いつになれば気づいて体勢を替えるか と見続けてきたが、だめ。福島瑞穂の人のよさは信頼しているが、政見や行動には問題なしとしない。男性党員にスターがでてこない。ほとんど解党しているに ちかいではないか。
 社民党というワケの分かりにくい党名を「社会党」に戻し、出直すべし。

 ☆ 前略
 先日は『湖の本』114 ペンと政治』をお恵贈下さってありがとうございます。早速読みはじめております。
 実は私は、いまから15年前まで京都の共産党の責任者をしておりました。「京都民報」の編集長を林信一郎がつとめていた時です。
 秦さんの壽岳さんとの「京ことば」や、脇田晴子さんとの対談「利休とその時代」、京料理「竹馬」の西岡さんとの「京の味、京のまち」などの対談は、「京都民報」はおもしろい、中味が濃い、との評判がひろがる大きなきっかけとなりました。
 平凡社から出版された『京のわる口』も、タイトル、中味とも刺激的でした。
 今後ともよろしくお願いいたします。   市田忠義   (共産党書記局長)

 ☆ 京都の人ではないかと永く想っていた。共産党員らしからぬ笑顔の温厚に柔らかいお人を、好ましく思っていた。こんなご縁があり、関心も持ってもらっていたとは全く知らなかった。感謝します。
 前総理の菅直人氏の湖の本受け取りも届いているし、元参議院議長の江田五月さんや社民党の福島瑞穂党首など、書き物を介してご縁が生まれている。また市 田さんとも、と思う。元衆議院議長の土井たか子さんは大学の先輩、東芝副社長だった人と、鼎談したことがある。今度の本、ことに続いて出る「ペンと政治」 (二上 原発爆発 二下 野田内閣惨敗)は時代の証言と批評として、多くの眼に触れたいと願っている。この人にも読んで欲しいと思われる方は、送り先をお 教え下さい。

 ☆ 湖の本「ペンと政治(一)」を賜り
 ありがとうございます。
 「私語の刻」をいつも最初に開き、気になる奏さんのお声? を聞きます。つらい闘病ですが、強い意志というか作家精神が秦さんを支えている様子を知り、ほっとします。どうぞお体を大切にご活動ください。
 なお次回から「湖の本Jの購読者としていただきたく。これまでご贈呈頂いたことに感謝します。なお私からの友人等への贈り物は、今までどおり折にふれお願いするつもりです。
 この二十一世紀に地球がどうかなりそうです。
 まさに「崩壊の跫音」を聞くような気分です。
 ご一緒にもう少し見届けましょう。 二〇一三年一月二十五日    詩人 ペンクラブ会員

* 嬉しく、心強く。ありがとう存じます。

 ☆ お正月
 如何 お過ごしでしたでしょうか。
 中々、元の通りとはいかないのかもしれませんが…。私も、相変らず五ー六種の病院をめぐる事が続いて、それだけで忙しいし、曜日、時間をまちがえないように、と神経をつかいます。
 今の日本は、本当に心配な事が多いですが、私たち(友人達と、電話で侃々諤々の昨年でした)が、今、何を出来るかなと笑い合っています。自分の身一つで、大変なのですから。
 どうぞ、本年が佳い御年でありますよう、お祈り申上げます。 かしこ      評論家 元「新潮」編集者

 ☆ お寒さきびしい折から、
 過日はご高著『湖の本 ペンと政治』を賜りましてありがとうございました。
 十数年の世の目まぐるしい変わりよう、本質的には変わっていないこと。歯に衣着せぬお言葉に胸のすく思いが致しました。ますますのご執筆に力をいただいて居ります。
 くれぐれも御自愛下さいますようにと念じております。御禮まで申し上げます。 かしこ     歌人 堺市

* 味覚異常もいかんともし難い。視力は戻っているという病院眼科医の曰くも実感の域に届いていない。

* 当面の仕事を、とにかく一段落させなくては。一月一杯で、なんとか一仕事分は落ち着くかと期待。その後はその後。
 湯の中で、今夜は、二册しか読めなかった。目が利かなかった、ともすると寝入った。読んだのは「八犬伝」とプーシキンの「猟人日記」で。

* 素麺は細すぎて歯にひっかかる。太い饂飩はさほど好きでなかったのに、今は太めの、しこしこした饂飩を歓迎している。噛んで咀嚼して味わいが伝わって くる。苦みもすくない。ごちゃごちゃと煮混ぜた、どろっとした色の食べ物を、はねつけてしまう。昨日も「更科」で、あっさりした蕎麦と「板わさ」がよかっ た。但し山葵は使わない、ストレートに苦いので。「しめ鯖」も山葵なしで食べた。
 饂飩に助けられている。饂飩にはいろんな名があって、「麦麺」という例も。考えるまでもない、なるほど。
 一年前か二年前か、ちょうど今頃、銀座松屋裏の「鉢巻き岡田」で妻と食べた「鮟鱇鍋」が美味かったのを忘れられない。いまは、第一あれだけの量が食べられまい。ときどき、ぼーっと夢見ている。
 きのう家でウイスキーを口にしたら、あの燃えるような口辛さが失せていて美味いのにびっくり。ついダブルで二三杯も飲んだかも。ま、酒類は控えめにしているのだが。
 帝国ホテルのクラブがまた年度替わりする。ペンの例会や理事会が東京会館であると、すばやく抜けて独りでクラブへ移動して、本を読んだり校正したりしな がら、食べて飲んでいた。飲むのは、ここではチャージしてあるウイスキーかブランデーと決めていた。今も、同じだが、とても量は飲めない。食べ物もいろい ろあるが、鮓や和食には賞味できる自信がない。先日歌舞伎の帰りには、角切りの、わたしは「さいころステーキ」と呼んでいるステーキが久々に美味かった。 それより前にきたときの、あれは何と謂ったっけ「でんでん虫」は、以前ほど美味に感じなかった。
 このクラブへ夫婦で来ている客を、十年余にもなるが、一度も見かけない。クラブの人たちともすっかり馴染んでいるが、此処でもわれわれは型やぶりなのか も知れない。もうめったに行けないのだから退会しようかと聞いたが、妻は、それぐらいの贅沢はいいでしょうと。会費、支払います。

* 思うままずらずらと、しゃべるように書かせてもらえると、七十余年のもろもろが、わき出すように書けるだろうなあと思うけれど、そん遊びに耽るヒマはもう無い。 


* 正月二十七日 日 
           
* 血圧130-58(47) 血糖値83 体重63.8kg     朝 握り飯二つ 葛湯 栗 ヤクルト 朝の服薬 午前の仕事 午 餅を六片味醂醤油で  干し柿 午の服薬 午後の仕事 晩 牛肉 握り飯 ブルーチーズとワイン 晩の服薬 晩の仕事 眼は相変わらず。 持続しては三時間もたない。洗眼と清拭とで凌ぐ。食の不足は間食で補っている。

* 福島第一原発では、原発港湾無いの魚類を駆除して外洋への汚染拡散を防止しようと。この三月には実施と。なぜもっと早くにそれをしないかと、対策の鈍重に惘れる。

* 北海道の泊原発にも活断層が認められている。
 九州の玄海一号機が「廃炉費用36億円不足」を試算している。再稼働へのさぐりを入れているのではなかろうな。
 とにかくも「廃炉」は容易ならぬ国家の大業となろう。國は、国会は、内閣は、「強引な政治」をしてくれるな。アベノミクスにしても、デフレ脱却にして も、たやすくは成らないであろうとわたしは観ている。
  給与が上がらず、支給等が強引に引き下げられるなら、国民はなるべく金は使わないという選択を励行す るだろう。「弱い者いじめ」の「反動逆戻り自民党政治」へと安倍政権は仮借無い危険な舵を取ろうとしている。



* 正月二十八日 月 
           
* 血圧113-57(54) 血糖値84 体重63.7kg   洗眼 朝、餅白粥にあみ ヨーグルト ヤクルト クッキー 朝の服薬 午前の仕事 快排便 午 スクランブル卵 蕎麦 林檎 柿 ヤクルト 午の服薬 午 後の仕事 視力が回復していると聖路加で云われた。それなら視力最悪または同様の激しかった頃に造った今の眼鏡よりも、かつての眼鏡が合ってはいないかと 試みているが、さほども感じにくい。 
* 國が、経済振興と引き換えに、地方に迷惑施設を(甘い見せ金つきで)押しつけることについては、「そういう國の政策は、もう時代に合わない」との疑問 を、反核の本島等元長崎市長は、早くから呈していた。しかもこの市長は一時、核の最終処分場を出身地の「五島列島振興」のため誘致に協力していたが、島民 の反対で実現しなかった。氏は、今、かつての誘致協力を切実に悔いている。

* 「核燃料廃棄物」処分に関連して東京新聞の解説を引いておく。「青森県六ヶ所村の使用済み核燃料再処理工場で高レベル放射性物質をガラスで固め、地下 300メートル以深に最終処分する方針。國は2002年、100億円近い交付金を見返りに処分場候補地を全国の自治体から募集。高知県東洋町が07年に調 査に応募したが撤回した。」と。
 そんな募集に、全国のただ一箇所も応じようとしていないのが今日の現実。自民党政権は、交付金の上乗せを以て執拗に候補地を探索するかも知れず、用心し たい。300メートル掘るとは嗤わせる。地震の震源ははるかに深くから衝き上げてくる。ひとたまりもなく危険なものが地表へ突っ返されてきて、政治も科学 も泣きべそを掻いて棒立ちとなるだろう。

* わたしは「ペンと政治」と云いながら、関心は「原発」政治に引き絞っている。ほかに難儀な政治の妄走「弱者差別」など多々あるのは承知しているが、現状、ペンに乗せるには手に余ること、必定。それは、分かって戴きたい。
 
* 幸いにも、福島第一周辺で「1歳児被曝30ミリシーペルト以下」と報告されたこと。甲状腺で「沃素剤基準」も下まわっていると。
 しかしこれは将来を保証などしていない。原発の在るところ放射能はいまも、いつまでも降り続け、幼い者ほど被曝の永続が憂慮される。警戒こそ一義、安易 な安心を触れ回るのは危険である。それよりも「甲状腺検査機器」を福島の良心的な医療施設、例えば開院したばかりの「ふくしま共同診療所」などに、民意を 集めてでも備えたいもの。わたしは福島大学病院の従来姿勢になにとなく信を置けないでいる。

* 安倍内閣の改憲強行には用心だけでなく対策が必要。こんな時こそ社民・共産両党か智恵を発揮して欲しい。
 それも大事、また、次年度国家算案に「原発事故子供・被災者支援法」関連予算が、ただの1円も盛られていないとは、どういうことか。「被害者見殺し」が 当たり前のように定着してきている。「原発事故被災者の政策要求」に応えて、「福島復興に命を賭ける」などと軽い発言からさっさと別部門の大臣におさまり かえった民主党細野豪志らに命がけでやれ、それしか党再生の道はないぞと突きつけたい。

* いまわたしには手も口も出す余裕も蓄えもないが、「アベノミクス」は所詮壁に激突して潰えるだろう、それが「経済」という者の魔力だと、世界史にも日 本史にも学んできた。とにかく、安倍晋三総理に野田佳彦前総理同様、いや強かに上回るであろう独善と危険の政策を不作法に振り回させてはならない。核も武 力もけっして命は守らない、守り通せない。これだけは覚えていたい。 

 ☆ 御闘病に連帯の意を表します。私の家族も闘病中でございます。
 病と共に生き抜いて参りましょう。  東村山市   大学教員

 ☆ 今年の厳しい寒さ、東京の積雪にも驚きました。先生お具合如何でございますか。お見舞い申し上げます。先日は湖の本有難うございました。
 先生のお言葉一つ一つに日頃のなまけ心にぴしりと鞭を打たれた気持ちで背筋が伸びる思いが致しております。
 庭の梅の莟が少しふくらんで参りました。
 先生どうぞお体御大切にとお祈り申し上げます。一筆 御礼申し上げます。  山口市  ツヤ  読者

 ☆ 厳しい寒さが続いております。
 湖の本 ありがとうございました。すべて読み終えたのではありませんが 今までに戴いた本たちの内容とはうって変って、改めて、引き込まれています。 たとえば「真起子さん」の記事、「ハンセン氏病」の記事などですが。
 先生は 七七は始終苦なりと歌われましたが、私は単純に八八64の身で、 この夏には前期高齢者の仲間入りです。 眼鏡のお世話になり 降圧剤の服用も始まり、若かった頃には思いもよらないくらしです。
 一方、週末に交わす孫たちとの会話は、また、若い頃にはわからなかった 老いた者の大きな楽しみの一つでもあります。
 闘病中とは伺っておりますが、おだやかな日々でありますようお祈り申し上げます。
 ご本のお礼を重ねて申し上げます。ありがとうございました。  大阪市    読者

* 正月の飾りに掛けていた鵬雲斎の「壽」字軸を仕舞い、かわりに都路華香の筆になる洒脱な大軸を掛けてみた。大きな太い線描きの雪だるまが面白く、「百尺の竿振って松の雪払ふ」とある句の字も面白い。
 鵬雲斎の軸に添えた父君淡々斎がまだ「宗淑」若宗匠時代の細身の蒔絵薄器「末広」を仕舞い、代わりに時代物、片輪車を螺鈿も用いて蒔絵した大ぶりの平棗を裾に置いてみた。いい感じに他の置物ともよく映って、おさまっている。わたしの気も落ち着いている。

* 入浴後、思いがけず小池栄子が捜査一課の管理官をつとめる刑事物の二時間ドラマを観た。颯爽として重みもあり、なかなかの「おやじ殺し」管理官ぶりで 楽しんだ。この女優、建日子の「サマーレスキュー 天空の診療所」で、よく抑えた芝居で脇役を魅力的に演じていて感心していた。今夜のはまるで別人の役柄 であったが、お見事に演じていてなかなかの才能。オーラが立っていた。もとから巧い女優と云うより、巧くなって行く女優がいるのだ。男優も同じだ。沢口靖 子もしかり、阿部寛もしかり。どこかに素直なところを柔らかく持ち合わせているのだ。生意気にコチコチ、自分をやわらかに開けないでは、女優とも男優とも いえず、生涯認められることがない。演技は、百万言では買えない。優しい素直さが、それを掴み取る。作家も画家も、ものを創り生み出して行く者は、みな同 じだ。
 小池栄子に今後も注目したい。


* 正月二十九日 火 
           
* 血圧130-76(61) 血糖値85 体重63.7kg   洗眼 朝、フレンチトースト 珈琲 クッキー 朝の服薬 午前の仕事 午、餅白粥二膳 午の服薬 午後の仕事   排便 晩 牛肉と葱 卵 白飯 晩の服薬 晩の仕事 眼、終日酷使し不調 唾液粘る 手の指先皹割れて痛む 色素沈着手足に拡大 疲労して寝入る。 

* 三仕事ほどが競り合うように煮詰まってきて、相当疲れる。疲れても遂げねば済まぬ事は投げ出さない。日々の日録にも、ぜひ記録しておきたいことは、次 から次へ現れる。二年近くひたすら「原発」問題に集中してきたが、自民政権の悪逆走にもこれから多岐に亘り批判を怠れない。わーっと、みんな投げ出して も、わたし一人の分には構わないのだが、やはりそうは行かない。

* いつの間にか「原発ピラミッド」という、「声なき弱者たち」を最下層に呻かせながらの「ピンハネ搾取構造」が出来ている。原発一基の「廃炉完了」まで に30-40年が必要、その間の作業現場に容赦なく「ピンハネ搾取」のピラミッドが横暴を尽くすかと思うと、絶望的な厭悪感に参ってしまいそう。なんと人 間悪は、果てしないのか。よく気がつけば、自分もその悪の連鎖の一鎖なのかも。ああイヤだ。云うまでもなくむ「原発」現場での作業は生命がけでもある過酷 なもの。それなのに未成年作業員も働いている。待遇改善のためにも、けしからんピラミッドを崩さねばならない。

* やはり敦賀原発直下に活断層を認めると「大筋了承」され、規制委チームは「報告書案」に「クロ」と明示。なしくずしに覆されないように監視しなけれ ば。委員会は「クロ」に自信、となると再稼働当然不可でなければならぬ。東通原発、志賀原発も、はやくから危険と云われている。「廃炉」へ追い入れたい。
 ことのついでではなく、本来、原子力規制委員会の人事は、信頼性確保のためにも「国会同意」が筋、それを野田前総理等が押し切った。問題は、この人事に 当時から民主党と自民党とになれ合い暗黙の了解がなかったか、だ。規制委の在りようが今後の「反原発」「廃原発」の行方を左右する。じっと睨んでいなくて は。

* 福島第一原発の2号機、1号機共に、建屋の要所に「諸調査・検査」を妨害するような剣呑な配管等の工作がされているのが発見されたという。臭い物に、蓋させてはならない。

 ☆ 例年以上に寒さ厳しい年明けですか、
 その後お身体如何でしょうか。二数キロお痩せになった由、通院、観劇つづけられる気力に圧倒されます。御恢復を心よりお祈り申上げます。
 御礼があとになりましたが『湖の本114』を頂戴し、誠に有難うございました。一九八八年からの記録なのに、現況と余り変らぬ事態に心晴れません。「私語の刻」一層身に沁みます。  元出版部長

* 甚だ過剰に「仕事」に、朝昼晩、連続して時間をかけ、見にくい眼を酷使した。ハンチャラケだが、もう休むしかない。


* 正月三十日 水

* 血圧124-53(64) 血糖値88 体重64.0kg   洗眼 朝、フレンチトースト スープ 珈琲 干し柿 クッキー 朝の服薬 午前の仕事 午、小さい中華饅頭一つ ヤクルトなど。午の服薬 午後の仕事。 晩、中華風あんかけ コーラ 少量の酒。 排便 晩の服薬 入浴。 排便。
 
  今日は五体の朦朧度がひときわ高い。一つには視野の動揺によるだろうが、抗癌剤効果の蓄積がすでに九ヶ月、ずしんと体に影響してきている気が する。指先など、ことに親指が荒れて皹割れ、痛いだけでなく物がまともに掴めない持ちにくい。色素沈着の範囲もじわじわと広がっている。運動できていない のも気になる。自転車は危なく、また寒さも堪える。風邪を引くのは危険に近づく一歩と云われている。とはいえ、苦・痛ということ、ことに痛みは無い。「受 け入れて慣れる」こと、不可能でない。  
 
                                       
* 湖の本115、表紙、全紙揃えて再校出を求める。

 ☆ 一月もおわろうとしています。京都は毎日寒く冷めたい日が続いています。「湖の本」を御恵送頂きありがとう存じます。御病体であられながら少しも御 気持の変っていないところ感心いたします。実は夫は昨年血栓の病気で入院 二月に家に戻りましたが、なかなか元気が戻らずにおります。少し御元気なお気持 をわけて頂きたいものです。
 どうぞ呉々も御大切にお励み 下さいますよう念じます。  京都今熊野  明  陶藝家

 ☆ 年明けに  池田良則  (新美術新聞 1/21 筆者より頂戴)
 元 日に富山の友人から紙筒が届きカレンダーかと思って開けると以前雑談の中で頼んでいた地図でした。これは正式には富山県が作った「環日本海東アジア諸国図 jというもので富山を中心に天地が逆になっていて、大陸側から見た日本列島が上向きに反り返っているという構図です。これは考えさせられます。つまりロシ ア、中国、朝鮮半島から見れば北方領土、日本列島及び台湾に至る琉球弧が防波堤の様に取り囲み太平洋へ出るのを邪魔している様に見えるのです。
 私は何処の国の肩も持つ訳ではないのですが相手の立場から物を見るとこんなにも違って見えるのかという事が実感出来ます。私は20代から絵を描くという 事を口実にバックパッカーの様にインド中を歩きまわり、中近東をウロウロし、その後メキシコから中南米を彷徨しておりましたがその先々で色々な人と出逢 い、見聞きし、そこでしか聞けない話を聴く機会を得ました。
 いかにそれらの国々が列強の軍事力と巨大資本の好きな様に収奪されてきたか、今だにその弱肉強食の不条理がまかり通ってているか肌で感じます。更に飢餓や貧困の原因が多分に人為的である様に思えます。
 世界中が大きな問題を抱えたまま2013年は明けました。日本でも震災や原発、沖縄の問題を抱えたまま、それももう済んでしまった事の様な空気の中で牢が明けました。不景気といい乍らも脳天気な正月を映しているテレビのスイッチは切る事にしました。
(1951年京都生まれ、洋画家、日展評議員、白日会常任委員)


* 池田さんの真意にふれ得て、嬉しい。彼には京都新聞朝刊小説『親指のマリア』の挿絵を描いてもらった。祖父上は池田遙邨画伯、父上も知られた画伯である。                                

* 原発事故時、原発五キロ圏より外で毎時0.5ミリシーベルトの放射線量を計測すれば、数時間以内に住民の避難をと規制委が指針改定案を出している。同じく0.02ミリシーベルトの地域では地元清算の野菜や牛乳等の摂取を制限し、一週間以内には避難するようにと。
 五キロ圏内は、原発で五分以上の電源喪失が起きたり、原子炉を停止できない場合に、即時避難態勢が喫緊に必要と。
 沃素剤は住民に事故前に配布しておくこと、圏外では自治体がかならず備蓄しておき必要に応じて住民に配布しておくようにと。
 毎時0.5ミリシーベルトは国際原子力機関の値より二倍厳しく設定されている。「高すぎる、厳しすぎる」と反対する動きもあるそうだが、「低すぎて、甘い、緩い」より、よほどいい。
 それよりも問題は、一つには「事故時の放射線量測定の具体的な方法や、國と自治体との役割分担など」がまだ検討中という点だけでない。この基準値に徴し て云うなら、あの爆発が起きた時点で被曝していた東電職員。作業員、近隣住民、五キロ圏内、圏外至近住民などは、すでに相当な被曝状態であったろう、そう いう人たちのフォロウが出来ているのか、不幸な未来が待ちかまえていては溜まらないが。あやふやに感じられて気が揉める。

* 今し方 国会での代表質問に答えて安倍総理は、「原発を30年限度でゼロにする等の民主党政権による原発政策をこそゼロに戻して、新たなエネルギー政 策を打ち出す」という趣旨を明言した。原発温存・擁護・推進は自民党の時代逆行政治により確定したと観て、ここからまた新たに不退転の意志と対策とで闘い を継続して行かねばならない。自民の暴政に屈してはならない。

* 明日は、アウルスポットで劇団昴らの混成舞台を観に出かける。
  明後日はもう二月、早速歯科治療。歯は、肉も落ち、何カ所かグラついている。

* もう眼が見えない。湯に漬かってきたい。   

* 入浴後、エストニア國、力士把瑠都の故国の相撲道をみせてもらい、行き届いた指導と少年少女達への感化の豊かさ確かさに感動した。
 それにくらべ日本の運動指導者に食い込んでいる「体罰という暴力」を勝つための情熱などと思っている堕落ぶりに、惘れている。
大阪橋本市長の突っ込んだ批判発言にわたしは賛同する。元巨人軍の桑田氏の「批判と意見」を聴いたが、すばらしい卓見だった。敬意を覚えた。なでしこジャ パン監督等に「体罰という暴力」など微塵も感じられず、成果を挙げている。     



* 正月三十一日 木

* 血圧124-60(62) 血糖値86 体重63.7kg   洗眼 朝、玄米餅 苺 朝の服薬 排便 朝の仕事 午 蕎麦 卵 東池袋アウルスポットで劇団昴公演「イノセント・ピープル」観る。 帰路、西武デパート 地下「寿司政」で夕食、八海山で、美味いとは感じなくても鮓かなり食べた。抗癌剤、服薬。帰宅まで、がっくり疲れた。 追加の服薬。 晩の仕事

* 劇団昴の「イノセント・ピープル」は再演で、それなりに仕上げが丁寧で、感銘を誘い、上々の舞台になった。原爆を創った技師連中の同窓会を年次を追っ て重ねながら、徹してアメリカ人の側から「原爆成功」に有頂天になり、「ジャップ」はじめ他国民俗への侮蔑感が優越感を盛り上げるという作りのなかから、 それに徹する者たちと、ヒロシマ・ナガサキに悔い苦しむ者たちが生まれつつ、高齢化して多くが死んで行く。主役技師の息子は海兵隊に入ってベトナムで廃兵 となり、娘は日本にわたりヒロシマで被曝青年と結婚して被害者達の救護に献身しながら死んで行く。老いた父と息子とは娘の葬儀にヒロシマを訪れ、娘の夫や 被爆者たちとの苦渋に満ちた対面・対話・詰問となる。
 見応えも満点、問題意識の展開も十二分にリアルで甘くなく、これに比べると、俳優座の「いのちの渚」は熟さなかったと、よく分かった。今日の芝居は、建 日子にも観てもらいたかった。「劇団昴」の公演は、ほとんど駄作がなく、いつも新劇のアピールに胸を押されてくる。出かけていって、よかった。

* 「寿司政」で食べ過ぎたためか、抗癌剤のためか、がくっと潰れたようにしんどくなって帰ってきた。ま、いつものことで、だから苦痛に耐えられないというのではない。じいっと瞑目したままやり過ごすだけ。帰宅後には、相応に仕事が出来た。

* 四国の木村年孝さんから戴いた地誌・史料は、ただ読んでいるだけで興味津々、しかも役に立ちそうな観点や知識が具体的に見えてきて、感謝し、興奮している。慌てずに、じっくり思案を深めたい。

* 『ペンと政治(二上) 福島原発爆発』から昨年桜桃忌前日までは、この三月十一日に間に合わせる。あまりびっしりと「原発」追及満載なので、息抜きに と、「私語の刻」を拡充して、文学や読書その他の記事をも満たしてみた。わたしは政治的人間ではない。その余の関心の方が遙かに広いと自身を観ている。
 『(二下)』も、背信に背信を重ねた野田民主党総理の惨敗・安倍政権の危険な成立などを、まさしく平成の「この時代」の後々に伝える「証言・記録」として、しっかり打ち樹てておく。作家として当然の批評としても。

* 原発避難の福島出身49歳男性が、江東区の国家公務員宿舎に自主避難していたが、「孤独死」し「死後1ヶ月」で発見された。
 その一方で、東電は、伊達市等の「高線量」解除129世帯の「精神的賠償」を、三月末で打ち切りと決めている。しかし「線量不安」のため帰郷しないでい る家庭も少なくない。南相馬市では「避難指定」はまだ解除されていないし、安易に解除していいのかという懸念もあり、無情に「賠償」をカットして行く東電 の姿勢にも酷薄なものを感じる。