「e-文藝館 =湖(umi)」 詞華集

たなか そうすけ  詩人。大学で教鞭をとられている。湖の本の読者。播磨・吉備等の風土記の詩的 時空にも遠くふかく遊ぶこ とのある「批評」の人でも。『ひょうご現代詩集2000』兵庫県現代詩協会編に掲載の新作を寄稿して下さった。播磨国風土記、飾磨の郡の「継の潮」の地名 起源 譚を素材に、漱石作『夢十夜』の第一夜を重ね合わせ発想されていると。この国のひとりの死んだ女が、遠く筑紫からきた男のまえで蘇る。


 


    の水門 
(つぎのみなと)

          田中 荘介
 

  見守られて

  花が

  薄明の中

  さき始めている
 

  冷気が露となる 時刻
 

  開いた花は 白のゆり

  蘇生した    幻の花

  < 命継ぎき >

  見守る人の 声
 

  千年の昔 女が

  閉じていた目を 開いた
 
 



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