「e-文藝館=湖(umi)」人と思想

かつた さだお 1935  東京都に生まれる。内科医師。


    

  維 摩詰(ゆいまきつ)所説経ノート    勝田貞夫



佛國品第一ぶつこくほんだいいち

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如是我聞によぜがもん かくごとわ れ このようにわたしは聞いた 1
一時いちじ ある時 2
佛在ぶつざい ほとけ 仏は 3
毘耶離びやり 毘耶離びやり 毘耶離城の 4
庵羅樹園あんらじゆおん 庵羅樹園あんらじゆおんいまして 庵羅樹園にいまして 5
與大比丘衆よだいびくしゅ 大比丘衆だいびくしゅ 大比丘衆 6
八千人倶はつせんにんぐ 八千にんともなりき 八千人と一緒であり 7
菩薩ぼさつ 菩薩ぼさつ 菩薩も 8
三萬二千さんまんにせん まん二千あり 三万二千人いた 9
衆所知識しゆしよちしき しゆ知識ちしきすると ころなり みな誰知らぬものはなく 10
大智本行だいちほんぎよう 大智本行だいちほんぎよう 菩薩の広大な智慧と菩薩の本分として行うべきことは 11
皆悉成就かいしつじようじゆ みなことごと成就じ ようじゆ みな出来上がっている 12
諸佛威~之所建立しょぶついじんししよこんりゆう 諸佛しょぶつ威~いじん建 立こんりゆうするところなり それは諸仏が威光ある不思議の力を添えて成り立たせたもので 13
爲護法城いごほうじよう 法城ほうじようまもらんがた め 仏法の城を護るために 14
受持正法じゆじしようほう 正法しようほう受持じゆじ 正しい法を受けて保持して 15
能師子吼のうししく 師子吼ししくして 説き明かすこと恰も獅子が吼えて百獣がひれ伏すようである 16
名聞十方みようもんじつぽう ぽうき こ その名は十方に知れ渡っており 17
衆人不請しゆにんふしよう 衆人しゆうじんはざれども 人から頼まれずとも 18
友而安之ゆうにあんし ともとしてこれや すん 友人のように安心を与えてくれる 19
紹隆三寶しようりゆうさんぽう ぽう紹隆しようりゆうして 仏法僧三宝を受継ぎ 20
能使不絶のうしふぜつ へざらしめ 断絶させることなく 21
降伏魔怨ごうぶくまおん 魔怨まおん降伏ごうぶく 修業の妨げになる魔を押さえ 22
制諸外道せいしよげどう もろもろ外道げどうせ い 仏の道以外の教えには見向きもしない 23
悉已清浄かいいしようじよう ことごとすで清浄し ようじようにして すでに全てに於て清浄であり 24
永離蓋纏えいりがいてん なが蓋纏がいてんは な とうに煩悩からは離れていて 25
心常安住しんじょうあんじゅう こころつね 心は常に安らかで 26
無礙解脱むげげだつ 無礙解脱むげげだつ安住あんじゅう 自由自在に解き放たれている 27
念定總持ねんじょうそうじ 念定總持ねんじょうそうじ 衆生のことをいつも心にかけ心は平常で仏の教えを忘れることなく 28
辯才不斷べんざいふだん 辯才べんざいえず 説法は弁舌さわやかである 29
布施持戒ふせじかい 布施持戒ふせじかい 人々に与え身を正しく持し 30
忍辱精進にんにくしょうじん 忍辱精進にんにくしょうじん 耐え努め 31
禪定智慧ぜんじょうちえ 禪定智慧ぜんじょうちえ 心は平静に仏のように賢く 32
及方便力ぎゅうほうべんりき およ方便力ほうべんりき また衆生を教化する手段も 33
無不具足むふぐそく 具足ぐそくせざる 具わっていないものはなく 34
逮無所得たいむしょとく 無所得むしょとく 悠々自適の境にあり 35
不起法忍ふきほうにん 不起法忍ふきほうにんおよべり なに動ずることもない 36
已能隨順いのうずいじゅん すで隨順ず いじゅんして すでに仏のなさりようによく随順して 37
轉不退輪てんふたいりん 不退ふたいりんて ん 法輪を転じて不退である 38
善解法相ぜんげほうそう 法相ほうそう 善く諸法の実相を解し 39
知衆生根ちしゅじょうこん 衆生しゅじょうこん 衆生によりその性根を知り分け 40
蓋諸大衆がいしょだいしゅ もろもろ大衆だいしゅお おい どんな人をも漏らさず護り 41
得無所畏とくむしょい 無所畏むしょいたり 自信をもって法を説く 42
功徳智慧くどくちえ 功徳智慧くどくちえ 衆生を利益する力と仏に学んだ智慧とで 43
以修其心いしゅうごしん もっこ ころおさ 心を修め 44
相好嚴身そうごうごんしん 相好そうごうか ざりて その徳に相応しい容貌が身につき 45
色像第一しきぞうだいいち 色像しきぞう第一だいいちなり 姿形は第一である 46
捨諸世間しゃしょせけん もろもろ世間せけん 諸々の世間的の 47
所有飾好しょうじきこう 所有しょう飾好じきこう 装身具の力を借りなくとも 48
名稱高遠みょうしょうこうおん 名稱みょうしょう高遠こうおんなるこ と 名声は高く 49
踰於須彌ゆおしゅみ 須彌しゅみ 須弥山を踰えるほどだ 50
深信堅固じんしんけんご 深信じんしん堅固けんごなること 深く仏を信ずる心は 51
猶若金剛ゆうにゃくこんごう なお金剛こんごうご と 金剛のごとく堅固である 52
法寶普照ほうほうふしょう 法寶ほうほうあまねて らして 法を説けば普く人々の心を照らし 53
而雨甘露にうかんろ 甘露かんろあめふらし 甘露を降らすように潤す 54
於衆言音おしゅうごんのん もろもろ言音ごんのんお い 説の優れているだけでなく言い方や声も 55
微妙第一みみょうだいいち 微妙第一みみょうだいいちなり 精妙で第一である 56
深入縁起しんにゅうえんぎ ふか縁起えんぎり て あらゆる事は縁によって起こることを深く究め 57
斷諸邪見だんしょじゃけん もろもろ邪見じゃけんだ ん 邪見を断ち 58
有無二邊うむにへん 有無うむ二邊にへん 有にも偏せず無にも偏せず(中道を得て) 59
無復餘習むふくよしゅう また餘習よしゅう 一切の迷いの跡かたも無い 60
演法無畏えんぽうむい ほうぶるにお それきこと 法を演べる時は何の心配もなく自信にみちて 61
猶師子吼ゆうししく なお師子吼ししくのごとく 獅子が吼えるようであり 62
其所講説ごしょこうせつ 講説こうせつすると ころ その内容は 63
乃如雷震ないにょらいしん すなわ雷震らいしんご と 雷震のように響き渡り人々に感銘を与える 64
無有量已過量むうりょういかりょう りょうることす でりょうぎたり 諸菩薩は遥かに無量の智と徳を具えている 65
集衆法寶しゅうしゅほうほう もろもろ法寶ほうほうあ つむること 多くの法の宝を集めるのは 66
如海導師にょかどうし 海導師かどうしごと 海をのり越え宝物を集めてくる船長のようなものだ 67
了達諸法りょうたつしょほう 諸法しょほう あらゆる物事の 68
深妙之義じんみょうしぎ 深妙じんみょう了 達りょうたつして 奥深い意味を知り 69
善知衆生ぜんちしゅじょう 衆生しゅじょう 人々が 70
往來所趣おうらいしょしゅ 往來おうらい所趣しょしゅ 何処から来て何処へ往くのかその場所をよく知り 71
及心所行ぎゅうしんしょぎょう およこころ所行しょ ぎょう 心の持ち方で六趣が現れ来ることもよく知っている(地獄餓鬼畜生阿修羅人天) 72
近無等等こんむとうとう 無等等むとうとう 比すべきものは無く(無等)しかも仏に等しく具わっている 73
佛自在慧ぶつじざいえ 佛自在慧ぶつじざいえ 仏自在の智慧 74
十力無畏じゅうりきむい 十力じゅうりき無畏むい 仏の十力と四無畏
(十力:知是処非処智力・知三世業報智力・知諸禅解脱三昧智力・知諸根勝劣智力・知種々解智力・知一切至所道智力・知天眼無礙智力・知宿命無漏智力・知永 断習気智力 四無畏:一切智無所畏・漏尽無所畏・説障道無所畏・説尽苦道無所畏)
75
十八不共じゅうはちふぐ 十八不共じゅうはちふぐちか 誰も共にすることが出来ない仏の十八の行いに近づいている
(十八不共:身無失・口無失・念無失・無異想・無不定心・無不知已捨・欲無減・精進無減・念無減・慧無減・解脱無減・解脱知見無減・一切身業随智慧行・一 切口業随智慧行・一切意業随智慧行・智慧知過去世無礙・智慧知未来世無礙・智慧知現在世無礙)
76
關閉一切かんぺいいっさい 一切いっさい 菩薩は自己の悪業によって趣く 77
諸悪趣門しょあくしゅもん 諸悪趣しょあくしゅもん關 閉かんぺいすれども 地獄餓鬼畜生界へ堕ちることは一切ないのであるが 78
而生五道にしょうごどう しか五道ごどうしょ うじて 衆生を救うために身を下して地獄餓鬼畜生人天の五道に生じ 79
以現其身いげんごしん もっげ ん その身を現し 80
爲大醫王いだいいおう 大醫王だいいおうりて 大医王となって 81
善療衆病ぜんりょうしゅびょう 衆病しゅびょうりょ う あらゆる病を善く治すために 82
應病與薬おうびょうよやく やまいおうや くあたえて 病気に応じて薬を与え 83
令得服行りょうとくふくぎょう 服行ふくぎょうすることをしむ 服用させる 84
無量功徳むりょうくどく 無量むりょう功徳くどく このように計り知れない功徳は 85
皆成就かいじょうじゅ みな成就じょうじゅ すっかり身についており 86
無量佛土<むりょうぶつど/ruby> 無量むりょう佛土ぶつど 数え切れない理想の国土を 87
皆嚴淨かいごんじょう みな嚴淨ごんじょう 美しく造り上げてきた 88
其見聞者ごけんもんしゃ 見聞けんもんするも のにして その光景を見聞きしただけでも 89
無不蒙益むふもうやく やくこうむらざるは 利益を受けないものはない 90
諸有所作しょうしょさ 諸有しょう所作しょさ 菩薩の行うあらゆることは 91
亦不唐捐やくふとうえん また唐捐とうえんならず みな衆生にその利益を与え一として無用なものはないのである 92
如是一切功徳にょぜいっさいくどく かくごと一切いっ さい功徳くどく このように一切の功徳が 93
皆悉具足かいしつぐそく みなことごと具足ぐ そくせり すべて具わっているのである 94
其名曰ごみょうわつ え ば その名を言えば 95
等觀菩薩とうかんぼさつ 等觀菩薩とうかんぼさつ 等觀菩薩 96
不等觀菩薩ふとうかんぼさつ 不等觀菩薩ふとうかんぼさつ 不等觀菩薩 97
等不等觀菩薩とうふとうかんぼさつ 等不等觀菩薩とうふとうかんぼさつ 等不等觀菩薩 98
定自在王菩薩じょうじざいおうぼさつ 定自在王菩薩じょうじざいおうぼさつ 定自在王菩薩 99
法自在王菩薩ほうじざいおうぼさつ 法自在王菩薩ほうじざいおうぼさつ 法自在王菩薩 100
法相菩薩ほうそうぼさつ 法相菩薩ほうそうぼさつ 法相菩薩 101
光相菩薩こうそうぼさつ 光相菩薩こうそうぼさつ 光相菩薩 102
光嚴菩薩こうごんぼさつ 光嚴菩薩こうごんぼさつ 光厳菩薩 103
大嚴菩薩だいごんぼさつ 大嚴菩薩だいごんぼさつ 大厳菩薩 104
寶積菩薩ほうしゃくぼさつ 寶積菩薩ほうしゃくぼさつ 宝積菩薩 105
辯積菩薩べんしゃくぼさつ 辯積菩薩べんしゃくぼさつ 弁積菩薩 106
寶手菩薩ほうしゅぼさつ 寶手菩薩ほうしゅぼさつ 宝手菩薩 107
寶印手菩薩ほういんしゅぼさつ 寶印手菩薩ほういんしゅぼさつ 宝印手菩薩 108
常擧手菩薩じょうこしゅぼさつ 常擧手菩薩じょうこしゅぼさつ 常挙手菩薩 109
常下手菩薩じょうげしゅぼさつ 常下手菩薩じょうげしゅぼさつ 常下手菩薩 110
常慘菩薩じょうざんぼさつ 常慘菩薩じょうざんぼさつ 常慘菩薩 111
喜根菩薩きこんぼさつ 喜根菩薩きこんぼさつ 喜根菩薩 112
喜王菩薩きおうぼさつ 喜王菩薩きおうぼさつ 喜王菩薩 113
辯音菩薩べんおんぼさつ 辯音菩薩べんおんぼさつ 弁音菩薩 114
虚空藏菩薩こくうぞうぼさつ 虚空藏菩薩こくうぞうぼさつ 虚空藏菩薩 115
執寶炬菩薩しゅうほうこぼさつ 執寶炬菩薩しゅうほうこぼさつ 執宝炬菩薩 116
寶勇菩薩ほうゆうぼさつ 寶勇菩薩ほうゆうぼさつ 宝勇菩薩 117
寶見菩薩ほうけんぼさつ 寶見菩薩ほうけんぼさつ 宝見菩薩 118
帝網菩薩たいもうぼさつ 帝網菩薩たいもうぼさつ 帝網菩薩 119
明網菩薩みょうもうぼさつ 明網菩薩みょうもうぼさつ 明網菩薩 120
無縁觀菩薩むえんかんぼさつ 無縁觀菩薩むえんかんぼさつ 無縁觀菩薩 121
慧積菩薩えしゃくぼさつ 慧積菩薩えしゃくぼさつ 慧積菩薩 122
寶勝菩薩ほうしょうぼさつ 寶勝菩薩ほうしょうぼさつ 宝勝菩薩 123
天王菩薩てんおうぼさつ 天王菩薩てんおうぼさつ 天王菩薩 124
壞魔菩薩えまぼさつ 壞魔菩薩えまぼさつ 壞魔菩薩 125
電徳菩薩でんとくぼさつ 電徳菩薩でんとくぼさつ 電徳菩薩 126
自在王菩薩じざいおうぼさつ 自在王菩薩じざいおうぼさつ 自在王菩薩 127
功徳相嚴菩薩くどくそうごんぼさつ 功徳相嚴菩薩くどくそうごんぼさつ 功徳相厳菩薩 128
師子吼菩薩ししくぼさつ 師子吼菩薩ししくぼさつ 師子吼菩薩 129
雷音菩薩らいおんぼさつ 雷音菩薩らいおんぼさつ 雷音菩薩 130
山相撃音菩薩せんそうぎゃくおんぼさつ 山相撃音菩薩せんそうぎゃくおんぼさつ 山相撃音菩薩 131
香象菩薩こうぞうぼさつ 香象菩薩こうぞうぼさつ 香象菩薩 132
白香象菩薩びゃくこうぞうぼさつ 白香象菩薩びゃくこうぞうぼさつ 白香象菩薩 133
常精進菩薩じょうしょうじんぼさつ 常精進菩薩じょうしょうじんぼさつ 常精進菩薩 134
不休息菩薩ふくそくぼさつ 不休息菩薩ふくそくぼさつ 不休息菩薩 135
妙生菩薩みょうしょうぼさつ 妙生菩薩みょうしょうぼさつ 妙生菩薩 136
華嚴菩薩けごんぼさつ 華嚴菩薩けごんぼさつ 華嚴菩薩 137
觀世音菩薩かんぜおんぼさつ 觀世音菩薩かんぜおんぼさつ 観世音菩薩 138
得大勢菩薩とくだいせぼさつ 得大勢菩薩とくだいせぼさつ 得大勢菩薩 139
梵網菩薩ぼんのうぼさつ 梵網菩薩ぼんのうぼさつ 梵網菩薩 140
寶杖菩薩ほうじょうぼさつ 寶杖菩薩ほうじょうぼさつ 宝杖菩薩 141
無勝菩薩むしょうぼさつ 無勝菩薩むしょうぼさつ 無勝菩薩 142
嚴土菩薩ごんどぼさつ 嚴土菩薩ごんどぼさつ 厳土菩薩 143
金髻菩薩こんけいぼさつ 金髻菩薩こんけいぼさつ 金髻菩薩 144
珠髻菩薩じゅけいぼさつ 珠髻菩薩じゅけいぼさつ 珠髻菩薩 145
彌勒菩薩みろくぼさつ 彌勒菩薩みろくぼさつ 弥勒菩薩 146
文殊師利法王子菩薩もんじゅしえいほうおうじぼさつ 文殊師利法王子菩薩もんじゅしえいほうおうじぼさつ 文殊師利法王子菩薩 147
如是等三萬二千人にょぜとうさんまんにせんにん かくごとと う三萬二千人さんまんにせんにんなり このような方々三万二千人がおられた 148
復有萬梵天王尸棄等ふうまんぼんてんおうしきとう まん梵天王尸棄 等ぼんてんおうしきとう また万の梵天王尸棄等がおり 149
從餘四天下じゅうよしてんげ 四天下してんげ 余所の四天下より 150
來詣佛所らいけいぶっしょ 佛所ぶっしょ來詣らいけいして 仏所に来詣して 151
而聴法にちょうほう ほう 法を聴いている 152
復有萬二千天帝ふうまんにせんてんてい 萬二千天帝まんにせんてんてい また万二千の天帝が 153
亦從餘四天下やくじゅうよしてんげ 他所の四天下より 余所の四天下より 154
來在會坐らいざいえざ きたりて會坐えざ 来て会坐におられる 155
并餘大威力諸天へいよだいいりきしょてん ならび大威力諸 天だいいりきしょてん さらに余の大威力諸天や 156
龍神りゅうじん 龍神りゅうじん 竜神 157
夜叉やしゃ 夜叉やしゃ 夜叉 158
乾闥婆けんだっば 乾闥婆けんだっば 乾闥婆 159
阿脩羅あしゅら 阿脩羅あしゅら 阿脩羅 160
迦樓羅かるら 迦樓羅かるら 迦楼羅 161
緊那羅きんなら 緊那羅きんなら 緊那羅 162
摩侯羅伽等まごらがとう 摩侯羅伽まごらが 摩侯羅伽(侯:目偏) 163
悉來會坐しつらいえざ ことごと會坐えざき たりぬ みな会坐に来ている 164
諸比丘しょびく もろもろ比丘びく 多くの比丘 165
比丘尼びくに 比丘尼びくに 比丘尼 166
優婆塞うばそく 優婆塞うばそく 優婆塞 167
優婆夷うばい 優婆夷うばい 優婆夷も 168
倶來會坐ぐらいえざ とも會坐えざき たりぬ 共に会坐につらなっている 169
彼時佛ひじぶつ ときほとけ その時に仏は 170
與無量百千之衆よむりょうひゃくせんししゅ 無量百千むりょうひゃくせんしゅた め みなみなに 171
恭敬圍繞くきょういにょう 恭敬圍繞くきょういにょうせられて うやうやしく囲まれ 172
而爲説法にいせっぽう ほうきたもう 法を説いておられた 173
譬如須彌山王ひにょしゅみせんおう たとえ須彌山王しゅみせんおう それは恰も須弥山王が 174
顯于大海けんうだいかい 大海だいかいあらわるるがご と 大海に出現したようであった 175
安處衆寶あんしょゆうほう 衆寶しょゆうほう 多くの宝でできた 176
師子之座しししざ 師子しし安處あ んしょして 獅子座にゆったりと坐り 177
蔽於一切へいおいっさい 一切いっさい すべての 178
諸來大衆しょらいだいしゅ 諸來しょらい大衆だいしゅお おいたもう 集まってきた者たちを蔽い抱くようであった 179
爾時毘耶離城にじびやりじょう 爾時そのとき毘耶離城びやりじょう その時毘耶離城に 180
有長者子うちょうじゃし 長者子ちょうじゃしがおり 長者がおり
心平こころたいらにして性直せいなお語実こ とばじつにして行敦おこないあつ歯邁よわいすす財 盈ざいみちたるなづけて長者ちょうじゃす)
181
名曰寶積みょうわつほうしゃく 寶積ほうしゃく 名を宝積と言った 182
與五百長者子倶よごひゃくちょうじゃしぐ 五百ごひゃく長者子ちょうじゃしと も 五百人の長者の子と倶に 183
持七寶蓋じしっぽうがい 七寶しっぽうがいし て 七宝で飾ったかさを持ち 184
來詣佛所らいけいぶっしょ 佛所ぶっしょ來詣らいけい 仏の所へ詣り 185
頭面禮足づめんらいそく 頭面づめんそくら い 頭面を仏の足につけて礼を尽くし 186
各以其蓋かくいごがい おのおのが いもっ 各自その蓋を 187
共供養佛ぐくようぶつ ともほとけ供養く よう 共にさし掛けて仏に供養した 188
佛之威神ぶつしいじん ほとけ威神いじんをもて 仏は神通力によって 189
令諸寶蓋りょうしょほうがい もろもろ寶蓋ほうがいをして その多くの宝蓋を 190
合成一蓋ごうせいいちがい がっして一蓋いちがいら しめ 合わせて一つの蓋とし 191
遍覆三千大千世界へんぶくさんぜんだいせんせかい あまね三千大千世界さんぜんだいせんせかいお お すっぽりと三千大千世界を覆ってしまった 192
而此世界にしせかい しか世界せ かい しかもこの広い世界の 193
廣長之相こうちょうしそう 廣長こうちょうそう 全ての事が 194
悉於中現しつおちゅうげん ことごとなかお いげん 悉くその中に現出した(一切の実相を明かにした) 195
又此三千大千世界うしさんぜんだいせんせかい また三千大千世界さ んぜんだいせんせかい またこの三千大千世界の 196
諸須彌山雪山しょしゅみせんせつせん もろもろ須彌山しょしゅみせん雪 山せつせん 諸々の須弥山 雪山 197
目眞隣陀山もくしんりんだせん 目眞隣陀山もくしんりんだせん 目真隣陀山 198
摩訶目眞隣陀山まかもくしんりんだせん 摩訶目眞隣陀山まかもくしんりんだせん 摩訶目真隣陀山 199
香山寶山こうせんほうせん 香山寶山こうせんほうせん 香山 寶山 200
金山黒山こんせんこくせん 金山黒山こんせんこくせん 金山 黒山 201
鐵圍山てっちせん 鐵圍山てっちせん 鉄囲山 202
大鐵圍山だいてっちせん 大鐵圍山だいてっちせん 大鉄囲山 203
大海江河だいかいこうか 大海江河だいかいこうか 大海江河 204
川流泉源せんるせんげん 川流泉源せんるせんげん 川流泉源 205
及日月星辰ぎゅうにちがつしょうしん およ日月星辰にちがつしょうしん および日月星辰
(辰:日月星の総称)
206
天宮龍宮てんぐうりゅうぐう 天宮龍宮てんぐうりゅうぐう 天宮竜宮 207
諸尊神宮しょそんじんぐう 諸尊神宮しょそんじんぐう 諸尊神宮も 208
悉現於寶蓋中しつげんおほうがいちゅう ことごと寶蓋ほうがいな かげん 悉くがこの宝蓋の中に現出した 209
又十方諸佛うじっぽうしょぶつ また十方じっぽう諸佛しょ ぶつ また十方の諸仏と 210
諸佛説法しょぶつせっぽう 諸佛しょぶつ説法せっぽうとも その諸仏の説法まで 211
亦現於寶蓋中やくげんおほうがいちゅう また寶蓋中ほうがいな かげん それもまた宝蓋の中に現出した 212
爾時一切大衆にじいっさいだいしゅ 爾時そのとき一切いっさい大 衆だいしゅ そこに居合わせた全ての者たちは 213
覩佛神力とぶつじんりき ほとけ神力じんりき 仏の神通力を目の当たりに見て 214
歎未曽有たんみぞうう 未曽有みぞううなりとたん このような事は今まで見たこともないと感嘆し 215
合掌禮佛がっしょうらいぶつ 合掌がっしょうほとけら い 合掌して仏を礼拝し 216
瞻仰尊顔せんごうそんがん 尊顔そんがん瞻仰せんごうして 仏の顔を仰ぎ 217
目不暫捨もくふざんしゃ しばらくもすて 見入った 218
於是長者子寶積おぜちょうじゃしほうしゃく ここおい長者子寶 積ちょうじゃしほうしゃく この時長者の宝積は 219
即於佛前そくおぶつぜん 佛前ぶつぜんおい 仏の前で 220
以偈頌曰いげじゅわつ もった たえいわ 仏を賛嘆して偈をもって申し上げた 221
目淨脩廣如青蓮もくじょうしゅこうにょしょうれん きよ脩廣しゅ こうにして青蓮しょうれんごと 目は長く広やかで青蓮のよう 222
心淨已度諸禅定しんじょういどしょぜんじょう こころきよくしてす でもろもろ禅定ぜんじょうわ た 心は清くあらゆる禅定をなしつくし 223
久積淨業稱無量くしゃくじょうごうしょうむりょう ひさしく淨業じょうごうみ てしょう無量むりょうなり 久しく清浄な心で善業を積み来たり称賛しきれない 224
導衆以寂故稽首どうしゅいじゃくこけいしゅ しゅみちびくにじゃ くもってすゆえ稽 首けいしゅしたてまつる 衆生を導くに一切の差別なく行う故に帰依したてまつる 225
既見大聖以神變きけんだいしょういしんぺん すで大聖だいしょう神 變しんぺんもっ すでに仏の神通力をもって 226
普現十方無量土ふげんじっぽうむりょうど あまね十方無量じっぽうむりょうげ んずるをたてまつる あまねく十方無量の世界を現出して見せていただいた 227
其中諸佛演説法ごちゅうしょぶつえんせっぽう なか諸佛しょ ぶつほう演説えんぜつしたも うを そこで諸仏が説法しているのを 228
於是一切悉見聞おぜいっさいしつけんもん ここおい一切いっ さいことごとくを見聞けんもん この娑婆世界から全て見聞きすることができた 229
法王法力超群生ほうおうほうりきちょうぐんしょう 法王ほうおう法力ほうりき群 生ぐんしょう 法の王である仏の法力は人並みではなく 230
常以法財施一切じょういほうざいせいっさい つね法財ほうざいもっ一 切いっさいほどこ 常に法の宝をあらゆる者に施し 231
能善分別諸法相のうぜんふんべつしょほうそう 能善諸法しょほうそ う分別ふんべつして あらゆる物事の真相をよくわきまえて説き 232
於第一義而不動おだいいちぎにふどう 第一義だいいちぎおいど うぜず その第一義は動ずることはない(究竟の眞理) 233
已於諸法得自在いおしょほうとくじざい すで諸法しょほうお い自在じざいたまえり もとより説かれる所は皆聞く者の力に応じ自在である 234
是故稽首此法王ぜこけいしゅしほうおう ゆえ法 王ほうおう稽首けいしゅしたてまつる この故にこの法の王である仏に稽首礼拝す 235
説法不有亦不無せっぽうふうやくふむ きたもうに ほうな らずまたならず 仏が説くには 物事というのは変化や差別の有るのでもなく無いのでもない(変化の中を一貫して不変化の理あり) 236
以因縁故諸法生いいんねんこしょほうしょう 因縁いんねんもってのゆ え諸法しょほうしょう 万有の生滅し変転して行くのは皆因縁によるもので限りなく続くものである 237
無我無造無受者むがむぞうむじゅしゃ ぞう受 者じゅしゃきも この万有以外に別にこれを主宰するものが存在するわけではなく万有に対して造作を加える者もないし他の力を受ける者があるのでもない (皆因縁により相生じ相依り相移って行くのである)  238
善悪之業亦不亡ぜんあくしごうやくふもう 善悪ぜんあくごうま たもうせず 善き業を積める者には必ず善き報いあり悪き業を積める者には必ず悪き報いがある(善悪の応報をして禍福相承け身自ら之に当たる誰も代 る者なし−無量寿経) 239
始在佛樹力降魔しざいぶつじゅりきこうま はじ佛樹ぶつじゅい ましてちからく だ はじめて仏樹の下で魔を降し(畢鉢羅樹→菩提樹・仏樹) 240
得甘露滅覺道成とくかんろめつかくどうじょう 甘露かんろめつ覺 道かくどうじょう 一切の誘惑を滅し尽くし甘露の悟りを得た 241
已無心意無受行いむしんいむじゅぎょう すで心意しんい受 行じゅぎょう それは他を差別する意なく他からの刺激を受けて自分の行いに動揺を生ずることはない 242
而悉摧伏諸外道にしつさいふくしょげどう しかことごとも ろもろ外道げどう摧伏さいふく しかも間違った考えを悉く正し 243
三轉法輪於大千さんてんほうりんおだいせん たび法輪ほうりん大 千だいせんてんじたもう 凡夫の苦を説き覚者には真の楽あることを示しその道を求めよと大千世界で説法する 244
其輪本來常清淨ごりんほんらいじょうしょうじょう りん本來ほ んらいつね清淨しょうじょうな り その法は本来常に清浄であり 245
天人得道此爲證てんにんとくどうしいしょう 天人道てんにんみちるにこ れしょう 天人も人もこの法によって悟りを得るのである 246
三寶於是現世間さんぽうおぜげんせけん 三寶是さんぽうここおい世 間せけんげん 仏法僧はこのようにして世に現れ 247
以斯妙法濟群生いしみょうほうさいぐんじょう 妙法みょうほうもっ群 生んじょうすく この妙法をもって人々を救い 248
一受不退常寂然いちじゅふたいじょうじゃくねん ひとたびけて退た いせずつね寂然じゃくねんたり 仏の説く所を信受して退かず常に静かに落ち着いている 249
度老病死大醫王どろうびょうしだいいおう 老病死ろうびょうしする大 醫王しだいいおう 仏は老病死の苦から救ってくれる大医王で 250
當禮法海徳無邊とうらいほつかいとくむへん まさ法海ほっかいと く無邊むへんなるをらいすべし まさに法の無量の徳を礼拝すべきである 251
毀譽不動如須彌きよふどうにょしゅみ 毀譽きよどうぜざること須 彌しゅみごと 世間の毀誉の如きを意に介しない所は須弥山の如くであり 252
於善不善等以慈おぜんふぜんとういじ 善不善ぜんふぜんおいひ としもってす 善人にも悪人にも大慈悲を以て接し 253
心行平等如虚空しんぎょうびょうどうにょこくう 心行平等しんぎょうびょうどうなること虚空こくうご と 思う所も行う所も平等に対するのは虚空の如くである 254
孰聞人寶不敬承しゅくもんにんぽうふきょうしょう たれ人寶にんぽうき き敬承きょうしょうせざらん この人間の至宝である法を聞いて敬うことがない者はいないだろう 255
今奉世尊此微蓋こんぽうせそんしみがい いま世尊せそん微 蓋みがいたてまつ 今世尊にこのささやかな蓋を奉り 256
於中現我三千界おちゅうげんがさんぜんかい なかおい三 千界さんぜんかいげん その中には我等の三千大千世界が現出した 257
諸天龍神所居宮しょてんりゅうじんしょきょぐう 諸天しょてん龍神りゅうじんとのと ころぐう 諸天や竜神の宮 258
乾闥婆等及夜叉けんだっばとうぎゅうやしゃ 乾闥婆けんだっば等及とうおよ夜 叉やしゃ 乾闥婆や夜叉など 259
悉見世間諸所有しつけんせけんしょしょう ことごと世間せけんも ろもろ所有しょうたり あらゆる境界が現出したのである 260
十力哀現是化變じゅうりきあいげんぜけへん 十力じゅうりきあわれんで化 變けへんげんじたまえり 十力を具える仏は哀れんでこの化変を現した 261
衆覩希有皆歎佛しゅとけうかいたんぶつ しゅ希有けうなるをみ なほとけたん 皆この稀有なる光景を見て仏を賛嘆した 262
今我稽首三界尊こんがけいしゅさんがいそん 今我三界いまわれさんがいそん稽 首けいしゅしたてまつる いま我三界の尊に稽首礼拝す(欲界色界無色界) 263
大聖法王衆所歸だいしょうほうおうしゅしょき 大聖法王だいしょうほうおうしゅす るところ 仏は皆の拠りどころ 264
淨心觀佛靡不欣じょうしんかんぶつひふきん 淨心じょうしんほとけよ ろこばざるなし 心清ければ仏を見て欣ばないものはいない 265
各見世尊在其前かくけんせそんざいごぜん おのおの世尊せそんま えいますと 一人一人の目の前に世尊の姿が見える 266
斯則神力不共法しそくじんりきふぐほう すなわ神力じ んりき不共ふぐほうなり これは仏にのみ出来る神通力だ 267
佛以一音演説法ぶついいちおんえんせつぽう ほとけ一音いちおんもっほ う演説えんぜつしたもうに 仏は一つの眞理を説いているのであるが 268
衆生隨類各得解しゅじょうずいるいかくえげ 衆生しゅじょうるいし たがいておのおのするところ を 衆生はその力量に応じて理解し身につけてゆく 269
皆謂世尊同其語かいいせそんどうごご みな世尊せ そんお なじうすと そして皆が言う世尊は同じことを言っているのだと 270
斯則神力不共法 すなわ神力じ んりき不共ふぐほうなり これは仏にのみ出来る神通力だ 271
佛以一音演説法 ほとけ一音いちおんもっほ う演説えんぜつしたもうに 仏は一つの眞理を説いているのであるが 272
衆生各各隨所解しゅじょうかくかくずいしょかい 衆生しゅじょう各各おのおのす るところしたが 衆生は各々の理解に応じて(各一) 273
普得受行獲其利ふとくじゅぎょうかくごり あまね受行じゅぎょうすることを 誰もが納得して実行することが出来その利益を獲ることができる 274
斯則神力不共法 すなわ神力じ んりき不共ふぐほうなり これは仏にのみ出来る神通力だ 275
佛以一音演説法 ほとけ一音いちおんもっほ う演説えんぜつしたもうに 仏は一つの眞理を説いているのであるが 276
或有恐畏或歡喜わくうくいわくかんき あるい恐畏くいするありあ るい歡喜かんき 或る者は悪業悪報に恐れ或る者は仏道に歓喜し 277
或生厭離或斷疑わくしょうえんりわくだんぎ あるい厭離えんりしょ うあるいうたがいだ ん また或る者は凡夫の浅ましさを厭い離れたいと思い或る者は疑いを断つことができる 278
斯則神力不共法 すなわ神力じ んりき不共ふぐほうなり これは仏にのみ出来る神通力だ 279
稽首十力大精進けいしゅじゅうりきだいしょうじん 十力じゅうりき大精進だいしょうじん稽 首けいしゅしたてまつる 十力を具える仏の大精進に稽首礼拝す 280
稽首已得無所畏けいしゅいとくむしょい すで無所畏くむしょいえ たまえることを稽首けいしゅしたてまつる すでに無所畏を得られた仏に稽首礼拝す 281
稽首住於不共法けいしゅじゅうおふぐほう 不共ふぐほうじゅ うしたまえることを稽首けいしゅしたてまつる 誰も真似のできない法を具える仏に稽首礼拝す 282
稽首一切大導師けいしゅいっさいだいどうし 一切いっさい大導師だいどうしなるこ とに稽首けいしゅしたてまつる 一切の者の大導師である仏に稽首礼拝す 283
稽首能斷衆結縛けいしゅのうだんしゅけつばく もろもろ結縛け つばくだんじたまえることを稽首けいしゅし たてまつる あらゆる煩悩を断切った仏に稽首礼拝す 284
稽首已到於彼岸けいしゅいとうおひがん すで彼岸ひがんい たりたまえることを稽首けいしゅしたてまつる すでに彼岸に到達されている仏に帰依する 285
稽首能度諸世間けいしゅのうどしょせけん もろもろ世間せ けんしたまえるを稽首けいしゅし たてまつる 諸々の世間を救ってくれる仏に稽首礼拝す 286
稽首永離生死道けいしゅえいりしょうしどう なが生死しょうじみ ちはなれたまえるを稽首けいしゅし たてまつる 永久に生死の変化を超越した仏に稽首礼拝す(利害得失栄枯盛衰も同じである) 287
悉知衆生來去相しつちっしゅじょうらいこそう ことごと衆生來去しゅじょうらいこそ う 仏は衆生の善悪の業により種々の境界に入る有様をすべて知っている 288
善於諸法得解脱ぜんおしょほうとくげだつ 諸法しょほうお い解脱げだつえたまえり あらゆる物事から解脱しているし 289
不著世間如蓮華ふじゃくせけんにょれんげ 世間せけんじゃくせざること蓮 華れんげごと 汚濁の世間にあって染まらないのは蓮華のごとくである 290
常善入於空寂行じょうぜんにゅうおくうじゃくぎょう つね空寂く うじゃくぎょう 常に一切の差別をはなれ一切の変化を超越し 291
達諸法相無圭礙たつしょほうそうむけいげ 諸法しょほうそうたっ圭 礙けいげ あらゆる物事の相について極めているので自在である(圭:横目に圭) 292
稽首如空無所依けいしゅにょくうむしょえ くうごとくにして所 依しょえきを稽首けいしゅし たてまつる 空の如く何物よりも動ずることのない仏に稽首礼拝す(無量義経徳行品は百二句) 293
爾時長者子寶積にじちょうじゃしほうしゃく 爾時そのとき長者子ちょうじゃし寶積ほうしゃく こうして長者子宝積は 294
説此偈已白佛言せつしげいびゃくぶつごん お わほとけもうしてわ く この偈を説き終わって仏に申し上げた 295
世尊せそん 世尊せそん 世尊よ 296
是五百長者子ぜごひゃくちょうじゃし 五百ごひゃく長者 子ちょうじゃし この五百の長者子は 297
皆已發阿耨多羅三藐三菩提かいいほつあのくたらさんみゃくさんぼだい 皆已みなすで阿耨多羅三藐三菩提あのくたらさんみゃくさんぼだ いおこ 皆すでに仏智を求める心を発し 298
願聞得佛國土清淨がんもんとくぶっこくどしょうじょう 佛國土ぶっこくど清淨しょうじょうる ことをかんとねが 仏国土の清浄を得るにはどうすべきかを聞きたいと願う 299
唯願世尊ゆいがんせそん ただねがわくば世尊せ そん 唯願わくは世尊よ 300
説諸菩薩淨土之業せつしょぼさつじょうどしごう もろもろ菩薩ぼさつ淨 土じょうどごうき たまえと 多くの菩薩が行っている国土を清める行いを聞かせていただきたい 301
佛言善哉寶積ぶつごんぜんざいほうしゃく ほとけのたまわか な寶積ほうしゃく 仏は言った善い哉宝積 302
乃能爲諸菩薩ないのういしょぼさつ すなわ諸菩薩しょ ぼさつため よく諸々の大乗を学ぼうとする菩薩のため 303
問於如來もんおにょらい 如來にょらい 如来に 304
淨土之業じょうどしごう 淨土じょうどごうう ことや 淨土での業を問うてくれた 305
諦聽諦聽ていちょうていちょう あきあかあ きあか しっかり聴けしっかりと聴け 306
善思念之ぜんしねんし これ思念し ねんせよ そしてよく思念せよ 307
當爲汝説とういにょせつ まさなんじた めくべしと では汝のために説こう 308
於是寶積おぜほうしゃく ここおい寶積ほ うしゃく そして宝積 309
及五百長者子ぎゅうごひゃくちょうじゃし およ五百ごひゃく長 者子ちょうじゃし 及び五百の長者子は 310
受教而聽じゅきょうじちょう おしえけてし かして 教えを受けて聴いた 311
佛言寶積ぶつごんほうしゃく ほとけのたまわく寶積ほ うしゃく 仏は言う宝積よ 312
衆生之類しゅじょうしるい 衆生しゅじょうたぐい 衆生の種類は無限である 313
是菩薩佛土ぜぼさつぶつど 菩薩ぼさつ佛土ぶ つどなり この種々雑多な衆生が居る所こそが菩薩が仏道を学ぶに最も適した所である 314
所以者何しょいしゃが 所以ゆえいか 何故かというと 315
菩薩隨所化衆生ぼさつずいしょけしゅじょう 菩薩ぼさつ所化しょけ衆 生しゅじょうしたがいて 教化を受け易い衆生がいれば 316
而取佛土じしゅぶつど 佛土ぶつど そこが仏道を成ずべき地と考え努力するのである 317
隨所調伏衆生ずいしょちょうぶくしゅじょう 調伏ちょうぶくするところ衆 生しゅじょうしたがいて 力を尽して法を説き正法に帰伏させたい衆生がいれば 318
而取佛土じしゅぶつど 佛土ぶつど そのような難関を突破し遂行することが仏国土を造ることである 319
隨諸衆生ずいしょしゅじょう もろもろ衆生しゅじょう 諸々の機根を持った衆生に対してそれぞれが 320
應以何國おういがこく いずれくにもっ 如何なる境遇にあり如何なる指導をするかにより 321
入佛智慧にゅうぶつちえ 佛智慧ぶつちえるべきかにし たがいて 仏の智慧に入らしめるか 322
而取佛土じしゅぶつど 佛土ぶつど その遂行が仏国土を造ることである 323
隨諸衆生ずいしょしゅじょう もろもろ衆生しゅじょう 諸々の衆生の 324
應以何國おういがこく いずれくにもっ 如何なる境遇にあるかにより 325
起菩薩根きぼさつこん 菩薩ぼさつこんお こすべきかにしたがいて 菩薩の性根を身につけることができるか 326
而取佛土じしゅぶつど 佛土ぶつど その遂行が仏国土を造ることである 327
所以者何しょいしゃが 所以ゆえいか 何故かというと 328
菩薩取於淨國ぼさつしゅおじょうこく 菩薩ぼさつ淨國じょうこくる は 菩薩が人々を導き国土を清浄にしようとするのは 329
皆爲饒益かいいにょうやく みな すべて 330
諸衆生故しょしゅじょうこ もろもろ衆生しゅじょう饒 益にょうやくせんがためゆえな り 衆生が安寧に暮らせるようにするためである 331
譬如有人ひにょうじん たとえばひとり て たとえばある人が 332
欲於空地よくおくうち 空地くうちおい 空き地に 333
造立宮室ぞうりゅうぐうしつ 宮室ぐうしつ造立ぞうりゅうせんとほっす るに 家を造るのは 334
隨意無礙ずいいむげ したがいて無礙む げなれども 容易であろうが 335
若於虚空にゃくおこくう 虚空こくうお いてすれば 空中に造るのことは 336
終不能成しゅうふのうじょう ついじょうずることあ たわざるがごと 出来ないであろう 337
菩薩如是ぼさつにょぜ 菩薩ぼさつかくご と 菩薩も同じであり 338
爲成就衆生故いじょうじゅしゅじょうこ 衆生しゅじょう成就じょうじゅせんがた めゆえ 衆生を成就させるために 339
願取佛國がんしゅぶっこく ねがいて佛國ぶっこく 願って仏の国をあずかるのだ 340
願取佛國者がんしゅぶっこく ねがいて佛國ぶっこくる ことは 願って仏の国をあずかるというのは 341
非於空也ひおくうや くうおいてするにあらざるなり 衆生がいるから仏の国が出来るのであって空中に仏の国を造ることはできない(菩薩は衆生無ければ無上菩提を成ずることを得ず-華厳経 -) 342
寶積當知ほうしゃくとうち 寶積ほうしゃくまさる べし 宝積よまさに知るがよい 343
直心是菩薩淨土じきしんぜぼさつじょうど 直心じきしん菩薩ぼ さつ淨土じょうどなり 自らも真っ直ぐで誠実な心を重んじ人々にも教え共に淨土を実現してゆくのが菩薩の道である 344
菩薩成佛時ぼさつじょうぶつじ 菩薩成佛ぼさつじょうぶつとき 菩薩が成佛した時には 345
不諂衆生ふてんしゅじょう 不諂ふてん衆生しゅじょう 正直な衆生が 346
來生其國らいせいごこく きたりてく にしょう その国に来て生まれるだろう 347
深心是菩薩淨土じんしんぜぼさつじょうど 深心じんしん菩薩ぼ さつ淨土じょうどなり 自らも法を求むるに深い心を重んじ人々にも教え共に淨土を実現してゆくのが菩薩の道である 348
菩薩成佛時ぼさつじょうぶつじ 菩薩成佛ぼさつじょうぶつとき 菩薩が成佛した時には 349
具足功徳衆生ぐそくくどくしゅじょう 功徳くどく具足ぐそくせる衆 生しゅじょう 功徳の具わった衆生が 350
來生其國らいせいごこく きたりてく にしょう その国に来て生まれるだろう 351
菩提心是菩薩淨土ぼだいしんぜぼさつじょうど 菩提心ぼだいしん菩 薩ぼさつ淨土じょうどなり 菩提心を重んじ人々にも教え共に淨土を実現してゆくのが菩薩の道である 352
菩薩成佛時ぼさつじょうぶつじ 菩薩成佛ぼさつじょうぶつとき 菩薩が成佛した時には 353
大乘衆生だいじょうしゅじょう 大乘だいじょう衆生しゅじょう 大乗を会得した衆生が 354
來生其國らいせいごこく きたりてく にしょう その国に来て生まれるだろう 355
布施是菩薩淨土ふせぜぼさつじょうど 布施ふせ菩薩ぼ さつ淨土じょうどなり 布施を重んじ人々にも教え共に淨土を実現してゆくのが菩薩の道である 356
菩薩成佛時ぼさつじょうぶつじ 菩薩成佛ぼさつじょうぶつとき 菩薩が成佛した時には 357
一切能捨衆生いっさいのうしゃっしゅじょう 一切能捨いっさいのうしゃ衆生しゅじょう 何物にもとらわれない衆生が 358
來生其國らいせいごこく きたりてく にしょう その国に来て生まれるだろう 359
持戒是菩薩淨土じかいぜぼさつじょうど 持戒じかい菩薩ぼ さつ淨土じょうどなり 持戒を重んじ人々にも教え共に淨土を実現してゆくのが菩薩の道である 360
菩薩成佛時ぼさつじょうぶつじ 菩薩成佛ぼさつじょうぶつとき 菩薩が成佛した時には 361
行十善道滿願衆生ぎょうじゅうぜんどうまんがんしゅじょう 十善道じゅうぜんどうぎょうぜる滿 願まんがん衆生しゅじょう 十善道を行じ満願に達した衆生が(十悪を離れる:殺生偸盗邪淫妄語両舌悪口綺語貪欲瞋恚邪見) 362
來生其國らいせいごこく きたりてく にしょう その国に来て生まれるだろう 363
忍辱是菩薩淨土にんにくぜぼさつじょうど 忍辱にんにく菩薩ぼ さつ淨土じょうどなり 忍辱を重んじ人々にも教え共に淨土を実現してゆくのが菩薩の道である 364
菩薩成佛時ぼさつじょうぶつじ 菩薩成佛ぼさつじょうぶつとき 菩薩が成佛した時には 365
三十二相莊嚴衆生さんじゅうにそうしょうごんしゅじょう 三十二相さんじゅうにそう莊嚴しょうごんし た衆生しゅじょう 瞋恚を離れ心が平安となり三十二相を身に具えた衆生が 366
來生其國らいせいごこく きたりてく にしょう その国に来て生まれるだろう 367
精進是菩薩淨土しょうじんぜぼさつじょうど 精進しょうじん菩 薩ぼさつ淨土じょうどなり 精進を重んじ人々にも教え共に淨土を実現してゆくのが菩薩の道である 368
菩薩成佛時ぼさつじょうぶつじ 菩薩成佛ぼさつじょうぶつとき 菩薩が成佛した時には 369
勤修一切功徳衆生ごんしゅいっさいくどくしゅじょう 一切いっさい功徳くどく勤 修ごんしゅせる衆生しゅじょう 勤げみ修め全ての功徳を身につけた衆生が 370
來生其國らいせいごこく きたりてく にしょう その国に来て生まれるだろう 371
禪定是菩薩淨土ぜんじょうぜぼさつじょうど 禪定ぜんじょう菩 薩ぼさつ淨土じょうどなり 禪定を重んじ人々にも教え共に淨土を実現してゆくのが菩薩の道である 372
菩薩成佛時ぼさつじょうぶつじ 菩薩成佛ぼさつじょうぶつとき 菩薩が成佛した時には 373
攝心不亂衆生せっしんふらんしゅじょう こころおさめてみ だれざる衆生しゅじょう 常に外物のために心惹かれ散漫になることのなくなった衆生が 374
來生其國らいせいごこく きたりてく にしょう その国に来て生まれるだろう 375
智慧是菩薩淨土ちえぜぼさつじょうど 智慧ちえ菩薩ぼ さつ淨土じょうどなり 智慧を重んじ人々にも教え共に淨土を実現してゆくのが菩薩の道である 376
菩薩成佛時ぼさつじょうぶつじ 菩薩成佛ぼさつじょうぶつとき 菩薩が成佛した時には 377
正定衆生しょうじょうしゅじょう 正定しょうじょう衆生しゅじょう その心が決定し動揺せず事物の真相を明らかにし正しい智慧を具えた衆生が 378
來生其國らいせいきこく きたりてく にしょう その国に来て生まれるだろう 379
四無量心是菩薩淨土しむりょうしんぜぼさつじょうど 四無量心しむりょうしん菩 薩ぼさつ淨土じょうどなり 四無量心を重んじ人々にも教え共に淨土を実現してゆくのが菩薩の道である(四心:慈悲喜捨) 380
菩薩成佛時ぼさつじょうぶつじ 菩薩成佛ぼさつじょうぶつとき 菩薩が成佛した時には 381
成就慈悲喜捨衆生じょうじゅじひきしゃしゅじょう 慈悲喜捨じひきしゃ成就じょうじゅせ る衆生しゅじょう 慈悲喜捨の四心を成就した衆生が(慈:人々の幸せを増す 悲:苦悩を除く 喜:他人の幸福を共に喜ぶ 捨:感謝されずとも心に掛けな い、正道に戻れば許し心に止めない‥四心相応すればその功徳無量成るが故に四無量心という) 382
來生其國らいせいごこく きたりてく にしょう その国に来て生まれるだろう 383
四攝法是菩薩淨土ししょうほうぜぼさつじょうど 四攝法ししょうほう菩 薩ぼさつ淨土じょうどなり 四攝法を重んじ人々にも教え共に淨土を実現してゆくのが菩薩の道である(=四攝事:布施愛語利行同事(協力)人々を引きつけ救う四つ の徳) 384
菩薩成佛時ぼさつじょうぶつじ 菩薩成佛ぼさつじょうぶつとき 菩薩が成佛した時には 385
解脱所攝衆生げだつしょしょうしゅじょう 解脱所攝げだつしょしょう衆生しゅじょう 解脱のできている衆生が(他人のために力を尽すことは即ち自己を益する‥事が身に付いている) 386
來生其國らいせいごこく きたりてく にしょう その国に来て生まれるだろう 387
方便是菩薩淨土ほうべんぜぼさつじょうど 方便ほうべん菩薩ぼ さつ淨土じょうどなり 方便を重んじ人々にも教え共に淨土を実現してゆくのが菩薩の道である 388
菩薩成佛時ぼさつじょうぶつじ 菩薩成佛ぼさつじょうぶつとき 菩薩が成佛した時には 389
於一切法方便無礙衆生おいっさいほうほうべんむげしゅじょう 一切いっさいほうお い方便無礙ほうべんむげなる衆生しゅじょう あらゆることに方便自在の衆生が(教えを聴く者の機根に応じ深浅高下種々に法を説く) 390
來生其國らいせいごこく きたりてく にしょう その国に来て生まれるだろう 391
三十七道品是菩薩淨土さんじゅうしちどうほんぜぼさつじょうど 三十七道品さんじゅうしちどうほん菩 薩ぼさつ淨土じょうどなり 三十七道品を重んじ人々にも教え共に淨土を実現してゆくのが菩薩の道である(四念処(身・受・心・法念処)四正勤(除悪・防悪・生 善・育善)四如意足(欲・精進・一心・思惟神足)五根(信・精進・念・定・慧根)五力(信・精進・念・定・慧力)七覚支(択法・精進・喜・軽安・念・定・ 行捨覚支)八正道(正見・思・語・業・命・精進・念・定)) 392
菩薩成佛時ぼさつじょうぶつじ 菩薩成佛ぼさつじょうぶつとき 菩薩が成佛した時には 393
念處正勤神足根力覺道衆生ねんしょしょうごんじんそくごんりきかくどうしゅじょう 念處正勤神足根力覺道ねんしょしょうごんじんそくごんりきかくどう衆生しゅ じょう 念処正勤神足根力覺道の三十七道品を具えた衆生が 394
來生其國らいせいごこく きたりてく にしょう その国に来て生まれるだろう 395
迴向心是菩薩淨土いこうしんぜぼさつじょうど 迴向心えこうしん菩 薩ぼさつ淨土じょうどなり 彼の雑行を回向して一乗に向わしめる迴向心を重んじ人々にも教え共に淨土を実現してゆくのが菩薩の道である 396
菩薩成佛時ぼさつじょうぶつじ 菩薩成佛ぼさつじょうぶつとき 菩薩が成佛した時には 397
得一切具足功徳國土とくいっさいぐそくくどくこくど 一切功徳いっさいくどく具足ぐそくせ る國土こくど 一切の功徳を成就した者の国土を得るであろう 398
説除八難是菩薩淨土せつじょはちなんぜぼさつじょうど 八難はちなんのぞくことをく は菩薩ぼさつ淨土じょうどな り 正しい法を学ぶに障碍になる境遇を除くことを説き共に淨土を実現してゆくのが菩薩の道である(八難:地獄・餓鬼・畜生・欝単越・長寿 天・聾盲音唖(音は病だれ)・世智弁聡・仏前仏後) 399
菩薩成佛時ぼさつじょうぶつじ 菩薩成佛ぼさつじょうぶつとき 菩薩が成佛した時には 400
國土無有三悪八難こくどむうさんあくはちなん 國土こくど三悪八難さんあくはちなんる こと その国土に三悪八難は無いであろう 401
自守戒行不譏彼闕じしゅかいぎょうふきひけつ みずか戒行かいぎょうま もりてけつそ しらざるは 自らは戒を守るが他の戒を守り得ぬものをそしることはせずこれを哀われ導き 402
是菩薩淨土ぜぼさつじょうど 菩薩ぼさつ淨土じょ うどなり 共に淨土を実現してゆく菩薩の道である 403
菩薩成佛時ぼさつじょうぶつじ 菩薩成佛ぼさつじょうぶつとき 菩薩が成佛した時には 404
國土無有犯禁之名こくどむうほんこんしめい 國土こくど犯禁ほんこんる こと 国土には禁を犯すものはいなくなるであろう 405
十善是菩薩淨土じゅうぜんぜぼさつじょうど 十善じゅうぜん菩 薩ぼさつ淨土じょうどなり 十善を重んじ人々にも教え共に淨土を実現してゆくのが菩薩の道である( 406
菩薩成佛時ぼさつじょうぶつじ 菩薩成佛ぼさつじょうぶつとき 菩薩が成佛した時には 407
命不中夭みょうふちゅうよう 命中夭みょうちゅうようせず 皆命は長寿を保ち 408
大富梵行所言誠諦だいふぼんぎょうしょごんじょうたい 大富梵行だいふぼんぎょうと ころ誠諦じょうたいにして 豊かで行いは清く言葉は誠実でよく事物の真を明らかにし 409
常以軟語じょういなんご つね軟語なんごもって し 常に言葉はやさしい 410
眷屬不離けんぞくふり 眷屬けんぞくはなれず 一族はよくまとまり 411
善和諍訟ぜんわしょうしょう 諍訟しょうしょう 争いごとがあっても善く和し 412
言必饒益ごんひつにょうやく ことばかなら饒益にょ うやく その言葉は聞く人に益を与える 413
不嫉不恚ふひつふい ねたまずいからざる 嫉んだり怒ったりせず 414
正見衆生しょうけんしゅじょう 正見しょうけん衆生しゅじょう 物事を正しく見ることができる衆生が 415
來生其國らいせいごこく きたりてく にしょう その国に来て生まれるだろう 416
如是寶積にょぜほうしゃく くのごと寶積ほ うしゃく 宝積よ是くの如く 417
菩薩隨其直心ぼさつずいごじきしん 菩薩ぼさつ直心じ きしんしたがいて 菩薩はその信ずる直心に従い 418
則能發行そくのうほつぎょう すなわ發行ほ つぎょう 果敢に実践するのである 419
隨其發行ずいごほつぎょう 發行ほつぎょうし たがいて その実践によって 420
則得深心そくうじんしん すなわ深心じんしん さらに深い信心を得て 421
隨其深心ずいごじんしん 深心じんしんし たがいて 深い信心により 422
則意調伏そくいちょうぶく すなわこころ調伏ちょ うぶく また更にその心は全く混乱粉雑から離れる 423
隨意調伏ずいいちょうぶく こころ調伏ちょうぶくせるにし たがいて 心が調伏されるに従い 424
則如説行そくにょせつぎょう すなわせつご とぎょう 仏の説く所に沿う行いが出来る 425
隨如説行ずいにょせつぎょう せつごとぎょ うぜるにしたがいて その正しい行いが 426
則能迴向そくのうえこう すなわ迴向え こう 正しい覚りを得るために役立つのである 427
隨其迴向ずいごえこう 迴向えこうし たがいて その廻向にしたがえば 428
則有方便そくうほうべん すなわ方便ほうべん 方便を自在にでき 429
隨其方便ずいごほうべん 方便ほうべんし たがいて その方便にしたがって教化すれば 430
則成就衆生そくじょうじゅしゅじょう すなわ衆生しゅじょう成 就じょうじゅ 衆生は仏の道を成就できるであろう 431
隨成就衆生ずいじょうじゅしゅじょう 衆生しゅじょう成就じょうじゅするにし たがいて 衆生が成就すれば 432
則佛土淨そくぶつどじょう すなわ佛土ぶつどき よ この仏土は罪汚れが取り除かれ 433
隨佛土淨ずいぶつどじょう 佛土ぶつどきよきにし たがいて 仏土が清められれば 434
則説法淨そくせっぽうじょう すなわ説法せっぽうき よ 説法清く 435
隨説法淨ずいせっぽうじょう 説法せっぽうきよきにし たがいて 説法清ければ 436
則智慧淨そくちえじょう すなわ智慧ちえき よ 智慧清く 437
隨智慧淨ずいちえじょう 智慧ちえきよきにし たがいて 智慧清ければ 438
則其心淨そくごしんじょう すなわこ ころきよ 心清し 439
隨其心淨ずいごしんじょう こころき よきにしたがいて 心清く 440
則一切功徳淨そくいっさいくどくじょう すなわ一切いっさい功 徳くどくきよ 一切の功徳は清浄である 441
是故寶積ぜこほうしゃく くのごと寶積ほ うしゃく 宝積よ是くの如く 442
若菩薩欲得淨土にゃくぼさつよくうじょうど 菩薩淨土ぼさつじょうどん とほっせば 菩薩が淨土を求めるのであれば 443
當淨其心どうじょうごしん まさこ ころきよくすべし まさにその心を清くすることである 444
隨其心淨ずいごしんじょう こころき よきにしたがい 心清ければ 445
則佛土淨そくぶつどじょう すなわ佛土ぶつどき よ この仏土は必ず清くなる 446
爾時舎利弗にじしゃりほつ とき舎利弗しゃ りほつ その時に舎利弗は(→この舎利弗の疑問によりこの土に淨土を実現し得ることになってゆく) 447
承佛威神作是念しょうぶついしんさぜねん ほとけ威神いしんけ てねんさ く 仏の力が加わってこう思った 448
若菩薩心淨にゃくぼさつしんじょう 菩薩ぼさつこ ころきよければ もし菩薩の心が清ければ 449
則佛土淨者そくぶつどしょうしゃ すなわ佛土淨ぶつどきよしというな らば この仏土が清くなるというのであれば 450
我世尊本爲菩薩時がせそんほんいぼさつじ 世尊せそんも と菩薩ぼさつなりしとき わが世尊が昔菩薩であった頃 451
意豈不淨いきふじょう こころあにき よからざらんや その心は清くなかったのか 452
而是佛土にぜぶつど しか佛土ぶ つど それでこの仏土は 453
不淨若此ふじょうにゃくし きよからざることかくご としと かくも不浄だというのか 454
佛知其念ぶっちごねん ほとけね んろしめして 仏はその思いを察し 455
即告之言そくこくしごん すなわこれつ げのたまわく こう言った 456
於意云何おいうんが こころおい云何い かん どう思うか 457
日月豈不淨耶にちがつきふふじょうや 日月にちがつき よからざらんや どうして日月は不浄であるものか 458
而盲者不見にもうじゃふけん しか盲者もうじゃず と しかるに盲人には見ることができない 459
對曰不也世尊たいわつふやせそん こたえていわい ななり世尊せそん 舎利弗が答えて言うにはいいえ世尊日月が不浄なのではありません 460
是盲者過ぜもうじゃか これ盲者もうじゃあ やまちにして これは盲人の方が見えないのであって 461
非日月咎ひにちげつきゅう 日月にちげつとがにはあらずと 日月の咎ではありません 462
舎利弗しゃりほつ 舎利弗しゃりほつ 舎利弗よ 463
衆生罪故しゅじょうざいこ 衆生しゅじょうつみゆ え それは衆生の罪のために 464
不見如來ふけんにょらい 如來にょらい 如来の 465
佛土嚴淨ぶつどごんじょう 佛土ぶつど佛嚴淨ごんじょう 仏土が厳淨であると見えないのであって 466
非如來咎ひにょらいきゅう 如來にょらいとがにはあらず 如来の咎ではないのだ 467
舎利弗しゃりほつ 舎利弗しゃりほつ 舎利弗よ 468
我此土淨がしどじょう き よきも わたしのこの国土は淨いのであるが 469
而汝不見ににょふけん しかなんじざ るなり しかしおまえにはそれが見えないのだ 470
爾時螺髻梵王にじらげいぼんおう とき螺髻梵王ら げいぼんおう その時螺髻梵王らげいぼんおうが(梵天王) 471
語舎利弗ごしゃりほつ 舎利弗しゃりほつかたるらく 舎利弗に言うには 472
勿作是意もつさぜい おもいし て そうゆうふうに考え 473
謂此佛土いしぶつど 佛土ぶつどお もいて この仏土が 474
以爲不淨いいふじょう 不淨ふじょうすことなかれ 不浄であると言ってはいけない 475
所以者何しょいしゃが 所以ゆえいかん なぜならば 476
我見釋迦牟尼がけんしゃかむに われ釋迦牟尼しゃかむに わたしは釈迦牟尼 477
佛土清淨ぶつどしょうじょう 佛土ぶつど清淨しょうじょうなるをる こと 仏土の清浄であるのは 478
譬如自在天宮ひにょじざいてんぐう たとえば自在天宮じざいてんぐうご としと 譬えていえば自在天宮のようなものです 479
舎利弗言しゃりほつごん 舎利弗しゃりほついわ 舎利弗は言った 480
我見此土がけんしど われる に 私がこの国土を見ると 481
丘陵坑坎くりょうきょうかん 丘陵坑坎くりょうきょうかん 山坂凸凹 482
荊蕀沙礫けいきょくしゃれき 荊蕀沙礫けいきょくしゃれき 荊に砂礫 483
土石諸山どしゃくしょせん 土石諸山どしゃくしょせん 土石山々 484
穢悪充滿えおじゅうまん 穢悪充滿えおじゅうまんせりと 汚いもので満ちあふれていると 485
螺髻梵王言らげいぼんおうごん 螺髻梵王らげいぼんおういわ そこで螺髻梵王らげいぼんおうは言った 486
仁者心有高下にんじゃしんうこうげ 仁者にんじゃこころ高 下こうげあり あなたの心は高下があって平静ではない 487
不依佛慧故ふいぶつえこ 佛慧ぶつえらざるがゆ え 仏の智慧に依っていないので 488
見此土爲不淨耳けんしどいふじょうに 不 淨ふじょうすのみ この国土が不浄に見えているだけだ 489
舎利弗しゃりほつ 舎利弗しゃりほつ 舎利弗よ 490
菩薩於一切衆生ぼさつおいっさいしゅじょう 菩薩ぼさつ一切衆生いっさいしゅじょうお い 菩薩の心には一切の衆生は 491
悉皆平等しつかいびょうどう ことごとみな平等びょ うどうにして 皆悉く平等であり 492
深心清淨じんしんしょうじょう 深心じんしん清淨しょうじょうなり 深い心で見れば清浄である(深く見よさらば美しきものを見ん−カーライル−) 493
依佛智慧いぶつちえ ほとけ智慧ちえら ば 仏の智慧に依れば 494
則能見此そくのうけんし すなわ よく此の 495
佛土清淨ぶつどしょうじょう 佛土ぶつど清淨しょうじょうなるをん と 仏土の清浄であることを見ることができる 496
於是佛以おぜぶつい ここおいほ とけ そこで仏は 497
足指按地そくしあんじ あしゆびもっし たもうに 足の指で地を押したところ 498
即時三千そくじさんぜん 即時そくじ三千さんぜん たちまち三千 499
大千世界だいせんせかい 大千世界だいせんせかい 大千世界が 500
若干百千にゃっかんひゃくせん 若干百千にゃっかんひゃくせん 百千もの 501
珍寶嚴飾ちんぽうごんじき 珍寶ちんぽうをもて嚴飾ごんじきするこ と 珍宝で飾られ 502
譬如寶莊嚴佛ひにょほうしょうごんぶつ たとえば寶莊嚴佛ほうしょうごんぶつ たとえば宝荘厳仏の 503
無量功徳むりょうくどく 無量功徳むりょうくどく 無量功徳 504
寶莊嚴土ほうしょうごんど 寶莊嚴土ほうしょうごんど 宝荘厳土のようになった 505
一切大衆いっさいだいしゅ 一切のいっさい大衆だいしゅ 一同は皆 506
歎未曽有たんみぞうう 未曽有みぞううたん 未曾有の光景に驚嘆したが 507
而皆自見にかいじけん しかみなみ ずか 気が付くと皆自分たちが 508
坐寶蓮華ざほうれんげ 寶蓮華ほうれんげするを 宝蓮華に坐っていた(本来具えている仏性を自覺した) 509
佛告舎利弗ぶつこくしゃりほつ ほとけ舎利弗しゃりほつげ たまわく 仏は舎利弗に言った 510
汝且觀是にょたんかんぜ なんじしばらこ の 汝はしばらくこの 511
佛土嚴淨ぶつどごんじょう 佛土ぶつど嚴淨ごんじょうよ と 仏土の厳淨をよく見よと 512
舎利弗言しゃりほつごん 舎利弗しゃりほつもうさく 舎利弗は言った 513
唯然世尊ゆいねんせそん 唯然ただしか世尊せそん はい世尊よ 514
本所不見ほんじょふけん もとざると ころ 小乗の教えを学んでいる時は見たこともなく 515
本所不聞ほんじょふもん もときかざると ころなり 聞いたこともありませんでした 516
今佛國土こんぶつこくど ruby>今いまruby>佛國土ぶつこくど いま仏国土の 517
嚴淨悉現ごんじょうしつげん 嚴淨ごんじょうことごとげ んずと 厳淨が悉く現出しました 518
佛語舎利弗ぶつごしゃりほつ ほとけ舎利弗しゃりほつか たりたまわく また仏は舎利弗に言う 519
我佛國土がぶつこくど 佛國土ぶつこくど 我が仏国土は 520
常淨若此じょうじょうにゃくし つねきよきことか くごと 常にこのように淨い 521
爲欲度斯下劣人故いよくどしげれつにんこ 下劣げれつひ とせんがためゆ え 煩悩に囚われた者を救わんがために 522
示是衆悪不淨土耳じぜしゅあくふじょうどみ 衆悪不淨しゅあくふじょうし めすのみ この悪不浄を示しているだけである 523
譬如諸天ひにょしょてん たとえば諸天しょてん 例えば諸々の天人が 524
共寶器食きょうほうきじき 寶器ほうきともにしてしょ くするも 同じ宝の器で食事をしても 525
隨其福徳ずいごふくとく 福徳ふくとくし たが その福徳によって 526
飯色有異はんしきうい はんいろあ るがごと 飯が異なるようなものなのだ 527
如是舎利弗にょぜしゃりほつ かくごとく舎利弗しゃ りほつ このように舎利弗よ 528
若人心淨にゃくにんしんじょう ひとこ ころきよければ もし人が心清ければ 529
便見此土べんけんしど 便すなわ この国土に 530
功徳莊嚴くどくしょうごん 功徳莊嚴くどくしょうごんると 功徳荘厳を見ることができるのだ 531
當佛現此國土とうぶつげんしこくど ほとけ國土こ くど 仏がこの国土の 532
嚴淨之時げんじょうしじ 嚴淨げんじょうげんじたもうと きあたりて 厳淨を現出する時に 533
寶積所將ほうしゃくしょしょう 寶積ほうしゃくひきゆると ころ 宝積のひきいる 534
五百長者子ごひゃくちょうじゃし 五百ごひゃく長者子ちょうじゃし 五百人の長者子は 535
皆得無生法忍かいとくむしょうほうにん みな無生法忍むしょうほうにん 皆この絶対の真理を覚り動じない心境に達した 536
八萬四千人皆はちまんよんせんにんかい 八萬四千はちまんよんせんひとみ な 八万四千の者は皆 537
發阿耨多羅三藐三菩提心ほつあのくたらさんみゃくさんぼだい 阿耨多羅三藐三菩提心あのくたらさんみゃくさんぼだいおこし き 無上の悟りを求める心を発した 538
佛攝神足ぶつせつじんそく ほとけ神足じんそくお さめたもう 仏は足をおさめたので 539
於是世界おぜせかい ここおい世界せ かい この世界は 540
還復如故かんふくにょこ も とごと また元に戻った 541
求聲聞乘ぐしょうもんじょう 聲聞乘しょうもんじょうもとむる 声聞縁覚の小乗を求める 542
三萬二千天及人さんまんにせんてんぎゅうにん 三萬二千さんまんにせんてんお よにん 三万二千の天および人の者たちは 543
知有爲法ちういほう 有爲ういちほう 変化してやまぬ一切の事物は 544
皆悉無常かいしつむじょう みなことごと無常む じょう 皆悉く無常と知り 545
遠塵離垢えんじんりく じんとうざかりは な 煩悩を離れ 546
得法眼淨とくほうげんじょう 法眼淨ほうげんじょう 清浄の心を持って事物に対し得る境界を得た 547
八千比丘はっせんびく 八千はっせん比丘びく 八千の比丘は 548
不受諸法ふじゅしょほう 諸法しょほうけず あらゆる事物の変化によって影響を受けることはなく 549
漏盡意解ろじんいかい 漏盡ろつし にき 煩悩が尽きて解脱を得た 550
佛國品第一ぶつこくほんだいいち 終
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