招待席
いらこ せいはく 詩人 1877 - 1946
鳥取県に生まれる。 医師。河井酔茗、横瀬夜雨とともに「文庫」派の三羽烏と称せられ、約二百篇から十八篇を厳選した明治三十九年(1906)刊唯一の詩
集『孔雀船』の透徹した境涯で知られる。 掲載作は、保険の診査医として僻村を渡り歩いていた頃の作で、最終連は青木繁の絵「海の幸」との契合が指摘され
ている。
淡路にて
伊良子 清白
古翁(ふるおきな)しま國(ぐに)の
野にまじり覆盆子(いちご)摘(つ)み
門(かど)に來て生鈴(いくすゞ)の
百層(もゝさか)を驕(おご)りよぶ
白晶(はくしやう)の皿をうけ
鮮(あざら)けき乳(ち)を灑(そゝ)ぐ
六月の飲食(おんじき)に
けたゝまし虹(にじ)走る
清涼(せいろう)の里いでゝ
松に行き松に去る
大海(おほうみ)のすなどりは
ちぎれたり絵巻物
鳴門(なると)の子海の幸(さち)
魚(な)の腹を胸肉(むなじゝ)に
おしあてゝ見よ十人(とたり)
同音(どうおん)にのぼり來る